異世界最後の挨拶
「タイガしゃまぁ~」
クリスティーネ王女が飛びついてくる。
王族一同とハーライフ宰相、カテリーナとペイロンが生暖かい目で見てくる。
「タイガよ、やっぱり残らないか?どうしてもと言うのなら、クリスとの結婚も認めてやる。どうしてもと言うならな」
バレーロ王が少し怒ったような顔ギロッとこちらを睨みながら言ってきた。
「もう、死んでいる事になっている俺が出てきたらまずいでしょう。やはり俺は向こうに戻りたい。やり残してきた事が沢山あるので」
まだ見ていないアニメや本、まだクリアしていないゲームとかやることはいっぱいあるんだよ!
「タイガしゃま、やっぱりかえりゅの?かえりゃないで~ クリスはタイガしゃまのおよめしゃんになりたい~」
バーレロ王が更に殺気を含んだ目で睨んでくる。睨まれても俺のせいじゃないからな。
「クリス様、申し訳ございません。タイガはどうしても戻ってやらなければならないことがあります。向こうでも魔法を研鑽して、こちらの世界と行ったり来たりできるようになりたいと思います。もしもクリス様が成人するまでにこちらに来ることが出来たら是非お願いします。でも成人までに来ることが出来なかった時には、どうかこちらの世界で素晴らしい相手を見つけて幸せになってください。クリス様にはこちらのお土産をご用意しました」
クリス王女に指輪とネックレスとブレスレットの3点セットを手渡した。
「こちらの指輪は絶対防御の魔法がかけてあります。なにか物理的な衝撃があっても結界が自動的に発動します。このネックレスは火、風、水、雷の属性を融合した魔石を付けてあります。これを手で包みながら魔法を発動すると、通常より大きな力で魔法が使えます。そしてこのブレスレットには聖魔法を込めてあります。クリス様には防御があるので、大丈夫ですが、もしも近くに傷ついた方がおられたらこのブレスレットに魔力を込めてください。癒やしの魔法をクリス様の周りにかけることができます。どうか幸せになってください。
「うん! でもずーっとまってる。クリスはタイガしゃまがしゅきなの」
「ありがとうございます。でも待つのはどうか成人までにしてください。タイガの最後のお願いです」
「あい……もどってきてくだしゃい」
またクリス王女の目に涙が貯まる。うーんこの涙みると戻らなくていいかなとか思ってしまうが、やはり向こうの世界が楽しいしな……
クリス王女の頭に手を置いて
「出来るかぎりの努力は致します。すぐには無理かもしれませんが、小さい方の魔法陣へは向こうから何か送れるようになるかもしれませんので、時々見てくださいね!クリス様へのお願いです」
「あい……」
バレーロ王を見ると、プルプルと手が震えている。目もめっちゃ怒っている目をしているが王女には何も言えないようだ。
「陛下にはこちらを用意しております。クリス様同様防御魔法のかかったブレスレットでございます。ロマーノ王子には同じブレスレットに火魔法の属性をつけております」
「ありがとうございます。どうかタイガ様向こうの世界で頑張ってください。そしてできればクリスが成人するまでにこちらに戻れる魔法を探してください。」
ロマーノ王子はやっぱり妹思いだな。
「ワシのは防御だけなのか?」
バレーロ王が拗ねたように言う。
「陛下は攻撃属性は必要ありませんし防御があれば十分でしょう。その分防御力はかなり強くなっています」
「ううぅっ 他の魔法も使ってみたいのだが?」
「陛下に属性つけるのは無駄です!」
ばっさり切り捨てペイロン達の方を向く
「ペイロンには身体強化の属性のついたブレスレットを用意した。防御もいらないだろ?」
「魔王もいないし、もうしばらくは驚異はなさそうだしな……しばらくはゆっくりする予定だが、ありがたくもらっておくよ」
ペイロンは笑顔でもらってくれた。
「ではマルト王妃様とカテリーナにはデザインは違うが同じ物を用意しております。まずは絶対防御のネックレスです。毒物等も飲み込んでも無害になりますので、安心して食事ができます。ただ毒物を中和する時にはとんでもなく苦く感じると思いますので、もしそんな事があれば毒物を盛られた事を疑ってください。クリス様の指輪の防御も同じ魔法がかけてあります。それと、こちらの指輪のセットですが、女性用は癒やしの魔法がかけてあります。あまり強くは無いので、他人を治す事はできませんが、疲れなどはすぐにとれると思います。またお肌の潤い等もキープできるようになっています」
まずは2人にネックレスを差し出す。そして徐に懐から指輪ケースを出して2人に渡した。
「こちらはそれぞれの旦那様とペアになるように作ってあります。サイズは自動で調整されますので、着けたら簡単に外す事はできません。これは女性に危機がせまると男性側でそれを察知できる魔法がついております。男性側ではどこの方向に女性がいるかが判るようになっております。そして、これを着けた男性が、他の女性に気がいくと、女性側の指輪が光るようになっております。どうぞそれぞれ二人の幸せの為に作りました」
そう言うと、陛下とペイロンの顔が青くなって震えている……
「「もちろん着けていただけますよね?」」
王妃とカテリーナが見事にハモった。しかも最高の笑顔で2人に迫る。
「もっ、もちろん……」陛下がつぶやく
「あっ、あたりまえだろ?」ペイロンもつぶやく
ただ2人とも少し体が強張っているようだ。良いプレゼントができた。何故か2人に睨まれたが、浮気しないなら関係ないし、しらんがな……
宰相には目が疲れるとの事だったので、癒やし効果のあるメガネをプレゼントした。破壊不可の魔法もかけてあるし、自動調整もかけてあるので、ずっと使える事だろう。目だけはなく体全体を癒やす効果があるので、もうしばらくは宰相の仕事が続けられるだろう。
さて、全てのやることが終わった。これでこの世界とはお別れだ。ゆっくりと魔法陣の真ん中に立つ。
魔法師達が詠唱を始める。
「それでは、皆様ありがとうございました。向こうの世界でも頑張ってきます。できればこちらに戻ってこれるような魔法を開発したいと思います。皆様もお元気で~」
「たいがしゃま~~」
クリスの声がだんだん小さくなっていくと同時に意識も無くなっていく。
さらば異世界トリアムよ!そう思いながら意識が完全に飛んでしまった。
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こうして古久根 虎雄は異世界より戻って、異世界で収集した貴金属と魔法を駆使して幸せな人生を送るはずだった……
しかし……
なんでにゃあああああ……
1話へ続く……
明日から第3部を投稿予定です。
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