バカな若者には少しビビってもらおうか

 まずは家の屋根に飛び乗り、昼間しかけた魔道具の位置を探す。なんとなくの方向と距離はわかったのでそこに向かおうと思うのだが、子猫の姿で爆走すると目立つよなぁ。隠匿の魔法掛けて空を飛んでいくのが、一番目立たなくて早いかな? 一度行った場所や転移の魔法陣を設置してあればいきなり飛んで行くが、車のシートに挟んできたので、いきなり車に転移したらまずいだろう……


 ……ん?


 まてよ……


 いきなり転移して姿を消して鳴き声出したらビビるんじゃね?


 目標を位置情報発信の魔道具にロックする。場所の発信で簡易魔法陣の役もしてくれるから、問題なく転移出来る。魔道具の場所からして、魔道具の50cm程横で高さも40cm程高い位置を目指してみよう。隠匿の魔法をかけたあとテレポートした。ちょうど後部座席と前部座席の間に飛んだ。車の中が懐かしいハンバーガーの匂いで充満していた。これはM字マークの匂いだな。

 4人はファストフードの駐車場でハンバーガーを食べていた。とりあえずバレない場所に移動する。そういえばこっちに帰ってきてからまだ食べてないな……

 今のうちに4人の素性を確認しておかなきゃな!鑑定を使って調べたが


 伊山 仁

 フリーター 親は暴力団員 


 富岡 まみ子 

 大学生 伊山の恋人 


 川端 知洋

 フリーター


 八島 知宏

 大学生


 クロをメインでいじめていたのが伊山で、川端と八島は同調していじめていたんだよな。そして紅一点の富岡はいじめを止めようとしていたのか確認している。男性三人にはそれ相応の償いをしてもらう……


 ハンバーガーの匂いを嗅いでいると、さっきお腹いっぱいに食べたのに、またお腹が空いてきた。これが別腹ってやつだね。そう思いながら誰もみていないスキにバーガーを1つ拝借してトランクに移転する。

 そこで苦労しながらも包装紙を外してかぶりついた。ウマい!こんなに美味しかっただろうか?久しぶりのハンバーガーを堪能していたら、車の中から騒がしい声が聞こえる。


「おいカズ! 俺のてりやき食べたろ?」


「はぁ? 何言っちょ?食わんし」


「まだ1個しか食っとらんのに、もう無いんだけどどういう事?


「知らんよ! お前のバーガーの管理まで俺はしとらんから」


「食べちゃったんじゃない? それか入れ忘れ?」


 カズとトモの言い合いの仲裁にマミが入ってくる。


「いや、ついさっきまでここに有ったの見とるから入れ忘れとかではない」


「その辺落ちてないの?」


 ちょいとトモの足元に俺が食べたテリヤキバーガーの袋を落として置く。


「トモ! これは何かな? やっぱ食べるじゃん」


 後ろを向いて下をみていたマミが包装紙を見つける。


「やっぱカズが食ったろ?」


「食っとらんよ! お前が食ったの忘れてるんじゃね?」


「それは無い! 俺は好きなものは最後にするタイプだけんテリヤキはいつも最後にしか食わん」


「うるせぇな! バーガーの1個くらいいいだろ? そろそろ次にいくぞ」


 運転席から伊山が叫ぶ。


 今から何処に行くんだろうか?動いている来るまでビビらせたら危ないよね?


 じゃそろそろ気合いれていきますかね!

 お前らの恐怖が今始まるんだ!


 伊山がシフトをDレンジに入れようとした時に、俺は思い切り叫んだ!


「にゃあああああああああああああああ!」


 もちろん姿は消したままで……


「うぁあああああああ!」


「なんだああああああ!」


「何?今の鳴き声?」


 みんな車の中をキョロキョロみている。そりゃそうだ、明らかに車の中から聞こえるように最大限の声を出したんだから……


「猫がどっかにいるぞ! 探せ!」


 伊山が声をかけるがセダンのこの車にはそこまで隠れる場所はない。


「トランクも見てこいよ!」


 伊山の叫びでトモが外に出てトランクを開けてみたが、もちろん誰も乗っているはずは無い。スマホのライトで照らして念入りにみるが誰もいない。


「誰もいないぞ! 外からの声じゃないのか?」


「そうだよな? 猫がこの中にくる訳ないよな?」


「さっさとボウリングにでも行くぞ!」


 トモも座席に戻り、伊山はシフトをDレンジにいれ、車は走り出した。うるせぇ……

 ちょうど隠れている場所はスピーカーの近くで、大音量で音楽を鳴らしている。大音量で聞くと耳に良くないと聞いたことはないのか?


 仕方がないので、再度声を上げてみるが今回は少し控えめに……


「ニャアー ニャアー ニャアアアア」


 にゃーの三段活用をお見舞いしてみる。


「ねぇ! 猫の鳴き声聞こえない?」


 マミが恐る恐る声を出す。


「はぁ? 猫の声なんて聞こえねぇぞ!」


 伊山は強がって聞こえないと言うが、じつはなんとなく猫の鳴き声が聞こえていた。


「俺も聞こえた」


 カズが答えた。伊山はステレオの音響を小さく絞ってかすかに音楽が流れるくらいにして、耳を傾けている」


「何にも聞こえないよな?」


 伊山が安心したようにみんなに同意を求めている。車はまだスピードを出して走っているので、今は黙ってみている。まわりにぶつけたり巻き込んだら迷惑だからな!先の信号が赤に変わったので、もうすぐ止まるだろう。俺は伊山の座席の下の空間に潜り込む。


 くっさぁああああああ

 そこには伊山の予備のシューズが置いてあったが……

 クサイ……

 これはこの場所はさっさと撤退だな。車が止まった


「ニャァ ニャァ ニャァ」


 弱々しい声で、かつ全員に聞こえいるくらいの声で泣いてみる。


「ひゃあああああ!」

「わあああああ!」


「なんだこの声は?」


「ジンの座席の下から聞こえたぞ?」


「後ろから見てくれ」


 後ろから携帯のライトを付けてカズが伊山の座席下をみてみる。


「くっさあああ」


「お前この靴洗ってないだろ?くっさ!」


「そんなことより猫はいないか?」


「猫はいないな」


「じゃさっきのはなんなんだよ!」


 ジン以外の三人は顔を見合わせ少し顔を青ざめさせながらハモった


「昼間の猫……」


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