第3話―最強の証―

異世界で転生された深山晴人。

運命の相手と見ている金髪碧眼の騎士、エイブリー・パティエーンスは手綱を引いていて晴人は落っこちないように後ろにしがみついていた。

寂しく静かな山岳地帯の中を駆ける速さは競走馬以上。

しかし馬に関する知識に関しては皆無に等しく一般の高校生である彼は知らない。

本来なら足が速い馬は山道での走りは不向きであり、真っ直ぐな地面がそもそも滅多にないため移動手段移動としてロバでないといけない。

その馬は傾斜の道、けもの道であっても疲労をした素振りを見せずに走りれのか?

弱肉強食での厳しい自然の中、生き残るため過程で進化していた。

異世界の住人にもその種類がいなければロバなど移動手段として用いていただろう。


「ハルトくん抜刀を。どうやら前方から魔物が出現したみたい」


「えっ、はい。うおぉーー!」


片手でエイブリーにしがみついたまま晴人は新聖剣ソラティスセイバーを抜いてみたが、どこか覚束ない。

生前と生まれ変わった後では体幹たいかんや筋肉などが著しく変化してあって違和感を覚えていた。

変な表現であるが身体をどう扱えばいいのか分からないのだ。

自分の体重や身長も腕や足も非常に軽くて力強い。

どんな無茶な動きや、あらゆる思い浮かんだ反応を応えてくれる。険しい鍛錬を耐え抜いた領域に達しているからこそ

運動不足の彼は戸惑っていた。乗馬の揺れに落下する危うことないこと抜刀しても簡単に出来てしまうことに。だからなのか生前の動きをして

落下した。


「なっ・・・!?」


手を伸ばすが離れていく。そして背中から地面に落ちる。衝撃を減らす回ることもせず。


「くっ、痛い・・・いや痛くない?まるでクッションに落ちたみたいだ」


手で触れみれば硬い土だということに情報伝達する。また常識を変える常識。護衛の兵は心配そうな横目で通過していく。


「そんな、落ちたの。今は・・・周囲の魔物を近づかせないように」


「「はっ!」」


エイブリーの言葉たらず気味の指示に騎士らは意図を理解して返事する。

彼女は地面に落ちた晴人を愛馬を引き返して白い手を伸ばす。


「さぁ、早く!」


「あ、ああ。って、うわぁ!?」


華奢きゃしゃな女の子とは思えない膂力りよりょくを発揮して軽々と持ち上げてると、そのまま後ろの座席を下ろした。

一見これは乱暴にも捉えられるが鋭い目の持ち主には分かる。持ち上げて即時に体重を理解した彼女は力と

運動をどうすれば後ろまで掛けるかを。計算し確実な方法で後ろに座らせることを。


「ごめんなさい。馬上戦が苦手ならつかまってて。後は私が戦うので」


「は、はい。お願いします」


エイブリーは剣を抜くのは

紅蓮ぐれんの聖剣ゴッドカレドヴルム。

その光り輝く真紅の刀身は焔系統の魔法を剣に流れていき焔をまとう。


「回収しました。駆けていき離脱しますので私に続いてください!」


「「承知しました!」」


エイブリーの愛馬のジェットがいななかせると走った。

スライムが3体と褐色なサイ型の魔物の名前通りになライノセラスが2体を戦っていた護衛兵。空いた道を駿馬しゅんめが風のように走り先頭に立つ。続けて時間稼ぎしていた護衛も続く。魔物を相手せず、岩石の影から出てくる赤のスライム。偶然にも一体ではなく

その先からも赤のスライムがひしめく。


「しっかりとつかまてて。

はああぁぁぁ!」


愛馬ジェットは主人の右斜みぎななめにした焔の剣を熱気により放つであろう技を理解して移動を止まり魔物から横になるよう向きを変える。

焔が強くなっていき、そして袈裟斬けさぎりを放つ。通常なら届かない距離、しかし空を斬りそのまま焔を纏いし真紅の斬撃が飛ぶ。最初に顔を見せた赤スライムを燃やし尽くされ残灰ざんかいとなり風に舞う。その後ろに赤スライム集団も鮮明な赤の斬撃に一刀両断と刹那の爆炎。

断面から焔が勢いよく燃やす。くっついていた他のスライムも連鎖れんさしていき燃えていく。一瞬の出来事だった。凄まじい高熱に身体を灰燼かいじんと化すと焔は勢いを収まり奇跡的に残った灰は風に乗っていくそれは塵芥ちりあくた


「す、すごい。一振り全滅させられるって現実で見ると圧巻とかレベルじゃないぞ。これは」


「過大評価だよハルトくん。

最弱なスライムなんだから、そこまで驚かれると気恥ずかしいかな」


「そう言うけど・・・そうなのか?けど凄いと思いますよ普通に。

進路を妨げずに」


エイブリーは焔を放出をせず手綱を片手で引いて移動を再開する。

再びしがみつくことになった晴人。

後ろで話の一部分の内容を聞いていた兵は思った。


(赤スライムは色によって耐性が異常に強い種類がいるんだけど)


