第6話 暴走
戦場を闇が奔った。
それは暴虐の限りを尽くす闇を纏う化け物。
叫び声を上げながら、黒き巨腕で聖人を潰す。
薙ぎ払い、吹き飛ばし、呑み込む。
殺し殺し殺し続け、戦場にいる聖人を全て殺したとき、その化け物は初めて動きを止めた。
まるで目的を失ったように立ち尽くす化け物は、顔を怒りに染め上げ、次なる戦場へと奔った。
戦場に着けば、すぐさま聖人を殺し始める。
それは理性無く暴れる獣の如し。
味方であるはずの魔人にさえも恐怖を植え付ける化け物は、突如その腹を突き刺された。
この戦場にはいた、理性無き獣を、ただ暴れるのみの化け物を、相手に出来るような者が。
腹から広がる光はすぐに飲まれるが、血は止まっていない。
だが、暴れることを止めはしなかった。
激しい攻防、だがそれは一方的なものだった。
化け物の巨腕を容易く避け、その身体を剣で貫く。
次々と増える傷。
流れ出す血もその量を増す。
ふらつきながらも立つ化け物の巨腕が、纏っていた闇が消えていく。
中から少年が現れる。
小さな腕、小さな体、ただの子供。
これで終わりかと、安堵か、落胆か、ゆっくりとした足取りで近付く聖人は何かに気付き少年から距離を取った。
少年の身体を闇が這う。
先とは違い形に変化は無かったが、その腕は黒く染まり、まるでツタのように身体へと巻き付く。
顔にまで闇が届いた時、少年は動いた。
何とか反応試験を振り下ろす。
手応えはあった、血も流れ出ている。
だが、止まっていない。
それどころか窮地に立たされていた。
剣は少年の肩から胸にかけてを深く斬る。
だがそこから剣は動かない。
本来であれば動かす必要もないのだが、そのまま最後まで、完全に切り離さなければならないとそう思った。
だが、首を掴まれ持ち上げられ、力の入らない状況ではどうあってもこれ以上剣を深く体へ差し込むことは出来なかった。
そのまま聖人は闇に呑まれた。
地面に落ちる剣の音が、その様子を見ていた者達に敗北を知らせる。
それと同時に、再び殺戮が始まる合図であった。
一瞬の内に三人死んだ。
誰も気付けなかった。
今までとは違う。
先程までは、狙いも大雑把で、隙も大きく、本能に任せた単調な攻撃だった。
だが今は、的確に急所を突き、行動に隙は無く、無駄なく組み立てられた攻撃となっていた。
腕で、足で、三人の首の骨を一瞬にしてへし折る。
流れるように心臓を穿ち、胸を砕き、頭を千切る。
そうして最小限の動きで、一撃必殺で、次々と聖人が殺されていった。
だが次第に動きも鈍くなる。
ずっと一人で戦い続けたのだ、体力が持つはずない。
そしてそれ以上に、身体中は傷だらけ、左肩には胸にまで至る深い切り傷があった。
今だ止まらない出血により大量の血を失っていた。
時折ふらりとが奔った。
それは暴虐の限りを尽くす闇を纏う化け物。
叫び声を上げながら、黒き巨腕で聖人を潰す。
薙ぎ払い、吹き飛ばし、呑み込む。
殺し殺し殺し続け、戦場にいる聖人を全て殺したとき、その化け物は初めて動きを止めた。
まるで目的を失ったように立ち尽くす化け物は、顔を怒りに染め上げ、次なる戦場へと奔った。
戦場に着けば、すぐさま聖人を殺し始める。
それは理性無く暴れる獣の如し。
味方であるはずの魔人にさえも恐怖を植え付ける化け物は、突如その腹を突き刺された。
この戦場にはいた、理性無き獣を、ただ暴れるのみの化け物を、相手に出来るような者が。
腹から広がる光はすぐに飲まれるが、血は止まっていない。
だが、暴れることを止めはしなかった。
激しい攻防、だがそれは一方的なものだった。
化け物の巨腕を容易く避け、その身体を剣で貫く。
次々と増える傷。
流れ出す血もその量を増す。
ふらつきながらも立つ化け物の巨腕が、纏っていた闇が消えていく。
中から少年が現れる。
小さな腕、小さな体、ただの子供。
これで終わりかと、安堵か、落胆か、ゆっくりとした足取りで近付く聖人は何かに気付き少年から距離を取った。
少年の身体を闇が這う。
先とは違い形に変化は無かったが、その腕は黒く染まり、まるでツタのように身体へと巻き付く。
顔にまで闇が届いた時、少年は動いた。
何とか反応試験を振り下ろす。
手応えはあった、血も流れ出ている。
だが、止まっていない。
それどころか窮地に立たされていた。
剣は少年の肩から胸にかけてを深く斬る。
だがそこから剣は動かない。
本来であれば動かす必要もないのだが、そのまま最後まで、完全に切り離さなければならないとそう思った。
だが、首を掴まれ持ち上げられ、力の入らない状況ではどうあってもこれ以上剣を深く体へ差し込むことは出来なかった。
そのまま聖人は闇に呑まれた。
地面に落ちる剣の音が、その様子を見ていた者達に敗北を知らせる。
それと同時に、再び殺戮が始まる合図であった。
一瞬の内に三人死んだ。
誰も気付けなかった。
今までとは違う。
先程までは、狙いも大雑把で、隙も大きく、本能に任せた単調な攻撃だった。
だが今は、的確に急所を突き、行動に隙は無く、無駄なく組み立てられた攻撃となっていた。
腕で、足で、三人の首の骨を一瞬にしてへし折る。
流れるように心臓を穿ち、胸を砕き、頭を千切る。
そうして最小限の動きで、一撃必殺で、次々と聖人が殺されていった。
だが次第に動きも鈍くなる。
ずっと一人で戦い続けたのだ、体力が持つはずない。
そしてそれ以上に、身体中は傷だらけ、左肩には胸にまで至る深い切り傷があった。
今だ止まらない出血により大量の血を失っていた。
時折ふらりとよろめくも聖人を睨むと殺戮を再開する。
誰もが絶望していた。
絶望に抗った者、少年に斬りかかった者は、ただ死が早まるのみであった。
だれも動かない。
ただ祈るだけ、早く死んでくれと。
その傷で動き続けるのなら、確実に死ぬのだから、自分が殺されるよりも前に死んでくれと、そう誰もが祈っていた。
だがその祈りは届かなかった。
少年は呻き声をあげながら無理やり身体を動かし、殺戮を続けた。
そしてやがて、この戦場にいた聖人は全員死んだ。
だが少年は止まらない。
覚束ない足取りで、まるで身体を引き摺るように、次の戦場へと歩いて往く。
もう目も見えていなかったんだろう。
少年は何かにぶつかった。
小さな呻き声をさせながら、少年は見上げる。
「なぁ、もう終わりだ。これ以上はお前が死んじまう。悪いが、ここで止まってくれ」
優し気な声に、少年の身体から闇が引いて往く。
そしてぼそぼそと小さな声で少年は口にする。
「終わってない……まだ、戦争が続いてる」
「……休もう。お前背負い過ぎなんだよ。一度帰ろう。考えて考えて、それでも背負わないとなら、俺も一緒に背負うから。だから、今は休もう。アマデウス」
アマデウスはスペックに抱きしめられながら眠りについた。
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