第1話―ハードな人生に別れを、始まるチーレム人生―

伝えたい事がいっぱいあった。

失ってから気づくものがある。

本当に知った純粋な想いを。

俺は…それを伝えきれなかった。

この後悔は激しく渦となって何がなんなのか分からなくなってくる。

言っていたのは後悔の無い選択を。

という今になって灰となって、こびりつく心に深く突き刺さる陳腐なれど、どこかキレイな助言。

前の俺はそんな失敗はしないとバカにしていた。


「本当に失ってから気づく。

遅すぎた事実を…ッ!?」


――何を言っているんだ俺は。

学校の帰り道、俺は訳の分からない言葉を口にしていた。本当に訳が分からない。

頬が濡れているのは…涙?どうして。

商店街から出て、すぐ横断歩道が見える。青に切り替わるのを前で待っていると背後から若い女の子の声が

聞こえる。

肩を越しにに振り返ってみたら同じ制服に身を包んでいる2人。

どうやら俺を眺めながら悪口をささやいていたらしい。非は、その二人があるのに理不尽にも顔をしかめ、嫌悪感を隠そうともしない。

理由は一つ俺の独り言だろう。

まぁ、ヤバい奴だって思われるよな。


「ヤバイよね。あれっ」


「ほんとぉぉヤバい。キモいよね」


傷つくからやめてほしい。

どうして、すぐそんな中傷させる言葉を聞こえる距離で言うのかな?

もう少し気遣いというのをほしい。

けど、こんな反応は慣れている。

生まれてからブサイクだった俺は女子にキモいなんて日常的で蔑まれた眼差しを向けて言われ続けられていた。

耐性がある程度とついてくる。

信号が青になるまで俺は我慢して耐えてしのぶ。早く青になってくれと念じたおかげか歩行者が進む色と替わる。


「ねぇ、あれ。速くない?」


「マジだ。ちょ、ちょっとヤバくないアレ!?」


なんだか焦りや緊迫感がある声に振り向いた。

名前の知らない二人の女子は慌てて走っていく。

まったく現実での学校で美少女なんて、いるのかな?

少なくとも俺が通う学校には一般的レベルだし。

やはりラノベのようにアイドルのような美少女はいないんだよなぁ。


「んっ?……え、あ」


右に向くと、スピードを落とさず真っ直ぐと突き進むトラック。これ、

もしかしなくても居眠りじゃないか!

そうじゃなければ、信号が赤で減速どころか目の前にいる俺がいるんだ。運動神経が壊滅的である俺が避けられる距離じゃない。

トラックにぶつかる。激痛を感じる時間は一瞬、意識が光ごとくの速さで無くなっていく。

まるで電気を消すのと同じで。

貴方は生まれ変わった。さぁ、目覚めなさい。

鈴を転がしたような声。

女の子の声だ!目覚める?何を。


「な、なんだ!?この壁は」


「なんて、硬いんだ。壊れろよ!」


次は荒々しい野太い声。カン、カンと何かを叩いて弾かれている音が鳴るが壊れる心配はない。

何故か、そう確信だけはあった。それに五感が動ける!目は閉じたままだが手や足が軽く感じられ、まるで生まれ変わったみたいだ。

整理つけるのと目をとりあえず開いてみる…視界に広がるのは、砦の城壁内とゴブリン、オーク等が武器を振るう光景であった。


「うわあぁぁ!?」


武器は俺に当たる事はなかった。

見えない障壁によって防いでいたからだ。そんなことよりも何これ。

禍々し過ぎないか。それに人間が牙とか角とか肌もまったく違う。


(いや、人間に牙とか角は無いんだが)


一人でノリツッコミを心中でしていると俺は周囲を見渡して確信する。

ここは蓄えた知識にこれと

類似としたのを知っている。

どうやら俺はすべてのなぞが解けた。


「ここは、異世界。

そして俺は生まれ変わった…つまりこれは、

異世界召喚だあぁぁーーー!!」


すげぇー。本当にあるのか。マジでスゴイなぁ。うん、なら俺は

異世界でチートとかハーレムを築くことが出来るのか!?

今から敵を倒した時の勝利のポーズやセリフも今から考えておかないと。

それと美少女に惚れさせる言葉も考えておかないと。


「これは、何が起きたと言うの!?」


後ろを振り返ると美少女がいた。

つややかな長い金髪は右にたばねている。んだ碧眼へきがんに、あどけなさが残っている。

光沢感のある白銀プレートアーマーは顔以外には装着していた。

異世界では必ずと言っていいほど金髪碧眼をした美少女いてジョブは騎士だろうか。

そして彼女が手に持つのは鮮明な赤色をした剣。


「安心してほしい。俺が来たからにはキミを絶対に守ってみせる!」


「私を守る…あなたは一体?」


今が名乗る絶好のチャンス。


「俺か?ああ、俺は…ただキミを助ける騎士って、ところかな」


「騎士?もしかしてシェルシェ騎士団の人なのですか」


シエルシ?この異世界では有名な騎士団なのだろうか?


「ハァッ!」


「グエェ!!」


美少女の背後から赤いゴブリンのこんぼうが振り下ろそうとする。

背後の不意打ちでありなからも見えていたのか、または読んでいたか軽々と右2歩ほど距離で軽やかに飛び着地。そして色鮮やかな赤の剣が一閃する。

ゴブリンの胸部から

血飛沫ちしぶきが勢いよく飛ぶ。まるで噴火のようだ!アニメ等で見慣れている光景。しかし目の前で見るものは背筋が凍るものだった。


「どうやらダーク系ファンタジーになるか……。

そうなるとチート恩恵があるか不安だが、まぁ下級モンスターぐらい、いくら何でも負けないだろう」


一刻も早く助けないと危険だ。

転生して、ここがどこか知らないが現在で美少女がやられたら普通にゲームオーバーだ。

加勢する前に、この見えない壁をなんとかしない限りに出られない。

腰に剣帯けんたいしている柄をつかみ落ちないよう強くにぎって抜く。


神聖剣しんせいけんソラティスセイバー…っ!?どうして名前を知っているんだ」


さやに収めていて分からなかったが刀身は空のように明るく青い。美しく心が奪われてしまう。そして刀身に映るイケメンが俺と同じ動作をする。否!これは

俺自身だ。明るい青の髪と緑の目をした本来の俺の姿と比較が出来ないほどイケメンになっている。


「おっ、奇妙な壁が消えたぞ」


「ずいぶんといい武器を持っているじゃねぇか。戦利品をいただくぜぇ」


「待ちやがれぇ!それはオレのだ」


モンスターがなだれ込む。

スカイブルー色の剣を抜くと見えない壁があった場所にモンスターが地面を踏む。これ、俺が剣を抜くまで仕様なのか?


「う、うわあぁぁーー!?」


身をすくんだ俺は目を閉じてせめての抵抗と剣を乱雑に滅茶苦茶に振るう。生々しい感触した。

子供みたいな反撃に襲い来るモンスターは一行に来ない。閉じた現実をもう一度と開くと俺が斬殺したモンスターの死骸があった。


「こ、コイツ。なんてめちゃくちゃな攻撃をするんだ!」


二本足で立ち防具を着用しているサイの亜人がおののく。


ほのおを[フレイム]」


魔法の詠唱。

背後から手のひらで収まるサイズの

小さな焔が直進してサイに着弾すると巨体のサイを包む爆炎が起きる。


「シュ、シュニーーーン!!」


断末魔をあげるサイ。見た目に反してスゴイ威力を誇るんだな。


「怖じ気ついていたようだけど、平気。もしかして新兵か貴族だったり…する?」


金髪碧眼の美少女は駆け抜けて俺の全面に立ち守ろうと剣を構える。皮肉に聞こえるけど、心から心配しているのが表情と声音で解る。


「へ、平気だよ。それにどちらでもない。戦うのは初めてだけですから」


「そう、よかった。私が突撃するから…えーと?あなたの名前は?」


「まだ名乗っていなかったか。

俺の名前は深山晴人みやまはるとと言います」


「ハルトくんは後方で弱った敵を仕留めて。スゥー、ハアアァァッ!!」


息を吸い、そして気迫の声を叫んで敵の集団に向かっていく。


「ちょ、ちょっと!一人じゃ危ないですよ」


カッコつけるの忘れ、威風堂々とする彼女にいつもの敬語になり

掛けるが止まるつもりはないらしい。一方的だな、お姫様みたいな容姿の騎士なのに。

そういえば俺は彼女の名前をまだ聞いていない。


「なっ!?まだ戦えるのかよ。あの女騎士」


「びびるんじゃねぇーぞ!よく見ろよ、疲労して剣に焔を放出してねぇじゃねぇか」


「へへ、言われてみれば、そうだな。魔法と剣技も強いディバインナイトが初級魔法しか使えないのは、もう限界だってことだよなぁ」


覇気のある声を叫ぶ彼女に、怯んでいたモンスターらは彼女が弱っていると推測し不気味な笑みで声高にわらう。

なんだよ、これ怖えよ。

ディバインナイトというものが無知なので予備知識でどうにか想像するしかないが、バカでかい声で耳を傾けなくても聞こえた情報に魔法と剣技も強いと言った。

それに初級魔法と安堵するのも、中級以上を取得している事は知っているようだが。


(だとすれば、かなり傷を負っているのに俺のために。

あぁー!クソッ。俺は何をしているんだ。異世界転生して、したいのは守られる事じゃない。

守って助けるのが俺が憧れたものじゃないか!)


なら俺がやるべきことは。名前の知らない彼女を守ることだ。

手が震えているが、不安や恐怖には従わない抗う。そして前に…出ろぉぉ!


「うわああぁぁーー!!」


地面を蹴り最も近い必死な彼女を侮辱するオークに剣を両手に高く上げて一刀両断。

大上段斬り、手に響くのは深々と斬った生々しい感触だ。

嘔吐感おうとかんが襲う。


「はぁ…はぁ、何を…安心しているんだよ…モンスター共。

まだ俺がいることを無視しないでほしいんだが」


身体の疲れはまったくと言っていいほど無い。

しかし魂は、心は違う。

異世界転生して最強の肉体を手に入れても心までは変わらない。急に変わった新しい身体からだに違和感で均衡感覚きんこうかんかくがめちゃくちゃで混乱しているし、気分が悪すぎる。


「なんだと!?オレらが劣等種族のモンスターだと言うのかテメェは!」


「ウゥガアァァ!!」


「殺してやるぞぉ人間風情ふぜいがあぁぁぁぁーー!」


憤怒するモンスター達。

どうしてモンスターと言って、ここまで怒るのか疑問が残るが、それよりも戦わないとやられる。


「あ、ああぁぁーーーッ!」


重武装する俺より大きいゴブリンは大剣を振り下ろそうと高く上げる。

その前に左から右の逆袈裟斬けさぎりで血が飛ぶ。

まるで豆腐とうふを切るかのように簡単に防具ごと斬れた。

簡単に斬っても大事な物も斬った恐ろしい感触がある。


「がだああぁぁーーーッ!」


次は左から短剣を刺突せんとする

肌が岩石の人間。俺は斬った巨体ゴブリンごと聖剣の刀身を白い輝き包まれ伸ばし右から袈裟斬けさぎりで二体同時に斬る。

相手の身体を二つにさせた恐怖と柄から斬った衝撃が嫌でも伝わる。


「はぁ、はぁ、はぁ…っぁ?」


背中に違和感を感じ半身だけ振り返ると、剣が刺さっていた。


「なっ!?」


刺した敵は、またも変わったモンスタ人間とほとんど大して変わらない牛。

それよりも命を奪う事もできる剣を刺された恐怖と痛みが無いことに全身から冷たくなる感覚に陥る。


「あ、ああぁぁぁーーー!!」


俺は叫び上げて人型の牛を袈裟斬り

する。


「グモォォ!!」


「あああ…あぁぁぁ!あぁぁぁ!!がアッァァァ!!」


刺してきたモンスターに執拗的に何度も斬って、何度も斬り、斬りまくる。


「この、化け物がああぁぁーー!」


俺と同じ身長のネズミが槍を振り上げて叩こうとしてきた。

突くのではなく殴打の叩く事ほど冷静さを失っている。

それは、俺もそうだが。


「ずだあぁぁーー!!」


勢いよく横に払い上半身と下半身を分断させる。叫びたくなるほど恐慌。


「でやあぁ!!」


「「ぐわあぁ!」」


美少女の騎士が華麗に二体同時と水平のぎ払い。あんな恐ろしい戦いに、どうして冷静にいられるのか。モンスターは周囲に味方がいないと分かったか逃げていく。

物量では無理と分かったから、それとも単に味方の数が少ないと思ったか。


「落ち着いてハルトくん。顔面蒼白がんめんそうはくになっているよ」


「ハァ、ハァ、ハァ…ゴホッ、ゴホッ。うっ、おえぇぇーー」


喉から生暖かい液体が口から出てくる。吐瀉物としゃぶつを一気に砦の敷地である一部を汚す。


「もう、大丈夫だよ。安心して」


背中を優しくさすってくれた。

こんか時なのにバカな事を考えてしまった。女の子に優しくされたの初めてだと。まぁ過去に優しくされた経験はあるけど。中高生に

なってから心の底から事務的なのじゃない優しさは。


「あ、ありがとう…助かりました」


根気よく見てくれたおかげか、落ち着いてきた。かなり長く吐き続けていたのは恥ずかしい。

お礼を述べた俺は改めて彼女が、飛びっきり美少女である事を気づく。

すると彼女は傾けながら優しげに微笑むのだった。


「別にいいよ本職だから。

…えーと、顔が赤いようだけど平気?」


「あ、ああ。大丈夫です」


「そう?でも無理はしないでね。

無理をしていそうな気配があるし」


「け、気配ですか?」


「そうそう、話をするときは目を見てくれるけど終わると目を逸らすよねハルトくん」


いやキミが超絶美少女であることを自覚するべきだよ。大抵の

人は眩しくて目を逸らす。

そんなハッキリと言えるほどコミュ力が一般に達していないんだよね俺は。


(戦いはグロすぎるが美少女がいるから満点の異世界。いやグロが

あるのに駄目だろ普通に)


そう思わなくなるほどハーレムイベントに今後は起きてほしい。


「コホン。ご助力に感謝します。

ここにいる私、以外は魔族の襲撃により取り乱し逃亡と討たれる等のひどい失態を冒した」


姿勢を正した彼女は優しい表情ではなく気を引き締める顔になっている。俺を騎士か何かと思っての礼節なのだろう。しかし、ただの高校生でボッチな俺にする価値なんて無いのに。

それにこの説明だと、まるで指揮をしたことになるのだけど言葉を間違ってしまったのかな。


「あの、そんな改めなくても構わないですよ。俺はただの高校生だけで――」


「っ!」


彼女は地面を蹴って掛ける。俺は振り返ると彼女の背が見えた。

どうやら俺の背に回っていたようだけど、急にどうしたのだろうかと思ったが禍々しい闇の槍が襲う。


「ハアッ!」


彼女は、炎のように猛々しく燃える闇の槍を紅蓮の剣で防ぐ。

しかし威力が強く、後ろへとゆっくり後退っていく。危険な攻撃をどうして向かったのかは、俺を守ろうとしての行動だと遅まきながら気づく。


「くうぅ、はああっ!!」


彼女は、なんとか闇の槍をはじけ飛ばして防ぎきった。

かなり体力の消費が大きく激しく息切れになる。


「大丈夫ですか?どうしてこんな無茶を」


「はぁ、はぁ、はぁ…これでも私は騎士だからね。守るのは当然だよ」


俺は片足の膝を地面につけて屈んで声を心配して声を掛ければさわやかな笑みで応える彼女。まったく、美少女なのにカッコいいよ。


「くくっ、今回の獲物は随分ずいぶんとくだらない正義感を持つようだな」


「そんなこと無い!」


彼女の騎士としての誇りのある行動をけなすセリフを俺は許せなかった。反論して勢いよく立ち上がり声の方へ向く。

すると漆黒の軽装をしたイタチであった。そして人と変わらない背丈と二本足で立っていることも。


「倒れる無能な指揮官を倒す価値が無いと思ったが、ここまで兵を失えば流石さすがに黙ってはいられないなぁ」


イタチは左手を前に出し手のひらから放った槍が意思を持つ生物ごとく戻ってくる。

まるでブーメラン、武器は槍だけど。つかむと闇の炎が燃える。手に闇魔法など送っているのか。ともかく倒さないと

彼女を守れない。俺は聖剣を抜剣して中段の構えを取る。


「なら、どうするんだ?」


「もちろん…こうやって貫くんだよ。だあぁぁッ!」


黒いイタチ右手の槍を後ろに引き素早く走り始める。助走で威力を加速と飛距離を伸ばしていく。

そして振りかぶる途中で腕が蛇のようにしならせリリース。真っ直ぐと、風を切って猛進。

解き放った黒き槍は刀身に命中し非常に重たい攻撃。


「なっぐっ、ううっ。ガッアァ!!」


おたけびを上げて俺は槍の攻撃を弾くことに成功した。

イタチの攻撃を防いだは少踊りしたくなるほど。だが、それは奴の放った場所が刀身であったから。

もしかしたら狙っていたかもしれない。だとしたら刀身ではなく頭や胴体を定められたら、どうなっていたか…少なくともザコの攻撃を痛みはない頑丈な身体は無事に済むとは思えない。


「ほう、やるなぁ。オレの一撃を簡単に防がれたのは数少ないぞ」


「出来れば逃げてくれたら後ろから狙わないけど。どうする?」


「はっ、んなもん。最初からねぇよ。オレが狙いを定めた獲物は必ず仕留める。それがオレの誇りだ」


黒イタチは顔が人ではないからか、ちょっと読み取れないが好戦的な表情で頬を緩める。またも右手を前にすると、投げた槍が手のひらに戻っていく。そして闇が包み込んで威力を最大限まで高めて始める槍。


「へっ、せっかくだ。強敵には名乗る事にしているんだよ。

元ソロモン72柱ななじゅうふたはしらの一体である黒き狩人かりうどバルバトスだ!」


「ソロモン72柱!?ま、まさか中二病なら刺激されるのが来たか」


「あぁ!?オレらの事を知っているのかような口ぶりだな。

人間には生きていない遥か昔だぞ」


「俺らの国では知っているは恐らく多いぞ。特に中二病の場合はとくにだ」


中二病になると、やたらと七つの大罪とかソロモン72柱とか調べて語りたくなる時期がある。

実際は、そこまで詳しくないだけでスマホで軽く調べたりしていた。


「へっ、そうかよ。変わった奴もいるもんだなぁ。そんな事より名前は?」


「俺の名前は深山晴人みやまはるとだ」


「ミヤマハルト。オレの全力でやらせてもらうぜぇ」


「っ――!?」


目が本気だ。殺気がこちらにも肌で感じる。どうする!何か打開策は、俺も遠くから放って技が無いか……あった。だけど、使えるかは賭けになりそうな方法だ。

もし俺がチートを使えるなら出来るはずだ。俺は右手を前に広げる。


「焔を…[フレイム]」


遠くから狙えるなら魔法だ。詠唱や知っている魔法は残念だが美少女騎士が使った魔法をそのまま詠唱を真似てやってみた。

結果は何も起きず失敗した。


「なっ!?」


「初級魔法?そんな使えない魔法をオレに使おうとしたのか…よ!」


バルバトスは腕をしならせ槍を投げた。真っ直ぐと槍は闇の炎を威力を増していく。

バカにした初級魔法フレイムが軽い爆発するぐらいだ。こんな

見るからにヤバそうな炎を受けたら終わるかもしれない。

いやだ!俺は彼女を助けると決めたんだ。一度、死んだのに転生して無駄な命で終わりたくない。

必ず果たす。ここで死ねば彼女も死ぬなら、せめて守れる力を。


「チートならやってみろよ俺えぇぇぇぇ!!焔を[フレイム]」


身体中から力のようなものが巡っていく。槍がわずかに届く距離に小さな火炎球が手のひらから発射する。そして、俺の周囲から小さな焔が生成し同時発射。


「なにっ!?」


幾千の初級焔魔法が槍に命中し吹き飛す。どれほどの数が放ってたか知らないが。スゴイ、やっぱり俺はチートのようだ。槍を回収される前に次のフレイムを放とうとする。しかし、事態は想像の斜め上にいく。

詠唱をしていないのに再びフレイムが放つ。俺に左右と上が焔が自動で作り同時発射する。


「なっ!」


バルバトスは右に避けて回避を取る。


「私は見たことない…あれほどのフレイムは。何重なのか、2連撃まで出来るなんて」


彼女が言う重とか連撃が何なのか

知らないが単純に前向きに考えてチートなのだろう。もしかすると、まだ撃てるかもしれない。


「これで、フィナーレだあぁぁ!!」


3度目のフレイムが練度の高い大軍からの弓の雨あられの攻撃ごとく同時に発射する。


「ぐっ!?」


黒イタチは両手をクロスにして攻撃を防ぐ構える。

まだ、倒れていないはずだ。まだ、まだまだまだぁ!

俺は心の声を聞いてくれたのか初級魔法フレイムは再び同時発射する。それどころか前よりも数多の多発的な連射と強力になっていく。

間断なく放ち続ける。

フレイム同時連射一斉射撃。


「数え切れない連撃を撃ち続けている!?そんなことが……」


よほど信じられない光景なのは美少女騎士の反応からして一目瞭然だ。

かなり激しく攻撃を続けてしまいイタチもといバルバトスがいた場所の煙が晴れると、姿が無かった。…いや、小さなクレーターが出来ていた。こんなの穴を開けるほどしたのか。


「…こんなにあっけないなんて」


強敵なら最後のセリフやカッコいい所を在るべきなのに俺の力がそうさせなかったことのか?


「わあぁ。やったあぁ。やったねぇ!ハルトくん」


「えっ?あっ、はい。やりました」


呆然としていた美少女騎士は、先ほどのクールな所や気品でどこか抜けている影はなかった。

無邪気に笑い駆けつけた。俺はそう言うと彼女は両手を小さくあげる……これ、ハイタッチしろと?


「はい!早くハイタッチ」


「……えーと、はい」


あっ、本当にするんだね。勢いよくタッチする彼女。うーん、美少女にハイタッチした事には嬉しい

はずなのに無邪気な彼女を見ると、意外な反応に驚きの方が上。


「フフ。まさか、初級魔法のフレイムを数十以上の連撃を出来るなんて初めて見たよ」


屈託のない笑みで称賛される。おかしいなぁ。俺の力はずなのに

罪悪感がある。たぶん転生した、この身体は偽りだって思っているからかもしれない。


「いえ、そんな事ありませんよ。えーと、キミはこれからどうするんですか?」


「制圧された砦を奪還。それからは凱旋して報告かな?かなり大変な話題になるだろうけど」


「そうなのですか。その…キミについていてもいいかな?」


「うん、もちろん。そういえば、わたしの名前を言っていなかったね。

エイブリー・ パティエーンス」


分かっていたけど日本人の名前じゃないから覚えれるか自信がない。もしかすると俺の物語でメインヒロインになってくれる人かもしれない。

そして困難を乗り越えて本妻にあたる

人になるから絶対に頭に入れないと。


「それじゃあ。私は魔族を追い払いや事後処理班を要請に行くから、ここで休んでいてね」


「ああ、分かりました」


エイブリーは石材を積んだ壁を伝って走っていく。アーチ状の通れる道に曲がって姿が見えなくなる。

俺は大きなガレキにでも腰を下ろして今後の事をゆっくり考えるとしよう。

腰を下せるような場所がないかと晴人は見渡して丁度いい場所に見つけて近づく。

座ろうと何もない空間から突然、白い煙が漂い始めた。


「なっ―!?」


『会いたかった!』


俺の目の前から煙は強くなる。一部だけ晴れると美少女が立っていた。

美しかった。透き通る赤い瞳をしている。鮮明なピンク髪を腰まで伸ばしたストレートヘア。

頭の上に黒い角が生えていた。形はヤギの角と似ている。

豪奢ごうしゃなピンク色のドレスは彼女ためにあるのではないか。


『好き…大好き!』


!?満面な笑顔をしたと思ったら何を思ったかハグしてきた。

いい匂いをするし胸とか当たっているのだけど。人生で一度も

美少女にハグされた事ないので刺激が強すぎる。


『えへへ、そう喜んでくれるならドキドキが止まらないよ』


ほおを赤らめ、回していた手を離し3歩ほど後ろに下がり距離を取る。深呼吸し、明るかった笑顔が今は潜み深刻な表情になる。


『いつか大事な人は知らないうちに死んでしまう。

それは変えられないしよみがえれない。

…だから助けないで』


助けないで?詳しく教えてくれないか。ドレスをした女の子は身体全体に薄れていく。

このまま消えていくように――

待ってくれ!まだ伝えたい事があるんだ。彼女は悲しそうな顔で

無理して笑顔を作り手を降るだけ。俺は手を伸ばすが、届く前に消えてしまった……。


「…夢か?」


画面が急に真っ暗となり次に何も無かったように映るようなものを体験してきたみたいだ。

非現実的な場所にいて俺の結論は幻であった。

あれ?目に違和感がある。右手で軽くこすってみる。


「…涙?どうして流れているんだ」


悲しい事は起きていない。そのはずなのに涙が止まらず頬を伝って流れる。原因は分からず、どうしようも無い悲しみだけ残って心の中こだまする。

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