(あの色は焔には耐性が強いのに…見知らない彼は知らないだろうが得意耐性なら無効に等しいほどなのだぞ)


(これがディバインナイトの力ってわけか)


護衛兵のそれぞれ考えていた事は同じくゴッドカレドヴルムによる大火力に頼もしく畏怖した。

この異世界にはスライムの色によって無効化に等しいほどの属性耐性を持つ。たとえば青なら水属性と黒なら闇属性が強い耐性を持つ。スライムは最弱であるが、ある一点による凄まじい耐性が持つ。目を見るだけの長所はそれだけで、能力が低い。赤スライムを一掃した事に驚愕と称賛の護衛兵だったが同時に違和感を覚えた。それは

エイブリーも不審の念を抱いていた。


「それにしても、どうして赤スライムだけを?」


「何かありましたエイブリーさん。いえエイブリー?」


エイブリーさんと呼ばれるのを指摘を思い出し、呼び捨てで改めて呼ぶ晴人。


「ううん、何でもないよ。

まだ帰り道はまだまだ距離があるので魔物を接触するかもしれないけど警戒していくので安心してねぇ」


「は、はい!でも、いざとなったら助けます」


「危機的な状況に任せるね。その間は、私達に任せてねぇ。なんだか私お姉ちゃんになった気分で楽しい」


「そうですか。弟か」


「ん?もしかして嫌だったかな」


「いえ、そんなことはありません」


首を横に振るが異性として見られていないのかなと晴人は少しだけ、かなり落ち込んでいた。

異世界転生したら無条件でモテると思っていたがそうはいかなかった。それでも関係を築けばと前向きになる晴人。


(ああは言ったけど気をつけないと。赤スライムがあんな数はありえない。仮に集団で活動をする種族だとしても色が赤だけか怪しすぎる)


エイブリーは警戒を維持したまま愛馬を走らせて険峻な道を、荒原こうげんを超えていけるのも出来るのは空馬くうば

愛馬のジェットは空馬と呼ばれ由来は空を駆けるような走ることから。

森林の中をひづめを律動的に鳴らし街道が見える。

街道からは徐行で進む。エイブリーの不安は杞憂きゆうで終わる。

あの赤スライムは、エイブリーが率いる軍がもし砦を捨てて撤退しても追撃出来るように伏兵として用いたのが赤スライム用意したのだ。

焔属性だけなら高い耐性を持つと見ていたが一瞬で灰燼となったのだ。元ソロモン72柱のバルバドスの戦いで晴人が転生場所が別の場所であったならエイブリーは残りの兵を探し撤退していただろう。

そこで赤スライムがバルバドスの軍が来るまでの時間稼ぎ。エイブリーが万全なら一分もいらない相手であるが魔力が枯渇した状態で行けばどうなっていたか。

主に街道を利用するのは馬車か騎馬。日本に住んでいた晴人の言うところの高速道路か車道にあたる。歩行者は、その端に移動することに社会のルールとなっている。

晴人を伴って目的地に着いたことにエイブリーら騎士は心中で安堵する。


「やばい。こんなに大きいのがあるなんて」


晴人は高さ300メートルの城壁を見上げて、その大規模に言葉を失う。高さよりもその内側を囲む城壁、壁を沿って一周すると何キロあるだろうかと晴人はそんな事を考えていた。


「フフ、驚いているよね。

ここは首都であり最後の希望の

フィデス王国だよ」


「フィデス王国・・・」


ここが首都かと晴人は来て早々と感慨に浸かっていた。正門は南側。エイブリーだと分かると関所を護る兵は何も言わず敬礼。

エイブリーと同行していた騎士も手を頭にあてた敬礼で返して通過する。エイブリーの甲冑と元々の美貌が目立つため検問をする必要がなかった。

入門すると晴人は目を見開き驚いていた。その街並みにはファンタジー世界によく使われる中世ヨーロッパの街並みであった。


(まるでマンガやラノベの世界に立っているようだ)


「中央部にあるのは王城であり政治の中枢でもあるフィデス城。

その城下を総称して呼ばれているセメントリオだけど東西南北と分かれていて別の地域になっている。ここは南の地域で商売繁盛していて活気的な街で治安もいい方だよ」


鋭い人がいれば治安もいい解説に質問していただろう。指摘するとなれば南それ以外は治安が良くないと。

晴人は特に気にせず相槌を打つだけだった。

そして馬を徐行してからしばらくして荘厳で白い地面が舗装されている道。

真っ直ぐと続いていて何故なのか

誰も利用はしていなかった。


「ここからが真っ直ぐと王城に続いて軍馬を走らせる道路になっているんだ。どうして作られたのかは有事の際に逃げ惑う人達に衝突事故を起こさないようにと

考慮して作られたわけ」


「へぇー、そんな理由が。専用の道があるのってなんだかカッコイイですよね」


「私は生まれた時にあったから違和感はないかな。つかまってて。全力疾走で行くよ」


「そうなりますよね。はい、わかりました」


王城までその専用舗装された道で走られせる。一直線に風馬ジェットの速さに落ちないよう晴人は必死にしがみつくのだった。

フィデス城に到着するとエイブリーは報告を手短いに済ませて晴人を連れて王の間に入る。


(あれが王様なのか。リアルで見ると普通な王様なのが、また威厳があって萎縮してしまうなぁ)


