あたし(13)

 あのあと、お兄さんは荷下ろしをせず、微笑みひとつを残してトラックに乗り込んだ。お互いだいぶ時間が早かったから、またいつもの時間に来るんだろう。


 お兄さんから貰ったコンビニのビニール袋を覗くと、中にもうひとつ袋が入っていて、古い方のふやけたノートが入っていた。パラパラとめくると、完全にインクが流れて、書いた本人さえ読めないことに安堵する。


 そして、同じような文庫サイズのノートも、思いがけなく嬉しかった。小物の趣味が似てるってことだから。


 何気なく開いてみて――あたしは、ひとりでニヤけてしまうのをこらえられなかった。


 一ページ目には、お兄さんの自己紹介が書いてあった。コウタさんていうんだ。趣味、特技、得意な教科、長所、短所。まるで履歴書みたい。少し縦長の特徴的で綺麗な文字で、きっちり一ページが埋まっていた。真面目で几帳面な感じが伝わってくる。


 二ページ目の一行目には、「もしよかったら、ミカさんのことも教えてください」と書いてあった。


 頭の中に、書きたいことがあとからあとから浮かんでくる。あたしはとても、一ページじゃ収まりそうにない。


 間もなく店長が出勤してきて、どうしたの? 早いねと言ったあと、あたしの顔を二度見して、何か良いことあった? と言って笑った。

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