買取センター

 百貨店近くに大きな看板で、【売ります!買います!預かります!】と書かれた質屋を見つけていたので、そこに行ってもらうことにした。


 来夢には金で出来た指輪やアクセサリーを数点と、ルビー等の宝石の原石も渡している。鑑定で大体の価値はわかるので、もし30万円を切る価格の見積もりを出して来たら帰ろうと思っていた。


「お見積もり金額は60万円になります。即金買取であれば65万円まではお渡しできます」


 思ったより高額見積もりがでた……


『金額の内訳を聞くんだにゃ?』


「この金額の、内訳詳細はわかりますか?」


「はい! こちらの金製品は1gあたり4600円でお引き取りさせていただいておりますので243600円。その他の宝石の原石は非常に品質が良い石ですので、少し高めに見積もりをしております大体35万円で合わせてキリの良い60万円の見積もりになります。金の相場も今は上昇傾向なのでその上昇見込みを含んで即決だと65万円でお引取り致します」


『悪くないにゃいのでそのまま買取をお願いするにゃ』


「じゃその値段で買取お願いします」


「ありがとうございます。書類とか準備してきますので少々お待ち下さい」


 鑑定人は買取に必要な書類を来夢に書かせている間にお金を準備していた。書類を確認すると来夢へ封筒に入ったお金を手渡してきた。


「ありがとうございました。65万円になりますので確認お願いします」


 来夢は指先を震わせながら小声でお札の枚数を確認してからバッグの一番下へしまい込んだ。


「あぁ緊張したっ!! こんな大金なんて久しぶりに触った……」


 質屋を出ると来夢が小声で独り言を言っていたが、今日売ったものなんて持ってきたものの数万分の1くらいしか無いような気がする。


『今日のはお試しなんだなにゃ!! 今後はもっと大きにゃ金額になるから慣れるにゃ!!』


 質屋では色々質問させてどんな売り方が良いかと等をメモさせている。金細工は相場で変動するが宝石に関しては、もう少し大きな都市が高く買取ってくれるようだ。向こうで加工した宝石はカットが甘く原石よりも価値は低かった。

 魔石の細かいのを見せたが、これは宝石ではなく自然に出来たガラス片という評価で価値は0円査定だった……


 魔石はこちらでは売れないようだな。魔道具なんてないから当然といえば当然なんだろう。向こうではすごい便利な魔石も今の日本では電気が代わりをしてくれたり、なんらかの道具でまかなえるので魔道具も作る機会はあまりなさそうだ。


『おい!! 前かがみでバッグ抱えてると、どっからどうみても大金持ってるカモにしか見えないにゃ!! もっとシャッキっとするにゃ!!』


「こんな大金ひったくられたり、無くしたらどうするのよ……」


『ひったくられたら、ひったくった奴に地獄を見せるにゃ……なによりまだまだ金も宝石もあるから大丈夫にゃ!! でも来夢の借金はこれで返すわけではないからにゃ』


「えっ? どうやってお金作るの? もしかして私をどこかに売ろうとしてる?」


『はぁ~ なんでにゃ…… そんな事しないなにゃあああ』


 タクシー売り場に着いたが来夢はビクビクしている。


『どうしたにゃ?』


「タクシーなんて何年も乗ってないから緊張してる」


『アホにゃ……早く乗って帰るにゃ』

 ようやく踏ん切りのついた来夢はタクシーに乗ることが出来た。もちろん俺は認識阻害の魔法を使って来夢の膝の上に乗って寛いでいた。


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