またお前らにゃのか

 ドンドン!! ドンドン!!


 2人の感動シーンをぶち壊すようにドアを激しく叩く音が聞こえた。


 2人はさらにギュッとお互いを抱きしめながら体を固くして震えているようだった。


「こんにちは!九州ローンの金崎と申します。下西さーん そろそろ借金払ってくださいよー」


「おーい! いるのはわかっているんですよ!」


 九州ローンって、来夢をいじめていたやつだな?なんでこうも同じ会社と遭遇するんだ?腐れ縁にはなりたくないぞ! そう思いながらもボイスレコーダーをこっそり入り口横の棚の上に置いてみた。


「近所に迷惑かけるとここには住めなくなりますよ!」


 お前が言うな……


「おい、いい加減に開けないとぶち壊すぞ!」


 ドンドン!!


「ママー 怖いー」


「まりの、ごめんね……」


「そろそろ開けないと窓ブチ割るからな!」


 ドアの外の男たちはキレ気味に声を荒げている。


 母親は諦めたようにフラフラと玄関に行き鍵外しドアを開けると、なだれ込むように2人の男性が入ってきた。


「ようやく開けてくれた。私、九州ローンの金崎とお申します。こちらが藤元といいます。奥さんそろそろ借金返済してくれませんかね?期限はとっくに過ぎて利息がドンドン増えていくだけですよ?」


「あの……、今は病気で生活もままならない状況ですし、もともとそんな借金は私はしていませんし……」


「ここに書類があるでしょ? 旦那さんの名前で借金500万でその連帯保証人にちゃんと下西なな子って自分でも書いて実印まで押してあるの見える? これだけ揃っていれば裁判しても連帯保証人が支払う義務があるって判決出るだけだよ?」


「あの人が借金した話も聞いてませんし、もう3年も帰ってきていません……」


「だから、あんたの所に来てるんだよ。さっさと旦那に変わって返えしてくれないかな? まだその年なら稼げるところ紹介するから4年もあれば返せるんじゃないかな?」


「子供がまだ小さいし、病気がちなのでそんなところで働けません」


「子供? 子供なんて施設に預ければいいだろ? 病気なら生命保険入ってもらってもいいぞ、かけて2年後3000万掛けて死んでもらえれば娘にも1000万は残してやるよ。ちゃんと契約書書いてもいいぞ」


「私に死ねと?」


「治る病気ならさっさと治して働け! 治らないなら生命保険掛けて死ね!」


「ママしんじゃいやああああ」


 後ろで聞いていたまりのが母親に抱きついてきた。


 そろそろムカつきも最高潮になってきたので、こいつらを追い出す事にしよう。一度玄関の外に出て少し神々しい光を纏った姿で玄関から入る。


「猫? なんか光ってないか?」


 金崎が独り言みたいに呟いた瞬間、爪で二人の頬を引っ掻いて、更にコピーらしい証文を分捕り玄関から出ていく。


「まて、それを返せ!」


 二人は頬を手で抑えながら追ってきた。

 捕まりそうになっては逃げるを繰り返し、2人ともヘトヘトになるまで走らせ最後は契約書を持ったまま逃げ去った。

 結構な距離を走らせたので車まで戻るには30分程かかるだろうと思い、アパートまで転移で戻り、肉体強化をして車を微妙に道路へはみ出させておいた。狭い道路なので車が邪魔で通過できないように……


 二人組が戻るのを待っているうちにそこを通ろうとしたトラックがクラクションを鳴らしまくった。


 ウルセェ……


 その音がうるさすぎたのか、通報で駆けつけた警察官がひとりはトラックの運転手をなだめ、もうひとりが車の駐車禁止の現認をしていた。トラックの後ろにも車が連なりクラクションを鳴らして収集がつかなくなってきた時に2人が戻ってきて、その状況を見て顔を青ざめていた。


 駐車禁止を取られ、トラックの運転手達に罵られたせいか、今日はもう回収する気もうせたのだろう。すぐに車で走り去っていった。

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