第4話 孤独感

スズが出演して、一ヵ月は過ぎた。

出演をして、、REM君の動画コメントで、

‘スズはツイッター垢作らないんですか?‘

‘スズちゃんの事もっと知りたい‘

‘ゲスト出演じゃなくて、個人でも活動すればいいのに…‘

など、多くの声をいただくようになり、出演して三回目の時にアカウントを作り、REM君の動画でお報せしたのだった。

個人的に、疑問や、アンチのコメントは怖いと思っていたけど、それよりもREM君のお手伝いや、動画に出ることが楽しくなり、どんどんネットの世界に飲まれていった。


「鈴歌、今度この実況やるんだけど、やる?」

れお君から、メッセージが来るようになり、みんなが見ていて、話しを聞いてくれる感覚がとても心地良かった。

「やる~。いつに撮影する?」

「じゃあ、明後日発売ゲームだから、その夕方のいつもの時間で。」

「了解。」

「あ、服装黒めで。」

なんでだろ、あ!

「ハロウィンだから?」

「あたり。お化けを倒すちょっとしたシューティングゲーなんだ」

「なるほど。了解」

そう連絡を終えたれお君からは、メッセージが来なくなった。

業務連絡。それだけ。

学校に来ていない引きこもり高校生と連絡なんて、漫画みたい。

特にこっそりおうちにお邪魔する部分がw。

まあ、一か月前は、普通にれお君のファンだったわけだし、素顔だってネットにさらしてないから、大丈夫でしょ。

学校だって、REMやスズを知っていても、私たちだってバレてないでしょ。

そう言って、飲んでいた紙パックをポイっとゴミ箱に投げ入れた。

「シューット!なんてね。」

そう、今の時間は昼休み。

次の授業だってある。

でも、隣の席は空席のまま。

今日も来ていないのである。

チラッと、席を見たが空っぽの机は埃が乗っていそう。

親友が呼ぶ声に返事をして、駆け出した。



2日後、ツイッターで配信の2時間前に告知をし、学校帰りに着替えてれお君の家に向かった。

インターホンを鳴らすと、知らない人が出てきた。

大柄で、スーツをビシッと着こなし、いかにも怖そうな人。

「えっと…、れお君に用があって来ました。」

「ん?誰だ、君は。」

「えっと・・・」

威圧感がすごい。何も言わせないと言っているようだ。

特に顔の傷がいかにも…。

そう思いながら、小動物のように固まっていると。

「あら、鈴歌さん」

着物を着た見覚えのある人が奥からあるいてきた。

「あ、えっと、れお君のお母さん。れお君に連絡をもらいまして。」

「あ、そうなのね!お父さん、この子がこの間話した学校の。」

ニコッと微笑みそうスーツの人に語り掛けた。

てか、え?

お、お父さんって言った?

まじ?

この大柄の厳つい方がれお君のお父さん。

こっわ。ヤクz・・・。

「そうか。れおの。これは失礼した。」

そう言って、持っていたカバンを持ち直し、浅く頭を下げた。

私も固まっていた呪縛を無理やり解き、ペコっと頭をつられて下げた。

「私も、すみません、鈴歌と言います。」

小さな声で挨拶をした。

怯えているのが伝わったのか、クスリと二人とも目を合わせ、お父さんが動いた。

「じゃあ、鈴歌さん、ゆっくりしていってくれ。景子、俺は行く。」

そう言って出て行った、お父さんはこの時間から仕事のなのかと違和感を抱いてしまった。言われたお母さんも当たり前のように見送り、奥の座敷の方に呼ばれて行ってしまった。

このうちの子じゃないのに、何も知らないのにこの光景で悟ってしまう。

れお君の部屋のドアをノックし、返事を待つ。

その時間さえ、長く感じた。

「はい、鈴歌?」

ドアを少し開けた、れお君は不思議そうにこちらを見た。

「いや何も。」

そう言って、中に俯きながら入ろうとした私の異変にいが付いたのか、中に手をひっぱり、頭に手を乗せた。

「なにがあった?」

その声は、REMくでもない、れお君の優しい声だった。

涙腺が緩んで、静かに泣いた。

しばらくして、落ち着いた私に話してくれた。

この大きな家で、れお君が独りになった理由を。

お父さんは、世界を相手にするIT企業の幹部。そんなお父さんは多忙で、昔からあまり話を聞いてくれなかったらしい。そして、海外にも頻繁に行くためこの家にいることも少ないらしい。

お母さんは、茶道や華道が好きで、れお君が小さい時から家に人を招き、教室をしていたらしい。それは今でも変わらず、新しい事にも全く興味がない時間に捕らわれたマイペースな方。

この家は、大きくて綺麗て、人もたくさん出入りするはずなのに、れお君の事は見向きもしなくなったとか。

そして、血が繋がっていない。

子供ができなかったお母さんを可哀そうになり、養子として3歳の時に向か入れられたのがれお君らしい。

世間の目も気にしていたお母さんは、そんな幼い子供に多くの習い事をさせ、家に帰ってきても、勉強やお母さんと着物を着て華道や茶道。

そんなれおくんは、14の時、そんな生活が嫌になり、習い事をサボって、友達の家に初めて行った。

ゲームや漫画の復旧があたりまえの世の中、見たことはあっても、やったこともない、ただ、CMや学校の人の話を聞くだけの子供には刺激が強かった。

それから、サボって毎日とはいかなくてもたまに、バレない程度に友達の家に通い、知識を蓄え、ハマっていった。

高校生になって、ゲームがうまいという理由で始めた動画配信は、ゲームのうまさ関係なく、声がいい、もっと聞いていたいという声も多くなり、マルチにかつどうするようになったとか。

「れお君…」

「何も言わなくていい、ただ俺は話を聞いてくれる人を探していた。でもある日、俺はあることを知ってしまう。」

言葉を隠したれお君は困った顔で笑った。

「時間も時間だ。今日は帰れ。」

確かに時間はもう夜だった。

でも、あることが気になって、帰りたくなかった。

「話さないと、帰らない。ゲームもできなかったし。それに」

れお君を今は、今夜は一人にしたくなかった。

寂しい夜になりそうだったから。

意地を張った私の頭を撫でながら、

「また今度必ず話す。」

そう、力強く言った彼は、嘘はつかないと、言っていたようだった。


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不登校生徒は顔出しNG!? 若木澄空 @fujikisora

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