第102話 二人の最強

暇で暇で仕方がない。

銃声、爆発音、事件は多発しているというのに、自分が動くまでもなく部下が全てを解決する。

最近では署長の相手も少なくなり、部下の優秀さに困っていた。

しかし今日だけは違う。

今日だけは忙しいことが前から決まっていた。

なにせ今日は件の組織が手に入れた人間でオークションを開催するから。


場所も時間も掴んでる。

署長に情報も流してる。

準備は万端。


「…………行くか」


時間はまだある。

急がず焦らず、ゆったりと建物から建物に飛び移り移動していく。

そしてその途中、後ろからアストライアに話しかけられた。

速度を落とすことなく、追いついて隣に並んだアストライアと話しながらに移動を続ける。


「許可がない今お前は動けない」


「それでも僕は行く」


「そうか。今すぐ捕らえたいところだが生憎と時間がない」


口を開きすぐに閉じる。

ゆっくりと進んでいく時間。

視界の端、抉れた道路の真ん中に子供が一人取り残され、大口を開けた化け物車両に今にも食われそうになっている。

隣のアストライアは気付いていない、着地と同時に方向を変え肩を掴まれた。


僕の動きで気付いたのか。

けど、君じゃ間に合わない。


「俺を蹴れ」


前に出たアストライアが、落下するように跳ぶと両足をこちらに向ける。

すぐさま反応し子供に向けて勢いよく蹴り飛ばした。

空中で姿勢を変え子供を抱えるように着地すると向かい来る化け物車両を片手で止めた。


「いいのか?」


「俺が蹴れと命じ、お前はその命に従って俺を蹴っただけだ」


「厳しいくせに緩い。けど、直接手を下すのは?」


「駄目だ」


「わかった。じゃあ、終わったら逃げることにする」


二人はビルの上を駆け、中々表に姿を現さない犯罪組織を捕らえに向かう。

目指すはオークションの開催される工場跡地。

開催者側も、参加者側も、一斉に捕え情報を掴むまたとない機会。

辿り着いた工場跡地。

空いた天井から中をのぞくと、簡易的に舞台や装飾品で会場が作られていた。

中にはマスクを付けた百を超える参加者、壇上には参加者よりもシンプルなマスクを付けた男と思われる人物が一人。

上から見れば舞台の裏で商品を運ぶ女性と思われる人物も見えた。


「僕の目的は一人の少女だけ。他は君の好きにしていい。物も、人も」


「少女の救出も俺がやる。お前はここで見学だ」


オークションはまだ始まっていない。

現行犯でしかアストライアが動かないことを、動けないことをギルティはよく理解しているから、今はただ待つだけ。

オークションが始まらない限り二人は動かない。

だがもしも始まったのならば、その違法性が目に見えて確認できたのならば、問答無用、二人の最強は動き出す。

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