異世界帰りの賢者ですが、何故か猫に！にゃんでなにゃー

スラムの今後を考えるにゃ

「君、名前はなんという？」

「わ、わたし？　エンマと言いますです」

　王子の質問に恐る恐るエンマが答える。

「別に敬語を使わなくても大丈夫だ、話しやすい話し方で話してくれ」

「は、はい」

「エンマはスラムに住んでいるで間違いはない？」

「はい」

「そこは誰と住んでいるのかな？」

「ママと二人で住んでます」

「お父さんはどうした？」

「パパは魔獣退治で戻って来ませんでした」

「冒険者だったのか？」

「違います！　パパは兵隊だったの」

「国の兵士か？」

「うん」

「国の兵士は魔獣退治で死んだ場合にはその後の生活を保証する制度があったと思うが？」

「パパが戻って来なかったら、すぐに家を出ていけって言われて、お金もなくてそのままスラムに行った……　国の為に働いたのに何にもしてくれなかった……」

「な、なんだと……」

『リリアーヌそんな制度あるのかにゃ？』

「ええ、家族支援金が子供の有無等で違いますが支給されるはずです」

　ロマーノ王子は顔をしかめて何かを考えているようだ。

「スラムにはそのような者がたくさんいるのか？」

「子供が魔獣退治で死んだじいちゃん達や、旦那さんが死んだ人とかが沢山いるけど、働くところもないから……」

「何故だ……　こんな事はありえないはずなのだが……」

　ロマーノ王子がブツブツ独り言を言っているが、これが事実だということに目を背けてはいけない。

『ロマーノ王子は事実をしっかり確認するにゃ、もしも予算が出ているであればそれがどこかで無くなってるにゃ。それを調べて今後の対策をねる必要があるにゃ』

　ロマーノ王子はこちらを見てうなずくと

「エンマ、今まで苦労をかけて済まない。すぐにその原因を調べてそのような生活をしなくて良いようにするから、もう少しだけ待っていてくれ」

「はい！　お願いします」

「ローラン、これらの担当貴族を調べてすぐに裏付けを取るんだ」

「ハッ！　すぐに調べます。おそらくフィリッポ男爵だと思いますがきちんと確認をしてご報告いたします」

「ダニエル、この件がはっきりするまで、商業ギルドに依頼してスラムに炊き出しをするぞ」

「ハッ、すぐに商業ギルドに行ってまいります」

『ロマーノ王子、今からリリアーヌと商業ギルドに行くにゃ』

「ダニエル、良い俺が直接ギルドへ向かう」

「王子自らですか？」

「リリアーヌもちょうどそこに行くようなのでついでだ」

　エンマにはロマーノの手配で食料を後で届けるから安心して戻りなさいとスラムへ戻るように促すと笑顔で帰っていった。

　俺らは商業ギルドへの道すがらロマーノ達に今後のスラムについて話をしていた。

『今後いろいろ向こうの技術を持ってくるにゃ、それらの製造を商業ギルドへ委託するにゃ。その時に製造をスラムの人達にお願いすることができる商会だけと契約するにゃ。そうすればスラムの人達も職を得て経済的に自立できるにゃ。ロマーノ王子はお年寄りたちをどう保護していくかを考えるとよいにゃ』

「タイガ様、ありがとうございます。まずは原因を調べて不正があれば然るべき措置を取りしっかり賠償をしてもらいます」

「そうだにゃ、あとで城に帰ったら向こうの世界の社会保障を教えるにゃ」

「社会保障ですか？」

『国がどのように弱者を救うかを社会保障と言うにゃ。国民はすべての人が最低限度の生活を送ることが大切だにゃ』

「ぜひお願いします」

　年齢の割にロマーノ王子はしっかりしているし、社会保障の制度を教えればうまくこの世界に合うような制度を作ってくれるだろう。今日はロマーノ王子の次期王としての資質をみたような気がする。