王城の自室にて

「ふうううううううう」


 大きなため息を吐きベッドに大の字で横になった。


「これで帰れるううう」


 ペイロンが残ればと言ってくれたが、無理無理!ゼッタイ無理!


 何が悲しゅうて、こんな世界におらんといかんのだよ!


 この世界に来てまず思ったことは…


 臭い


 とにかく


 臭いいいいいい


 日本の上下水道の生活に慣れると、異世界は無理ゲー

 水は濁っていて、更に臭い。

 トイレは穴空いているだけのポッチャン便所。


 もうね

 鼻がひん曲がりそうってこの事を言うんだなというのが実感。


 風呂に入る文化も無いから、体も臭い。洗剤が充実していないので、洋服も臭い。

 中学高校の頃のあの剣道部の剣道着の匂いがみんなからしている。


 匂いだけでノイローゼになりそうだった。


 そして食べ物

 水が臭くて美味しくないのに、料理が美味いわけがない。

 衛生管理とか、ナニソレ美味しいの?そんな感じで、食べたら絶対お腹壊すレベル。

 味も良くて塩味、なければ焼くだけ、煮るだけ。

 お城の料理もすこしはマシだが、少しの塩コショウもどきがある程度。


 住むところはお城の中は広さは、そこそこあるが、風呂もなく、

 ベッドも藁っぽいものにシーツが敷いてあるだけのベッドで匂いもする。


 異世界転生はバラ色じゃないんだよ! 異世界でスローライフ? ハァ? 向こうでラノベを読んでいた時にはそんな世界も気楽でよいのかもと思った事もあったんだがな……



 何より娯楽が全然無い。


 日々生きるのに一生懸命で老いも若いも余裕なし。


 日本へ帰れることが出来ないのであれば、諦めるが女神との約束で戻れるんだから、そりゃ戻りますよ。

 ゲームにネットに美味しい食べ物が待っている

 それを考えると、ニヤケ顔が止まらない。

 しかも、金やダイヤモンドとかメッチャ持って帰れる。

 更に魔法も日本でも使えるという、120%勝ち組人生が待っている。

 バラ色の未来しか見えねぇ……

 向こうに帰った後の事を想像しながらニヤニヤしていてら、結構な時間が過ぎていた。



 呼び鈴を鳴らして侍女を呼び出す。


「リリー風呂入って寝たいんだけど?」


「かしこまりました。すでに入る準備終わっております。風呂上がりのお飲み物は何に致しますか?」


「そうだな、冷たいアプルジュースを用意しておいてくれるかな?」


「かしこまりました。ちょうど出てこられる時にご用意しておきます。」


「なぁリリー、いつも出るタイミングバッチリで飲み物出てくるけど、なんで出てくるのが判るんだ?もしかして覗いたりしてないよな?」


「エッ、そんな事ある訳ないですよー」


 目を逸らしながら言いやがった……

 こいつはどこまで見てるんだ?それよりも何で気配察知に引っ掛からない?


 覗き穴とかが無いかを確認しながら、風呂へ向かった。

 風呂に入る文化が無いこの世界の人間を風呂好きにする為に、王城の中に風呂を作りいかに気持ちいいかを力説したのは良い思い出だ。

 石鹸を作り、シャンプーを作ったりで風呂文化も満足できるレベルまでできた。

 向こうに戻っても、風呂文化は廃れることは無いだろう。それだけでも何かをこの世界残すことが出来た証になるだろう。

 風呂作りの思い出に浸りながら入っていると、結構な時間が立っていた。


「さて、上がるかな

 」

 湯船から出て、扉を開けた瞬間横から


「アプルジュースでございます」


 リリーがお盆に乗ったジュースを持ってきた。


 イヤイヤまだ腰にタオルだけの状態なんですが?タオル無かったらすっぽんぽんだよ?

 このタイミングで出てくるには絶対どこからか見られていた気がするが、やはり気配は判らなかった。もしかしてこの国で1番気配消すのが上手いのはリリーではなかろうか?


 冷たいジュースを飲み、口の中にクリーンの魔法を掛けベットに横になってこの世界に着た日を思い出していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る