九州ローンでの噂話だにゃ

 2人が車で走り去ったのを確認して、再度アパートへ潜り込むと2人がホッとした表情で座り込んでいた。


「猫ちゃんが助けてくれた」


「そうだね、どこの子猫なんだろうね? 子猫の割には動きも早いし強かったね?」


「猫神社にお参りしてたから、猫神様なの」


「そうかもね、そろそろご飯たべようか? 目玉焼きと野菜炒めしかないけど……」


「ママのご飯美味しいからだーい好き」


「ありがとう」


 なんとかしてあげたいけど、勝手に施しするのも、向こうもいやだろうしな……


 ボイスレコーダーを回収しようかと思ったが、また留守中に来るかもしれないので、そのまま置いておくことにした。そろそろあいつらも会社に戻った頃だと思い、九州ローンへ転移した。ロッカーの上に登り会社を見渡すがまだ戻ってきていないようだった。事務の女性は相変わらずスマホいじって遊んでいた。仕事しろ!


 ガチャと裏口が開くと2人が戻ってきて開口一番


「今日はエライ目にあったよ、回収に行ったら猫に引っかかれるし、猫に借用書持っていかれるし、戻ってみたら駐禁で捕まるし散々だ!」


「でもあの猫変わってましたよね? 子猫だけどなんか光って見えませんでした?」


「そうそう、光ってたよな? 見間違いかと思っていたけど、間違いないよな? あれ捕まえたら高く売れるかも……」


 そんな会話をしている2人だが、周りの社員の見る目が怯えている。藤元がみんなの目が変わったのを見て


「あれ? みんなどうしたの?」


 事務員や、周りの社員がコソコソ話をする


「光った猫って、前の支店長が捕まる前に伊山さんが光る猫にやられて捕まった。俺も捕まるかも知れないって言っていたやつじゃ?」


「この間家宅捜索でやられた黒永組も、光る猫がぐちゃぐちゃにしてみんな捕まったって……」


「あの2人もなんかやばいことに首を突っ込んだんじゃないの?」


 このへんで一度脅しておくかな?


 神々しい光をまといキャビネットの上に立つと


「にゃあああああああああ」


「にゃあああああああああ」


「にゃあああああ」


 3回鳴ほど鳴くと認識阻害の魔法を使い、消えたように見せた。


「うぁああああああああ」

「きゃあああああああ」

「ヒィいいいいいい」


 いろんな叫び声が聞こえる。

 そしてキャビネットからはさっき二人が盗られたはずの契約書がヒラヒラと二人の目の前に落ちてきた。


 それを確認した2人は、ガクガクと足が震えて立っていられなくなった。


「なんでこれがここに? なんであの猫がここに?」


 みんなが怖がっていると、悲鳴を聞いた支店長が支店長室から出てきて、


「猫の1匹2匹にビビるなよ! しっかり回収はしてこいよ! こいつなんで金返してないんだ?」


「この案件は黒永組案件で、旦那は騙されて連帯保証人になってどっかの飯場送りになって、その時に借金勝手に増やした書類なんで、向こうは知っているはずがない借金なんですよ」


「なんだ、そんな事を佐々山はやっていたから成績よかったんだな…… まぁいい、それを作ったのは佐々山だし、俺らは何にも知らないことだから、書類が揃っていれば回収だ!」


 えっ? 違法だから回収しないって言うのかと思ったら…… 同じ穴のムジナだな……


 まともな社員がいるかわからないけど、ここもどうにかしないと同じような被害者が出てくるだろうから、きっちり証拠を固めていこう。




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