第5話―剣聖カーミラの一騎打ちⅡ―

フィデス城の敷地内は広大さを誇る。箱のように四方には高い建物が連なっている。囲むように立ち並ぶ、それは東西南北と館。

館と館それを結ぶ渡り廊下か渡りやぐらよりも規模が大きい建物はすべてに繋げられていて敷地から見た先にあるのは壁か館。どの方向から見ても――否、北部だけは別格だ。

北部は荘厳そうごんな城。

敷地と北の以外にある館を含めてすべてが王城。

初めて見るものは繁栄の極められしと魂に刻まれ戦意をくじきかせるほどだ。なら出入りはどこかと言えばもちろん存在する。小さな門があるが表の門の意である大手門おおてもん

南館みなみやかたにある。


「救世主殿そういうわけで有事の際にはいつでも出陣が出来るようにと近くには鍛錬場たんれんじょう詰所つめしょを設置しています。そして決闘するのは、ここ鍛錬場となります」


「うわぁー、バカでかい!?東京ドーム2つぐらいか。でも鍛錬場でどんだけ広いのか想像できない」


宰相フィレットに案内され見上げるドーム状の鍛錬場。中はどんな風な構造なのか気になってしかたない晴人。


「あー、ワタシもアレを見たときはびっくりしたんだよな。

救世主もワタシと同じだな」


決闘を挑んできた幼い――もといカーミラに屈託のない笑顔を向けられ、ぎこちなく笑顔で返す。

ぼっち歴が長い晴人は笑顔を作るのが得意ではなかったが転生して

眉目秀麗びもくしゅうれいになってからプラスが大きくマイナスを簡単に上回るほど。


「では入りましょう」


フィレットがそう発言して後を続ける。やはり広大だけはあるが

石を敷いた簡素な作りとなっている。くぐり抜けると戦場に即した模擬戦が繰り広げていた。

それぞれ特別な障壁を展開し周辺から被害を避けるために。

中には剣と剣で交える。それが何十人もしている。


(まるでスポーツジムか競技場だな)


晴人は絶句した。コロッセオのような場所だと想像していたが

大人数での鍛錬が出来るように作られていることに。


「これは宰相様。今日はどのようなご用件で?」


「ああ、実は――」


管理者らしき兵士がフィレットの姿を見て尋ねる。決闘を伝えると準備は迅速で丁寧に行う。

熱心に励んでいた兵士は訓練を止めて壁の端へと移動する。

どうやら決闘を見物するようだ。


「それでは始めましょうか。準備はよろしいですかな」


これで決闘が始まる。確認の問いに。


「はい」


「あぁ、いつでもいいぜぇ」


晴人は2つ返事をしカーミラは勇ましく言葉で応える。


「晴人くん相手は剣聖けんせいだから気をつけてねぇ」


エイブリーが美しい眉と目には心配そうにする。晴人は心配してくれることを一瞬だけ喜んだが内容が驚くべきものだった。

彼女は言った相手は剣聖だと。


「えっ、あのロリっ子が剣聖だって!?

マジかよ・・・態度や周囲の評価からして大物だと思っていたが

予測の上斜うえななめだな」


晴人からのまじまじと見られていることにカーミラはピースで返した。

無邪気な言動をしているが晴人は

神速の一撃を無意識の障壁で防いだ。

晴人の周囲を避けて駆け抜けたことや余波による衝撃を起きないよう配慮もあるとすれば、彼女が最初から遠慮なく全力を発揮したらどうなるか。


「そう考えると戦いたくないな・・・あの〜、決闘をすればお互いただでは済まないだろうから

やめませんかね」


右手を上げた晴人は負傷は確実になると思い中止にしてもらおうと主張する。

そして決闘に実力を争うこと等どうでもよかった。


「その心配はありません。治療師がいつでも治癒が出来るようにしていますゆえ。それに特殊なフィールドが展開させています。

中級クラスの治癒ちゆ魔法リジェネをマジックバーストさせ拡散させており物理攻撃を大幅に緩和させるパワーカラプスも

しっかりと対策をしておりますのでご安心を」


「な、なるほど・・・・」


晴人は冷や汗がにじむ。長々とフィレットの説明を知ったかぶりで頷いてしまったが、異世界の魔法なのは英単語でなんとなく効力は想像が出来るが分からない点もあった。ではどんな効果は検討をする、リジェネは一気に回復ではなく徐々に回復していく。

マジックバーストからは魔法を爆発だろうか?だが言葉からして安全性によるものだろうから・・・保留。パワーカラなんとかは物理攻撃を弱くさせると述べていたから

間違っていないだろう。

ともかく、ここまで安全対策はしていると言われたら論破するため

の知識や経験が足りず敵いそうにないと諦めることにした。


(だったら早く負けて終わらせるしかない!当然、もうそれしかない)


そうと決まれば軽い負傷を覚悟をしてわざと負けて早々と終わらせるとしよう。


――――◇◇◇◇――――


「救世主ミヤマハルト、剣聖に選ばれしカーミラ。準備はいいか!」


中央にある一段と規模がある試合するための台の上に立つ。対峙たいじする位置に立つと魔法ローブ姿の数人が魔法を唱えて二人が立つ台を覆うように魔法が張る。その張られた外側に兵士長らしき人が声を上げて確認を取る。


