第11話―闇は不可視に蠢くⅤ―
晴人は転移魔法で帰還して、すぐに玉座の間へと向かうが執務中で謁見は出来ないと門番が応える。
余程の用事なら別だがと聞くと急ぎの用事です!と即答して入る事を許される。
「あの、カーステレオ砦に攻めてきた敵軍をやっつけて来ました」
「なに!?カーステレオ砦を」
見様みまねでカーペットを早歩きで進んで屈む騎士の礼節を示して
報告をする。その内容に驚愕する王。
「もしや救世主殿にも
有らぬ事と晴人の言をそう解釈した。大臣は忖度せねばならない事を何度も強いていて突拍子のない
発言にも友好的な態度をする。
「あー、その…信じてもらえないと思いますが転移魔法を使用して敵を倒してきました。疑うであろうと城兵から手紙もあります」
「「っ―!?」」
晴人は殲滅してから負傷した城兵の治療を手伝っていた。
回復魔法の特化した魔法師から様々な回復魔法を教授された。それはともかく指揮官が
王は手紙を受け取るとすぐ隠蔽が無いかと目を走らせるが本当。
「…確かに本当であるな。
信じられないが真実であろう。
なれば後顧の憂いは無い。エイブリーにも竜退治を向かわせよ」
それから晴人は度肝を抜かれる発言をエイブリーにも伝えると唖然となるのだった。城内は騒然となってブルックリン達と合流して城を出る。
フィデス王国から東へ徒歩で向かう。転移魔法で向かおうと試みるが駄目だった。一度その地に足を踏み入れないと転移が出来ないのか情景を浮かぶイマジネーションが必要か晴人は考察して歩いていた。
「聴こえるな…ブルックリンあそこから魔物が来るぞ」
「戦闘準備!」
仰げば群青の空と照らす光、前と地面には木々が並び立つ平地林。
軽装をした剣聖カーミラが人差し指を向けた場所は繁々とした場所。
年長者であるブルックリンの姿は全身を銀の鎧で身に着けている。
異名の一つシルバーナイトと呼ばれる由来は至極単純で銀のフルプレしていることからいう。
短く指示をするとシルバーナイトは後ろの長い槍と盾を取り出す。
その長槍は禍々しい闇の色が特徴の魔槍[ロンゴミニアド]。
そして自分の身丈ほどある白き盾
[アイギス・カステッルム]。
「分かりました!ハルトくん」
「は、はい」
金髪を陽光できらびやかに輝く。エイブリーは抜剣して遅れて晴人も相棒の剣を抜き構える。
四人は戦闘態勢で襲ってくるであろう魔物に神経を研ぎ澄ませる。
茂みから現れるはサソリ型の魔物が三体。体色は青で巨大で異物な存在に晴人は
「はっあぁ!」
黄金の嵐が巨大サソリを呑み込む。
姿を見せた一秒にカーミラはダブルXカリバー横の打ち払う。飛距離を大きく伸ばした上級剣技シャイニングスラッシュ。
たったの一振りで三体を撃破という光景に晴人は衝撃を受ける。
(これが…本当の異世界なのか。
何度も痛感される。あのゲームじゃない空気と不快なニオイ)
ゲームじゃない。完成度や魔物デザインを楽しむような俯瞰的にはなれない。ここに来て
「…いや普通にオーバーキル過ぎるでしょう!これは…」
「おーばきぃる?」
晴人の呟きにカーミラは首を傾げて気になった単語を口にする。
「えっ!?そ、そうだな…オーバーキルというのは過剰で一方的な攻撃かな?理不尽で蹂躙するような意味でもある」
「ほーん?じゅうりんも分からないけど教えてくれよ!」
「あ、ああ。もちろん」
年相応な反応をされ晴人は、たじろぐが可愛いのでいいかとなる。
それからサソリ型の魔物スコーピオン・エリアやハチ型の魔物
ギガホーネット出現してもエイブリーの焔に灰燼と化し、ブルックリンは黒い槍が振り下ろすの打撃攻撃とトドメを突きで貫く。
出番がない晴人の関心は槍を突くのではなく叩いた事であった。
「本当に俺の出番が無いままダンジョンに着きましたよ」
さすがに何の為に来たのか自問自答を繰り返していたので洞窟の前に辿り着くと
「あ、あはは…そうめげないで。
ここから危険度が増すから出番はあるよ。煩わしくてしまうはずだよ……たぶん」
「そうですね。ここから俺の出番!」
エイブリーの言葉に俄然とやる気になるのを見て苦笑する。心の中で竜と対峙するまではと呟く。
「どうやらソティラスセイバー
覚醒しないとなぁ」
「おぉー、何か知らないけどハルトかっこいい!」
