第7話 復習と予習

「さて、ここからはお勉強の時間だ! ノートは持ったか!? 筆記用具は!? 赤ペンは大事なところに引くんだぞー!」

似合いもしない女教師姿でライザちゃんが黒板をピシピシと叩いた。


どこでこんな情報を仕込んできたのかライザちゃんのそれはタダのコスプレだった。

「ではまず現状についておさらいしていこう!」

「お手元のテキスト1ページ!」

俺はツッコミに回る気はさらさら無いので、黙ってテキストのページをめくった。


『星の一族とは』


「はい、こちらについては少し前に説明したと思うが質問あるもの!」

「先生、星の一族を簡潔に30字以内で本文から抜粋して説明してください。」

「いい質問ですねぇ!」

「星の一族とは、〈星々のエネルギーの結晶体であり、宇宙の調和を守る者である。〉」

「相関図はこうなっていまーす!」


知の一族 使う【転星システム】・・・宇宙の星々を移動し、使い方によっては次元の壁も突破する(可能性を秘めている)。


力の一族 使う【転生システム】・・・宇宙のどこかに特殊なスキルを持って生まれ、スキルを用いて調和を目指す(はずだった)。


※今現在、宇宙には星々の支配を主張している力の一族が散らばっており、調和を主張する知の一族は悉く滅ぼされてしまった。


「続きまして、テキスト3ページ!」


『目的・目標』

宇宙に散らばった力の一族を見つけだし、協力的なら仲間にし、拒むようならしちゃおう


フォントが非常にポップだが内容は非常にだ。


「先生、力の一族にも仲間になってくれそうな人はいるんですか?」

「いい質問ですねぇ! 一族と言っても固い堅い血族でもないし中にはそんな人もいるんじゃないでしょうか! 先生はそう信じたい!」

ライザちゃんは選挙ポスターの候補者のように拳を胸の前で握りしめた。


結局コイツの願望か…


明らかに不満そうなコウイチロウの表情を読み取ったのか、ライザちゃんは先を急ぐことにしたようだ。


「テキスト5ページを開くのです!」


『スキルについて』


「ここは目標・目的を果たす上で非常に大事なポイントになっております! テスト出すからな~!」

髪をかき上げるしぐさは完全にあの伝説の教師だが本当に彼女はどこでそれを知ったのだろうか。

「ここについては色々真面目に聞きたいし真面目に答えてほしい」

「先生はずーっとマジメだったぞ!悲しいこと言うんじゃありません!」

「そんなコウ君のために、はい。現在のスキルと特性でーす」


『共通言語』・・・どんな星に行っても現地の人々と話すことができるぞ!

『変化』・・・自分の姿を現地人に合わせてカスタマイズできるぞ!食料も現地のものを地球の食材の味に変化させ、消化できるようになるので滞在の心配は無用だ!

『分身』・・・自分を1日最大4体まで増やせるぞ!記憶は共有できるので便利に使おう!本体の絶命や、本体が死ぬぐらいのダメージで消滅する!

その他etc...・・・転生システムを奪い返すことで様々なスキルを獲得できるぞ!秘密基地に持ち帰ってくれたらシステムを解析して特性を教えてア・ゲ・ル♡


「心配事がいくつか一気に片付いたよ」

「だろう?」

ライザちゃんは得意気だ。


小さいころにプレイした青いロボットのアクションゲームが似たようなシステムだったな。たぶん……あんな感じだろう……


「ところで転生システムだがスキルは死なずに使えないのか?出来ればそんな事態は避けたいのだが」

「これは本当にいい質問ですよ! 答えはイエスです。主人公が死んで蘇って強くなるなんて野菜の王国の戦士じゃあるまいし私は認めません!」


スキルが多分にご都合主義なのはいいのか…


「本来の転生システムも別に死んで生き返るという訳じゃない」

「先生は以前そのように説明してくれたと思うのですが…」

「あれは言葉の綾だ。星の一族として生まれ、転生に耐えうる肉体が形成されると細胞の状態までシステムによって戻される」

「そして様々な人型の生物がいる星に転星する。そして元の体に戻る過程で星の情報を読み取り、最適な肉体を再構築するわけだな。その副産物がスキルだ。それを指してと表現したのだ」


「なるほど…」

「スキルは転生システムに記録される。どいつも体の中に核のような玉を持っているんだがそいつを奪えばスキルは自由自在ってこと」

「ちなみに少し触れたが、君が行き着く先は必ず人型の生物が星の王者となっている。そうでもないと支配する意味があまりないからね。従って会話も成立するはずだ」


コウイチロウはここまでの授業をテキストをパラパラめくって聞いていたが、再度全てのページに目を通した。


「大変よくわかりました!先生!」

「うむ!ではこれから向かってもらう星についてわかっていることを見ていこう」


「テキスト9ページ!惑星アムゼンについてだ!」



『惑星アムゼン』

地表のほとんどを湿地帯と原生林が覆う星。

多種多様な生き物が生息しているが、惑星の王者はアムゼネス。

地球でいうところのトカゲから進化したような人型生物。

平均的な身長は2m前後。雄雌は存在せず、繁殖は部族内で強さを認められたものが単体で行うという生態である。つまり子沢山ほど上位のカーストである。

金などの概念はまだなく、基本的に物々交換で生活が成立している。


「こんなとこか。この生物の中に力の一族が潜んでいるはずだ。見つけてコンタクトを取ってほしい。裸眼になれとかそういうギャグではないぞ!」

「よし、分かった。とりあえず最初の目的地としては上々だ」

コウイチロウの態度にライザちゃんは少し拗ねたようだ。


「じゃあ、コウイチロウ。大変だと思うけど頑張って」

「あ、あぁ」

「寂しくなったらいつでも私にコンタクトを取ってくれ。通信はラグなしでできる。裸眼にな



「転星システム、起動!!!」

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