ローンのからくり

 支店長と伊山という奴の会話から判ったことは。このローン自体が自作自演で、偽造のローン申し込みをした水上って女性は伊山の彼女らしい、金がなかった二人は共謀して偽のローンを組ませてお金をもらい、支払いを来夢と中野さんに押し付けようとしたのだった。


 更に話を聞いていると、2人の個人情報も全て把握した上で、来夢は身寄りが無くおとなしいので、結婚を控えた中野さんをダシに使えば必ず払ってくれるし、いざとなったらどこかのタコ部屋にでも売れば良いと考えていたようだったが、今回バレた事で弁護士には解決する方向で話をして、本人がいなくなれば返還の必要もなければ弁護士もどうしようも無いとおもっているようで、伊山は来夢をどうにか呼び出して、そのまま身柄をタコ部屋へ売り払おうという計画を立てたようだ。


 とりあえず要注意だな。ボイスレコーダはそのままここには設置しておくかな。徹底的にやらないといけない気がする。


 ひとまず戻るかな


 ケージの中に飛んで寝たふりをしておく。


 事務所の電話がなり、事務のお姉さんが取り次いでくれた。

 支店長の笹山が電話してきたようだ。


「もしもし、先程の件ですが、弁護士とも相談して全額を返金と保証人の削除に弊社としては応じます。その代わりに財務局への連絡は止めていただけないでしょうか? 返済金は2週間以内に岩田様の口座へ全額振込みさせていただきます。保証人削除の書類と原本は明日には発送いたします。これでいかがでしょうか?」


「普通、こういう場合には誠意を見せるのが常識じゃない? 岩田さんってこのせいで職を失ったんだよ? これについてはどう責任取るの?」


「少々お待ち下さい……」


 保留音が流れてきたのでまた弁護士か誰かと相談しているのかな?


「とりあえず、全額返還は最低限達成されましたし、貴方とお友達の保証人も削除されましたので、安心していいですよ」


「ありがとうございます。さすがは虎雄さんが褒めていた弁護士さんですね」


「えぇっ? なんて褒めていたの?」


「変態だけど頼りになると……」


「……」


「……」


「もしもし、先程の件ですが弁護士とも相談して、迷惑料として20万円をお支払いいさせて頂く事でいかがでしょうか? あくまでも解雇は会社の都合であって当方では関係ない事ですが、今回の書類の不備等を鑑みてお支払いさせていただきます」


 新田が来夢を見つめると来夢は縦に首を振った。来夢にしてみりゃ借金なくなればそれで万々歳なんだよな。


「ふーん…… 原因はおたくたちだよね? まあクライアントがそれで納得したようなのでこちらとしてもこれ以上騒ぎ立てる事でもないけど、あんまり阿漕な事やってるといつか天罰が落ちるよ。じゃしっかり返金と賠償お願いしますね。ちゃんと出来たか2週間後に確認して出来ていなかったら今度は法廷で会いましょう」


「ありがとうございました。迷惑料とかまで入るならしっかり依頼料も払わせていただきます」


「いやいやいいよ、電話1本するだけだったし、これで金とったらタイガに何言われるかわからないから…… まだ会社もあるからね。そっちは過去の分まで考えれば少し長引くかもしれないな」


 電話1本で終わる話でも、人によっては死を選ばなければいけない場合がある。来夢は俺がいなければ、今頃はこの世にいなかった。誰が言った言葉かわからないが努力と知識は人を裏切らないと……

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