晴人は洞窟タイプのダンジョン前で愛剣の柄を触れてそう呟く。
中二病なセリフに琴線を触れたのはカーミラ。緑の瞳をキラキラとさせるカーミラの憧憬。
ちなみに晴人以外の三人は武器を収まず敵をいつでも迎撃が可能で移動していた。
「
ヘルメットを外したブルックリンは息を吐くとそう言った。晴人はバックパックから4人分のお弁当を出してやや遅めの昼食を取ることになった。
任務のはずなのにちょっとしたピクニック気分の晴人は異世界転生して悪くないと心に深く感じた。
丁度いい
「そういえばブルックリンさんは槍を突かないで叩いていましたけど、アレはどうして?」
「…そうですね。突くというのは攻撃の動作でどんな軌道が読まれやすいのが大きいですね。
振り回しての威力を乗せていく打撃攻撃をするのが使い方となります。
ここから先での戦闘では狭いので打撃は控えないといけませんが」
「なるほど」
俺の質問に変な間があったが槍術を教えてくれたが正直に言うと
半信半疑。槍はマシンガンのように突いたりするのが当然だと根強くあった。
「えーと。ハルトくん、もしかして槍を使った事が無い?」
「ハルト!自慢じゃないけど、ワタシも使った事がないぞ」
エイブリーとカーミラ二人の言い出した事で槍の扱い方も認識を新たにする。
それから隧道へと足を踏み入れる。中は薄暗かったが目が慣れていけば苦でもなかった。魔物も何体か遭遇はしたものの一撃で葬るというオーバーキルをしていく。
…今回も晴人は出番がないと分かるとソティラスセイバーを鞘に戻して進むことになる。
「んっ?なんだあれ。変な形をした岩があるぞ」
カーミラは好奇心のまま右端にある岩石に近寄り左手で触れた瞬間、カーミラがいる地面から穴が開いて落ちていく。不自然な速度で現れて晴人は何が起きたのか分からずフリーズする。
「うっわあああぁぁぁぁ
ぁぁっっーー!」
「なっ、あの子。あんな怪しい罠に掛かるなんて!」
ブルックリンは駆け寄り手を伸ばすが届かずに悪態をつき立ち上がる。
エイブリーは「そんな…」と落ち込んでいた。晴人はここに来て色々と試すようになった。
(異世界チートの俺なら、もしかして行けるかもしれない)
エビデンスがない結論に至った晴人は正四角形の落とし穴へと飛び降りる。
「カーミラを助けに行きます。二人は先に行っていてください。
必ず追いつきますので」
「えっ?ハルトくん……ハルトくん!!ねぇ、戻ってきて」
必死になって叫びエイブリーの静止を振り切り自由落下に従い落ちていく。暴力的な風を感じるのに痛みの類は一切として感じない。
そろそろ1分が経過していく。長く落ちて自信に満ちていた晴人も
不安を感じて蛮勇な行動に後悔を始めていると漸く終わりが訪れた。
硬い地面をそのまま垂直で着地すると揺れが起きるとすぐに収まる。
それが自分が原因だと理解するまで時間を要した。そして痛覚さえも起きずにいたので軽く恐怖を覚えていると近くに屈んでいる
カーミラを見つける。
「カーミラ無事か?」
「う、うん。平気だ」
カーミラは立ち上がると顔を歪めて右足を抑える。
「まったく何を無理しているんだよ。今から治してあげるよ…
傷ついた者に恵みを[ハイヒール]」
痛みがある足に右の掌を向けて中級魔法にあたる治癒魔法を唱える。
しかめていた顔から明るい表情へ戻ると回復魔法を止めて晴人は安堵して腰を上げる。そして手を伸ばす。
「驚いたぞ。トラップとか疑わずに行くなんて。ダンジョンはそういうのが多いんだから用心しろよ」
「ご、ごめんなさい」
悪態の一つか二つをつくと警戒していた。まさか素直に謝れるなんて思わず晴人は目を丸くする。
手をつかむと引いて立ち上がらせる。
「な、なんだよ。ジロジロ見て」
晴人の視線が気に食わず、上目遣いで白い頬を赤くなるカーミラ。
「あつ!いや、何でもない。
それじゃあ進もうか。ここがどこか分からないけど上に戻れないだろうし。歩いていくのが最適な選択だろうしなぁ」
ゲームで培った経験則。がむしゃらに移動していけば大抵はゴールに辿り着くと楽観視で結論づけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます