第101話 情報
ナイフを手にタワーから飛び降りる。
着地と同時に目にも止まらない速度で移動すると人を襲う悪漢の首にナイフを近づけ、触れることもせず飛び退いた。
先程までいた位置が爆発したかと思うと煙の中にはアストライア。
背後の悪漢を回し蹴りで沈めると飛び退いたギルティを殴り飛ばした。
着地し難無く勢いを殺すと放たれた拳を防ぎ再び殴り飛ばされ」身体を捻り着地するも今度は勢いを殺し切らず地面に真っ直ぐと後を残して後方へと下がっていく。
そして、顔を上げると同時に距離を詰めてきたアストライアに向かって蹴り上げた。
しかし完全に不意を突いた蹴りをアストライアは身体を逸らし顎を掠りながらも避けた。
前までだったら当たってたはず。
あの巨人と戦ったからか?
明らかに強くなってる。
拳の威力も、動きの俊敏さも、反応の速さも。
全力は出さないけど、舐めてるとまずいか。
体勢を立て直し距離を詰めてくるアストライアを一息入れながら見つめる。
その瞬間アストライアは後方に下がった。
「ようやく、俺の相手をする気になったか?」
「成程。そうとも取れるか」
誰の目にもとまらない速さで距離を詰める。
ただ一人反応したアストライアの右腕を軽く受け止め、衝撃を放ち弾き飛ばす。
今までになかった攻撃に驚きながらもギルティの攻撃に対応する。
腹に打ち込まれる膝蹴りを左手で受け止め右手で殴るが、それ以上の速度でギルティは残った脚だけで身体を回転させそのままその足で回し蹴りを放った。
防ぐことが出来ずぶっ飛ぶがビルに当たるよりも先にギルティが回り込み踵落としで地面に沈めた。
「もっと強くなれ。僕がいなくても大丈夫なように」
地面から頭を抜いた時にはもう、ギルティはそこにはいなかった。
今日は思ったよりも来るのが早かった。
多分それはいつもより移動が早くなったから。
僕らの仕事が減るのは良いことだけど、署長の仕事が増えるのは困る。
署長にはあの巨人の調査をしていてほしいんだけど…………。
ポケットの震えに思考を中断し電話に出た。
「ボス、あの依頼人は完全に黒です。実の娘なのはわかりましたが何か事情があって件の組織に売ったようです」
「依頼をしたのはもう一度他の組織に売るためか」
「ええ、同じ娘で二度以上の取引をするつもりのようです」
それで詮索もなし、後腐れも無しの犯罪組織を頼った訳か。
まぁ僕らは詮索するし場合によっては依頼人も裏切るけど。
「それで、その子はなんでそんなに高い値が付いたの?」
「……………………」
「ソルト?」
言い淀むソルトの名を呼ぶ。
「魔女だそうです」
「魔女?」
「はい。人間なのは確実ですが、異能とはまた別種の特殊な力を持っているようで…………」
それで気味悪がって捨てようとして、売れるのではと思ったから売ってみたら想像以上の値段でこっちに取り返す依頼をしてきたわけか。
「その子の事は隠して人身売買の情報を流しておいて。追って行けば組織に繋がるように」
「タイミングは?」
「君に任せる。奴らが事を起こす直前に署長が動き出すようにして。数分遅れる分には問題ない。よろしく」
「了解しました」
プツッという音と共に電話が切れる。
軽く体を伸ばすと、突如上がった爆炎に向かおうとして足を止めた。
「誰が行っても結果は変わらない。ただ、行くなら奥だ。署長はもう動いてるから」
「了解」
鎖を握りミカはギルティの隣を駆け抜けていった。
他はラヴクラフトがもう伝えているはず。
僕は完全に暇になったな。
ミカと骸がやる気になっている現状、ギルティが動くまでの事態はそうそう起こらない。
この間の巨人ですら署長が相手する以上出番はなく、ギルティは完全に自分が動くと決めていた件の取引まで完全に暇になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます