元会社との交渉

「ローン会社はチャチャッと終わったので、会社の方も終わらせますかね」


 新田はそういいながら電話を掛けた。


「もしもし、弁護士の新田と申しますが、昨日退職された岩田来夢さんの件で総務の方か、御社の顧問弁護士さんに繋いでいただけますか? 多分裁判案件なので、直接弁護士さんと話をしたほうが早いのですがね?」


「少々お待ち下さい」


「もしもし加藤商事の総務部長をしています永山と申しますが、なにか退職者の事で裁判とか言われているようですが、どのような内容でしょうか?」


 新田は来夢からの資料をすべて説明して


「まず、当方の要望は御社が勝手に支払った岩田さんの給与及び支払われていない退職金の全額の返金と、過去に遡って判明している未払い残業代の支払いと、今回の解雇が懲戒解雇になっているようなので、それの撤回及び会社都合退職扱いへの変更、それに伴う解雇予告手当ての支給を要求いたします。それらについて満足いただけない場合には訴訟をする準備を整えておりますので、早急にお返事を頂きたいのですが?」


「少々お待ち下さい。内薗君今の話は聞こえただろ?どういうことか説明してくれるかな?昨日の話では、岩田君が自ら変な借金をして、その取り立てが会社に来て暴力を振るわれた社員もいるから懲戒解雇にします。退職金も必要ありませんという説明だったが、弁護士さんの話と全然違うようだがどうなっているんだ? 中野真理さんを呼んできてくれ。岩田君それと残業代が未払いになっているという話で給与に込みになっているというのはどういう事かな?」

「えー えっと……」

 内園課長はしどろもどろの返事しかできない。


「新田先生、とりあえず今回の件に関しては弊社の弁護士の田尻先生と話をしてから、納得できる回答をさせていただきます。中野さんにも詳しく話を聞いてきちんと対処いたします」


「御社の顧問は田尻先生ですか?田尻先生なら自分も知っていますので良い返事をお待ちしております。中野さんにはローン会社の事はすべて解決したので安心してほしいと伝えてもらえますか?多分本人は連帯保証人にされていた事は知らないと思いますので」


「わかりました。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。そこに岩田さんがおられましたら、会社を代表してお詫びいたします。今回の件はしっかり調査して対処いたしますので、もしも会社への復帰を考えておられるのであれば、バックアップさせていただきます」


「とりあえず、本人は復帰の気持ちはもうないそうなので、円満退社になるようにお願いします」


「わかりました。できるだけご希望にそうよう最善をつくします」


 電話を切ると


「なんか拍子抜けしたよ。もっとゴネるかと思ったけどあっさり終わってしまった。多分田尻先生は俺の後輩だし、納得いく回答が期待できると思うよ」


「ありがとうございました。さすが頼りになる先生です」


 来夢が満面の笑みで言う。


「変態だけどね!!」


 新田は笑いながら返した


「終わったああ! さてこれで思う存分モフれるぞ!!」


 ん??


 なにか悪寒が走ったんだが……


 魔王と対峙する時に近いくらいの悪寒が……


 ゲージがゆっくり開けられる……


 そこから伸びるごっつい手……


 まさか……


 や め ろ ~~


 そこから次の来客が来るまで盛大にモフられた……

 だからお前は変態なんだよ!


 危うくチュチュとキスされそうになったときにはさすがに来夢が助け舟を出してくれた。


「トラちゃん雄なんで、キスは可愛そうです」


「そうか、雄か…… 雄でもかわいいでしゅね……」


 赤ちゃん返りしてるぞ!


 しっかり来夢に隠し撮りさせてるから、何かあったらタダ働きさせてやるううう

 今日は完全にHPが0になったよ……

 事務所を出て家に帰ると、昨日の残りと食べて風呂入って寝た……


 明日こそは猫友を作りたい!




***********************************************************


『なぁ来夢! だれか☆押してくれないかにゃ?』

「トラちゃん! 気長に待ちましょ!」

『でもにゃ、この話は一応人間に戻るまでだから、そんなに時間ないにゃ』

「でもこればっかりはね!」


『そうだにゃ! ☆を押してくれた人は多分☆の数だけ幸せになる魔法をかけておいたにゃ!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る