第4話 漁師はようやく海の近くへ到着する。

  異世界に来てから3日が経ち、もう4日目を開始している。

  まあ、俺はまったりやる予定だから特に特に問題は無いんだけど、早く地球に帰りたい人達は急ぎたいだろうなー。だからそういうのは全てクラスメイトへと投げ渡すことにした。俺は別にこっちに住んでもいいし。両親には悪いけど、こっちでの生活も嫌いじゃないんだよな。


  「おはよう。今日にもう出るのかい?」


  食堂に行くと、イルザさんに挨拶された。


  「おはようございます。そうですね。早めに行って損は無いですから」


  早く魚料理も食べたいし。そう本音もサラッと漏れてしまいそうになるがこらえる。


  「そうかい。まあ、私がどうこう言えた立場じゃないけど、気をつけるんだよ?あんたはうちの常連になってもらいたいからね」

  「また機会があればぜひ伺いますよ」

  「よろしく頼むよ」


  そんな会話をしながら、俺は朝食を自分の席へと持っていった。

  今日は普通のパンに牛乳、サラダ等、洋風の典型的であろう朝食だった。

  正直に言って俺は朝はパンだけで大丈夫派だけど、こういう健康的な朝食も俺は好きだ。


  食べ終わると、食器を戻し、俺はリヒトの部屋に向かった。


  「リヒト、起きてるか?」

  「はいはーい」


  中から声がして開けると、上だけ裸の半裸のリヒトが立っていた。


  「……何してたんだ?」

  「何って筋トレ。服着たままだと暑くてやってられないからな」


  俺はこの光景を見た時にすげぇ誰得?って言いたかった。確かにリヒトは筋肉質で細マッチョだけど、こういうのは俺は求めてないんで。


  「もう出るか?」

  「いや、あと30分ぐらい待ってくれ。まだ支度等色々終わってないから」

  「分かった」


  俺は扉を閉めて、今の視覚の情報だけを消去し、自らの支度を始めるのだった。


_______________________


  30分後。

  俺は拳を握りしめ、リヒトの部屋の扉にたっていた。なんて拳を握りしめてるかって?護身用だ。変態が出てきた瞬間殴れるようにな。


  「リヒト、行けるか?」

  「おっけー。ちょっと待ってろ」


  扉が開けられると、そこには普通のシャツを着ているリヒトがいた。


  「ほっ……」

  「その安心感について追求したいところもあるが、そろそろ行った方がいいだろうな」

  「そうだな」


  俺たちは羊の皮亭を出て、馬車停へと向かった。


  「スパル行きの馬車は……もう来るな。忘れ物とかはないよな?」

  「ああ。ないはずだ」

  「まあ、忘れてたらイルザが気づくはずだからまたよって確認しといてくれ」

  「分かった」


  すると、馬車がやってきた。


  「達者でな。死ぬんじゃねぇぞ?」

  「それはこっちのセリフだ。お互い頑張ろうな」

  「おう。それじゃあな」


  俺はリヒトに後ろを向きながら手を振り、馬車の中へと入っていった。

  どうやらスパル行きの馬車に乗るのは俺1人だけみたいだな。そして馬車はゆっくりと出発した。


_______________________


  ミレイスの都市を出て、森林を抜け、潮風を感じるところまで来た。


  「そろそろかな?」

  「おや、お客さん。分かるのかい?」

  「スパルって確か海に隣接する町でしたよね?なら、潮風もしてるしそろそろかなーって思って」

  「潮風って海の近くで感じる臭いかい?よく分かるね」

  「ただの勘ですけどね」


  俺はそう言いながら袋の中身をチラチラ確認する。

  袋の中に入っているものはだいたい分かったけど……これは海限定では勇者以上にチートかもしれないと俺は思った。

  内容は後のお楽しみだ。


  「そろそろ見えてくるよ」


  御者のおじさんが俺にそう行ってくる。

  そして森を抜けると、高台にいる俺の視界には海とゴテゴテに何重にも門が設けられている都市スパルが見えた。


  「うわー、思ったよりも要塞都市感が凄いレベルだな」


  俺の都市を見ての感想はこれだった。


  「お客さん、スパルは初めてかい?」

  「そうですね」

  「なら、スパルの魔物の刺身は食って行った方がいいと思うよ」

  「海の魔物って食べられるんですか?」

  「ああ。毒も持っているやつはいるが、それさえ取り除いてやれば絶品になるんだ」

  「へぇー、 それは楽しみですね」


  刺身か……。俺は好きだからいいんだが、一応生だし食べる時は気をつけた方がいいかもしれないな。

 

  馬車はそのまま進み、スパルの門までたどり着いた。


  「通行証を見せなさい」


  そう言われたのでおじさんがその通行証を見せ、それでOKが通った。

  俺も何か見せた方がいいのかな、とか思ったけどそんな心配は杞憂だったようだ。


  無事門の検閲を通り抜け、中へ入っていくと、そこは以外にも活気が溢れる街だった。


  「お客さん、驚いたかい?ここの街は要塞都市何てもの名乗ってるが、それは海に面しているだけで本当はもっと活気のある街なんだよ」

  「——ああ。驚いた」


  あんなに重厚な防御している街がこんなに活気とは誰も思わないだろ?まあ、人が明るいということはいい事なんだけど。

 

  「それでお客さんはどこまで行くんだい?今日はまだ時間があるから送って行ってあげるよ」

  「本当ですか?それじゃあお言葉に甘えて……冒険者ギルドの方までお願いできますか?」

  「冒険者ギルドならもうすぐそこだぞ?ほら、あの大きめな建物」


  おじさんが指さしたのは3階建てのそれなりに大きい建物だった。

  そこには冒険者ギルドとデカデカと書かれてあるのが見えた。見えてもなんで見えているのか分からない文字だけど、どうせ転移特典というテンプレ的な展開なんだろう。


  冒険者ギルドの前に着くとおじさんはすんなり下ろしてくれた。


  「これ、代金です。お釣りはいいので」

  「いいのかい?」

  「ここまで案内してくれたお礼ですから」


  俺は金貨をおじさんに渡し、冒険者ギルドの中に入っていった。


  中は2階と3階が吹き抜けているのか、随分と広く感じた。


  「いらっしゃいませ。ギルドの登録ですか?」


  受付嬢にそう質問される。


  「まあ、それもそうだけど、これをここのギルドマスターの人に渡してもらえませんか?」


  俺はそう言い、王様から渡されていた2枚の手紙の内の1枚を渡す。


  「これは……王家の印ですか?……少々お待ちください」


  受付嬢は至急確認に行ったようだ。

  まあ、偽物でもないし、これでイチャモンつけられるよりは確認しに行ってくれた方が助かる。

  王家という単語を聞いた他の冒険者たちはヒソヒソ声で俺の噂をしているのが聞き取れた。まあ、興味は持つだろうな。だって王家とコネクションがある人物と思われているのが今の俺の客観的な評価なんだから。


  「お待たせしました。ギルドマスターがお呼びです」

  「分かりました」


  俺がついて行くとヒソヒソ声はさらに増加したのだった。


 

  「ギルドマスター」

  「入れ」


  受付嬢がそれだけ言うと催促の指示が来た。

  受付嬢が中に入ると、俺も一緒に中に入った。


  「お前さんが勇者の1人か?」

  「まあ、俺は勇者じゃないんですけどね」

  「それは知ってる。王家から手紙が来るなんて普通ありえないからな。それでこの街の領主様のところに入ったのか?」

  「いや、向こうは入り組んでいて通るのが面倒くさそうだし、こっちから先に来ることにした」

  「そうか。その内貰っているであろうもうひとつの手紙も渡すように」

  「はい」


  中年の男、ギルドマスターにそう言われた。


  「それで今日から行くのか?」

  「そうですね……試したいこともあるので今日から行かせてもらいます」

  「分かった。こちらで冒険者の登録はしておくが、血をこのカードに垂らしてくれるか?」


  そう言われると、カードと小さいナイフを渡される。

  俺は軽く自分の指を切り、零れた血をカードへ乗せる。


  「これで大丈夫だ。それじゃあ海には南側……こっちから見てあそこの門から出られるから。門番にはこちらから連絡しておく」


  ギルドマスターは指でどのぐらいの方向にあるのか指を指す。


  「ありがとうございます」

  「国王陛下からのご命令とあればここまでするのは当たり前だからな。それじゃあ行ってこい」

  「はい!」


  俺は元気よく返事をし、冒険者ギルドから出ていくのだった。

 

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