「はい」


「いつでもいいぞ」


このフィールドの効力を説明をすると徐々に回復させるリジェネ。

それをマジックバーストという発動魔法を拡散させるための強化魔法。詠唱後にすぐに「バースト!」と唱えないと拡散しない。

少し遅れれば不発になるからだ。

発現する前に拡散を成功させても維持は難しい。通常はリジェネは一度発動すれば終わりの即時によるもの。それを維持をするには威力を

弱ませて維持を可能にする魔力とは関係ない技術が求められる。

それを拡散もしないといけないので高度な技術と魔力の両方が必要な玄人の向けの使用になる。

マジックバーストで発現したリジェネをリジェネフィールドと呼ぶ。そんな玄人ではないと厳しい

のを6人の魔法使いで発動している。そのため――


「おい!何をやっている力みすぎて息が乱れているぞ。変われ新入り」


「す、すみません・・・ハァ、ハァ」


「いいか。こういうのは理屈よりも精神が大事だ。魔力を残しておこうと制御を意識すれば、するほど無意識に多く使う。だから

平常心で心を乱れないようにするんだ。――悠久な癒やしを起こせ[リジェネ]!」


新人は邪魔にならないよう下がり絶句した。精錬の魔法使いがてのひらから顕現するは緑の球体で輝いている。


「バースト!」


唱え拡散するリジェネフィールドを発動。そこから維持するための魔力を枯渇しないよう制御しなければならない。

そしてもう一つの[パワーカラプス]。中級空間魔法で、魔法の複合などしなくても単純維持だけの魔法。広範囲に覆われ効果範囲内にいれば物理攻撃を著しく減損され魔法などで簡単に無効化させられる弱点があるが物理だけなら無効化されない。

それはさておきカーミラは剣を抜く。

選聖剣せんせいけんダブルXエックスカリバー。

まばゆく純白な聖剣を中段の構え。


「これがワタシの剣。ダブルXカリバーだ」


「ダブルエクスカリバー!?

いきなり序盤で戦っていい相手の武器じゃないだろ。戦って大丈夫なのかな」


「おーい、何ブツブツ言っているんだよ。早くおまえも剣を出せよ」


「あっ、ああ」


晴人は新聖剣ソティラスセイバーを鞘から勢いよく抜き。空のような聖剣を取り敢えずと剣術を知らない晴人はカーミラと同じ構えをする。

これって剣道みたいな構えだなぁと晴人は漠然とそんな事を思った。


「それでは決闘を開始する。始め!」


先に動いたのはカーミラだった。開始早々と姿を消してしまった。


「なっ!?」


カンッ。真正面からの横一閃を防ぐのは突然に現れた障壁の一部。

目を見開くのはカーミラだけではなく晴人も同じだった。

後方に宙回転して着地するカーミラ。


「気になったんだけど、それって魔法か?詠唱もしていないようなんだが」


「実は俺自身もこれが何なのか分かっていないんだよ」


「ふーん。生まれつきのスキルようなものかは知らねぇが次はどうだ」


残像が現れたと思ったら消える。否、移動したのだ。あまりにも速いため残像が見えたのだ。晴人は正面からの攻撃と別の方向からの奇襲を警戒する。

そして烈風が吹くとスピードをものに言わせる一方的な攻撃。ががっががっん!と、けたたましい音がしたと思ったら例の障壁が出現して守る。

これが攻撃だと認識すると背後からと大きな音が鳴る。


「まさか後ろまで防ぐのかよ」


「そうみたいだ。はあぁ!」


背後からの攻撃はカーミラがジャンプしてからの振り下ろし。それも防ぎきり晴人は剣を掲げて袈裟けさ斬り放つが左足を頑強な障壁を蹴りつけて後ろへ下がることで回避行動に移る。


「ブレイド!」


そのまま着地するのだろうと思いきやカーミラは尋常ではない速度で迫りくる。袈裟斬りに消えたばかりの障壁がまたも防ぐ。


「ここから攻撃をしてきた!?」


「これもダメなのか」


それを見たカーミラは2度目の障壁を蹴り今度こそ下がって着地する。


「硬いなぁ、それ。どうやっても突破する自信が湧かないんだけど」


「俺も驚いているよ。こんなに強力なんて、やっぱり選ばれただけはあるのかもしれない」


生きたまま召喚されたのではなく異世界転生だが、少なくともここに来てよかったと思っている。

美少女と話す機会なんて、生前で未来そんな事があるとは思えない。

この自動的に攻撃を防いでくれる障壁もチート能力の一種なのだろう。そう楽観視した発言にカーミラは顔を伏せていた。


「・・・何が選ばれたなんだ。ふざけるなあぁぁ!!」


「っー!?」


「選ばれなかったら選べないんだよ!」


絶叫するとカーミラは怒りの形相ではしる。ダッダダダガンと轟音ごうおんが響く。

速く走ると風が後になって起きる。ただそれだけの風をカーミラは武器へとなる。神速の足で走った道は一陣の風を巻き起こし敵を吹き飛ばすほどの風力を。

意図的に起こせる強い風の攻撃は四方八方と襲い掛かる。


「うわぁ!?どこから攻撃をしているんだ。嵐の中にいるのか俺は」


晴人の周りは暴風が起きている。障壁のおかけで髪が揺れていない安全な内部にいるが、いつ破壊されないか不安が積もっていく。

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