異世界最後の日
次の日から帰る日までは忙しく働いていた。開発した魔導具の作り方でまだ教えていなかった物を、魔導具制作のスキルを持った魔道具職人に教えておく。
複製の出来ない魔道具も合間に作っておいた。
スキル判定機や王族用の絶対防御のリング等はあまり出回っては困る物なので、魔法陣に暗号をかけて複製が出来ないようにしてある。
一番時間をかけたのが、料理長に可能な限りの料理を教えることだった。王族全員から、知っている限りのレシピを教えてからでないと、絶対に送還しないと盛大に駄々をこねられた。
忙しく時間をすごしていると、あっという間にパレードの日になり、俺は王城の自室から、パレードを見学していた。
王城へ続く大通りをペイロンとカテリーナが馬車の上から国民に手を振っている。パレードを見ている子供達の笑顔を見ていると、無理やり送り込まれてしまった事ではあったが、この世界に来て少しでも貢献できたとことが誇りに思えるし、子供たちに明るい未来を与えられた事が何よりうれしく思う。
大きな鐘の音がしたあとにバレーロ3世が声高らかに宣言する。
「トリアムの民よ。勇者ペイロン、賢者タイガ、聖女カテリーナの働きで無事に魔王を討伐することが出来た。残念ながら賢者タイガはチャンスを作る為に力尽きてしまった。ここに賢者タイガの冥福を祈ると共に、この偉業を全員で讃えようではないか」
王城の外広場に集まった人々はそれぞれに抱き合いながら、喜びあったがタイガの訃報には涙する人も少なくなかった。
さぁパレードも終わったし、1週間後には日本へ戻れる。
将来の夢に備えて王城の横に、特別な墓を作ってもらった。表向きは墓だが、中には転移用の魔法陣を破壊不能の魔法陣と一緒に作っておく。さらにその墓の横の祠にも小さな転移用の魔法陣を作っておいた。転移魔法が日本から使えるかどうかわからないし、どうなるかわからないので、あくまで実験用だ。もしも日本と行き来できたら楽しいだろうが、現状では無理だと考えている。
他にやり残した事が無いかを考える。
王族へのプレゼントとペイロン達へのプレゼントも用意した。
宰相や侍女リリアーヌ達へのプレゼントも抜かり無い。
さぁ最後の夜だ、今まで読んだ本ではこんな夜は、ドアをトントンと叩いて入ってくる女性が来るのが定番だよな!
くそぉ!誰も来なかった……
明け方トントンとドアを叩く音で目が覚めた。
「タイガ様、おはようございます。最後の朝ですね。タイガ様を起こすのも最後だと思うと少し寂しいです。向こうの世界へ戻っても忘れないでくださいね?」
「リリーありがとう。リリーのおかげで楽しく快適に過ごすことが出来たよ。これは俺からの感謝の印だ」
リリーに2つのネックレスを手渡した。
「愛する人が出来たら一つは渡すといい。絶対防御の魔法がかかっているから、何かあったら魔力を込めると発動するから」
「えぇっ こんな高い物いただけません」
「大丈夫だ、手作りだしそんなに大した事はない、それよりもリリーには幸せになってもらいたいからね」
「ありがとうございます。タイガ様の事は決して忘れませんので、向こうの世界に帰ったらタイガ様も幸せになってください」
少し涙目になりこちらを見つめてきた。もしかしてこれは……
「タイガ様の入浴姿が見れないなんて……」
やっぱり見てたんかい!
「まぁ幸せになれよ!」
残念メイドを置いて召喚の義が行われる場所に来た。
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