~第1章~ ケイゾクハチカラナリ

第6話 選択の意味は

どこだろう……ここ……


あれは……たしかギベオンとの決戦で……


「油断したな! スターレッド! 貴様だけは道連れだ! 絶対に生かしては帰さん!!」


ギベオンの自爆に巻き込まれた俺は……


何の空間に浮いているんだ……? 息は……出来てる……


秘密基地シークレットベースへようこそ!」


秘密基地? ………?


…………!!??


突如頭上から少女が覗き込んだのでコウイチロウは慌てて叫んだ。

「お前は、誰だ!」

「おぉ、お目覚めかね。コウイチロウ君。……長いからコウって呼んで良い?」

「……! なぜ俺の名を!」

「コウ君、ここはライザちゃんの秘密基地だ。」

「ライザちゃん……?」

「そう!星の一族最後の一人。天才秀才鬼才変人ライザちゃんだ!」

ライザちゃんはコウイチロウに向かってピースした。背丈は中学生ぐらいといったところか。ピンク髪と豊かなお胸が奇妙なバランスだ。


「そして、君は星の一族が力を与えた最後の戦士だ。」

「ちょっと待て、最後最後って星の一族はどうなったんだ!?」

「滅んだ。『不慮の事故』ってやつだ」

「………」


「俺は一体どうやってここに? というか生きているのか?」

「いっぺんに聞かれても困るが君はピンピンしてるよ。私が爆発から救ったんだ。ここに来てもらったのはあるお願いを聞いてもらうためだ」

「お願い?」

「そう。さっき言った通り星の一族は滅んでしまった。そして、最後の星の戦士は君、いや君達なんだ。後は解るね?」



はい

いいえ


なんだこれ…なんか選択肢が現れたぞ?猛烈に悪い予感がする。いいえにしておこう


 はい

→いいえ


「そうか…残念だ。一応最後まで話しておこう。」








ん?






ライザちゃんは気にする様子もなく話し始めた。

「君、もしくは彼らには星の一族の力を得てこの宇宙の調和を守って欲しいんだ。」

「そもそも星の一族とはそのために生まれた星々のエネルギーの結晶体なのだよ。」


「お断りします」

言うが早いかコウイチロウはライザちゃんに背を向けた。


 はい

→いいえ


「そうか残念だ。今ならスキルとして『共通言語』と『変化』もつけるぞ」


はい

いいえ







あっ……





いや






 はい

→いいえ


「そうか、残念だ。では『分身』もつけよう」

「 」


はい

いいえ


「…………」


 はい

→いいえ


「どうしても駄目だろうか?」


 はい

→いいえ




「どうしても駄目だろうか?」





ループし始めた…。こいつは決定的だ


 はい

→いいえ


「そもそも俺はさっきラスボスを倒して地球の平和を守ったところなんだよ! もう、さすがに」

「ラスボス?」

「えっ……?」

「お前が倒したギベオンのことか?」

「そ、そうだけどそれが?」

ライザちゃんは小馬鹿にした顔で続けた。

「どうやらもう少し詳しく話しておく必要がありそうだな……」

「いや、ほんともう結構です帰ります」


 はい

→いいえ


「コウ君、大事な話だ。最後まで聞くんだ」



うわあああああああっ!これ強制イベントだ!!!

『はい』って答えるまで帰す気ないやつだ!!!!

嫌だあああああああああっ!!



「コウ君、星の一族はなぜ滅んだと思う? 肉体の強化や星々の移動、さらには死さえもある程度操る能力を持つ一族がだ」

「死さえも? 初耳だけどそんな能力があったらそうそう滅びるなんてことはなさそうだが」

「ダイヤを加工する技術知ってる?」

「ダイヤ?」

唐突な質問が続き戸惑うコウイチロウにライザちゃんは続けた。


「最硬の物質は最硬の物質で磨くんだ」

「つまり?」

「星の一族は星の一族によって滅んだ」

「星の一族はさらに知の一族、力の一族と別れていてそれぞれがバランスを取り合い生活していた。だが、知の一族は星の調整を、力の一族は星の支配を主張しだしたんだ」

「聞いてて頭痛くなってきたから帰って…いいかな」

ライザちゃんはもはやコウイチロウに一瞥をくれることもなく話を続けている。


「知の一族は【転星システム】を、力の一族は【転生システム】を司っていた。【転星システム】はさっき君に与えようとした次元転移をも可能にする時間の概念を無視した移動が可能な力。かたや【転生システム】は死した後、特殊な力を持ってこの宇宙のどこかの星に生まれ変わる力を持っている」

「なんかドえらい壮大な話になってきて俺は引いている」


「コウ君が倒したギベオンは星の一族。そしてゴーストンとは彼のスキル『分身』を使って支配された一族だろう」

「な、なんだって!!!!!」

コウイチロウはここまでで一番真剣に耳を傾けた。


「ちなみにちなみにぶっちゃけると星の一族として与えられるスキルは『共通言語』と『変化』だけ。『分身』はギベオンの転生システムから奪い返した能力で、コウ君はすでに使えるはずだ」

「な、なんだって!!!!!」

コウイチロウはもはやリアクションすらままならない。


「そういったわけでこの広い宇宙には特殊なスキルで星を支配している輩がいて、ゆくゆくは全宇宙の支配を目論んでいるということは知っておいてくれ。コウ君の狩りハントの対象はこいつらだ。」

「俺はまだ受けると答えていないはずだが」

「では、答えを聞かせてくれ。この仕事を受けるか、それとも危険な一族を野放しにして全宇宙を危険にさらすか。ちなみに君が断ったとしても次にここに来るのはダイスケ、ケンゴ、カレン、マオの誰かだ」


はい

いいえ


「うっ…なんて卑怯な質問だ…」

コウイチロウは特大の深呼吸をして答えた。


→はい

 いいえ



「そうか! 引き受けてくれるか! 助かるゾ! コウ君!」

ライザちゃんは両手を挙げて飛び跳ねた。


「ところで、ライザちゃん」

「ん? なんだ?」

「星の一族最後の一人が使命を果たさず俺を指名しているのはどういう理屈なんだろう」

「ああ、最後の一人も実はもういない。ここにいるのは『最後の一人』の思念体のようなものだ」

「やっぱりそういうことかよ…」

「だが、安心したまえ。君をサポートする体制は万全だ。私も助力する」

「それは真に心が安まるお言葉ですな」


「それともう一つ。【転星システム】だが、一度使うと最低1ヵ月は再使用不可能だ。転星した先がどんな状況であろうと1ヵ月は出られん。星の環境ぐらいなら『変化』で順応することができるが、スキル持ちの力の一族には十分気を付けてくれ」


契約の後から重要事項を説明するんじゃねぇ…っ!


「転星システムを使えば地球に戻ることも一応可能だからな?」

「なるほど! ミチルスペシャルのない余生なんて考えられないとこだった! それは唯一いい条件だな!」

コウイチロウの顔に見る間に光が差した。


「さ、私からの話はここら辺にして次はいよいよ座学だ!」

「座学?」

「お勉強だよ。色々補足説明もあるし席について話そう」

「勉強は苦手だなー…」




こうしてコウイチロウの星を巡る戦いが終わり、始まった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る