有り体に言っても風貌や雰囲気はただならぬ皇族らしさがあるが

想像を裏切らない容姿と装飾だった。

晴人はエイブリーのついていきレッドカーペットの上を歩き、一定距離でエイブリーは片足のふくらはぎを地面につけてこうべを下げる騎士礼の一つをする。晴人はエイブリーに真似をする。


「公爵家の次女。ディバインナイトのエイブリー・パティエーンスよ。よくぞ中央砦を奪還してくれた。礼を言う」


「はっ!ありがたき幸せ。そのことにつきまして元ソロモン魔王が精鋭部隊の一体バルバドスを討ち果たせました」


「なっ!?あのソロモン魔王に仕えていた奴らか」


「まさか砦にいたのか!」


「それは本当ならスゴイことだぞ」


周囲がどよめく。大臣と文官などがどよめく理由は過去に散々と辛酸をめたからだ。

エイブリーの奪還任務も、ほとんどが用意万全とはいえ無茶には変わりなかった。長く悩まされた相手を倒せたことの驚きはすぐに収まる。

エイブリーは最上級のディバインナイト。世界で唯一の剣や槍と魔法の近接戦闘や魔法戦も兼ね備えた騎士。そして聖剣に選ばれたのも周知のため倒せても大きな驚きは一瞬であった。


「ほう。の伝説に生きる魔族を討ち取ったか。今宵はパーティーとなろうか」


「あっ、いえ私ではありません。倒したのは私の後ろにいる少年

です」


2度目のどよめく。次の衝撃は大きかったようで収まる気配がないと判断した国王の隣に控える若き宰相さいしょうの咳払いで収まる。


「なるほど。少年よ名はなんという?」


それは完全に俺の事だと、この場に注目された晴人は「はい!」と返事をし立ち上がり名乗る。

緊張で汗が頬まで流れているのを分かると、より緊張度が増す。


「み、深山晴人みやまはるとと申します!」


「よく魔族を倒してくれたミヤマハルトよ。後に褒美を与える」


褒美!?っと突然の言葉に晴人は

「ありがとうございます」と頭を下げることしか出来なかった。

国王は気になった。どんなジョブについているかを。


「伝説となった魔族を倒したのだ。ミヤマハルトよ、そなたのジョブとは」


「ジョブ・・・すみません実はここに来たばかりで自分がなんなのか分からずジョブは知りません。自分は異世界転生したんです」


「異世界転生?よく分からぬが後に聞かせてもらう。

宮殿魔法師に確認せよ」


「はっ!マルテよ。固定ジョブを確認せよ」


宰相フィレット・クリプトンが国王の代わりに命じるとマルテという宮殿魔法師きゅうでんまほうしは左端にいたマルテは拡声魔法を調整する。


「かしこまりました」


ローブを纏う魔法師により晴人はマルテが手を前に出すようにと

優しく言われたので従う。早口で魔法を詠唱して手を触れると

マルテは、目を見開き驚愕の表情を浮かべる。


「んっ?どうしたマルテよ。

なにか分かったのか」


宰相フィレットの疑問の問いに、マルテは答えるのは3秒ほど。


「・・・はっ、分かりました。

彼は救世主のもようです」


「なに?どういうことだマルテ。なぜ夢物語に出てくる救世主を」


「彼は・・・ジョブが救世主であります。あのようなジョブが本当にあったとは・・・・・」


「なっ・・・きゅう、世主だとバカな」


表情を表に出さなかった宰相フィレットが空いた口が塞がらないほど驚いていた。


「そんなことが」


「救世主がいたのか。現世にか?バカな」


「いえ救世主でしたら伝説の魔族を倒せたのも納得では?」


他の人達も誰も信じていなかった救世主に驚きの色を上げる。

絵本での架空の存在だと認識していた彼らの驚きは大きかった。


「ハルトくんが救世主だったの」


ひざまついていたエイブリーも驚きに禁じえなかった。彼女も

幼い頃に夢を見ていた救世主は大きくなるにつれ次第に思考は現実的になり実在しないと理解していく。


「静まれ」


国王の一言に皆が動揺していた声は静まる。その威光のある声には

冷静とさせる不思議な力を持っていた。


「救世主ミヤマハルト、そなたには全人類をみちびく存在となってほしい」


国王は重責による強い信念の目を宿って述べた。それは神の使者で

あろうかとも思っていた。

晴人だけが状況についてこれずに

困惑するだけだった。

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