第3話 秘密投稿

中間テスト初日、私はあのREM君の仮面を忘れられないまま、勉強をして学校に来た。

忘れるはずがない。

「イケボと引きこもりが同じなはず…」

>うるさい、黙れ。

メッセージに気づいて横を見るとREM君いや、怜起(れお)君がいた。

>俺の事知ってるのお前だけ、黙っとけよ。

「わかってるよ」

小さい声でイジけた。

たまにテストの事でメッセージのやり取りをしていた私たちは少し打ち解けた。

怜起君がREM君だってことも配信のあと、こっそり送った。

握手会は、フードとマスクで顔を隠していたし、声にしか興味なかった私は、有希についていった感じがあった。

>おい、教室どっちだ。

「わかってるよ、ついてきて」

怜起君は、REMだとバレないようにメッセージを送ってくる。

正直めんどくさい。

でも、担任のお願いだから仕方がない。

担任はもともと配信者だって事は気が付いていたらしく、すぐに怜起を守るように命じた。

まじで、この2人怪しい。


そんなことしていくうちに、テストが着々と終わっていく。

あと、一時間もすれば放課後だ。

>放課後、うちに来い。

「はぃ・・???」

返信は来なかった。

なんのために怜起君ちにまた行かなければ、ならないのだろうか。

今までの、お礼とか??

まさか~~


放課後になり、私と有希が歩いてる後ろかられ怜起君が歩いてくる。

そう、私たちはカップルではない。

友達?ファン?近所付き合い?クラスメイト?

もう何でもいいや、とにかく怜起君がバレたらまずいのだ。

学校の不登校者が、動画配信者で儲けてファンまでいる事態の事。

有希と別れて、家の方向の路地に入った途端、メッセージがきた。

>逃げるな、家まで来い。

つくづく思う。

あんなキャラの声しておいて、ファンもいて、クラスの女子に送る言葉ではないことに。本当に同一人物なのかといつも疑ってしまう。

家に着き、お邪魔しますと声を掛けると、奥の方で音楽と話声が聞こえる。

どこからだろうと、キョロキョロしていると。

「着付け教室、ババアがやってんの。俺の部屋行ってて」

「そう、なんだ。」

そう言って、頷くと怜起君は居なくなった。

男の子の部屋って、なにげ初めてなんだよな。

そう思いながら、怜起君のドアを開けた。

中に入ると、REM君のアバターが書いてあるグッズやパソコン、カメラはもちろん、例のお面もかけられていた。

「大したもんねぇだろ。」

そう言って現れた怜起君。

「そんなことないよ、ほぼ毎日の配信ここで作ってるって思うと尊敬する。」

「でも、学校行かない引きこもりだぞ?」

そう言って、怜起君は笑いかける。

初めてかもしれない。こんなに普通に話せてることが。

「でもすごいよ、一人で作ってるもん。そりゃあ、学校来る気なくすよね。」

「まぁ、気が付いたら、こんだけのファンがいたな。」

そう言いながら、少し照れている怜起君。

「レアだ。」

「何が?」

「こうやって、話すのが。いつもメッセージで怒ってるようだったから。」

「これが、素だよ。REMはキャラ。言葉は割と本音だけど。」

「このアバターは?怜起君書いたの?」

「いや、それは・・・・。それよりさ、お前REMのファンなんだろ?」

「う、うん。」

「動画取らね?」

「えぇ!?」

「最近さ、コメント欄でも多くてさ、コラボしないんですか?とか、対談形式見てみたいとか。」

「で、でもうまくしゃべれるか分からないし、」

「模擬だよ、ゲーム実況しながら」

俯いて考える私に、怜起君がREMの声で言った。

「鈴歌~やろ~よ」

「うぅぅぅ。それはズルい。」

「んで?返事は?」

悩んだ挙句

「REM君に負けました。」

そう言って、頭を下げた。


準備をして、マイクの前に座った私は緊張して、鳥肌が立ってきた。

「大丈夫、普通にゲームやればいいから。」

「わかった。」

「じゃあ、行くぞ。3、2、1」

(はい、こんにちは!REMだよぉ~。みんな今日も聞いてくれてありがとぅ~。みんなの時間の隙間に幸せを届けられたらいいな~。ということで、今日はゲーム実況久しぶりにやってくよぉ~。でも、今日はゲストさんがいるんだ~。)

<こんにちは!初めましてスズと申しまーす。REM君に声を掛けてもらってだよ、一緒にゲームをやっていきたいと思います。やる気はマックスです!!>

(スズちゃんとは、リア友でゲーム友達なんだ~。このアバターもスズちゃんが書いたんだって~)

<たいしたことないよ、REM君。そう言えば、今日はなんのゲームをするの??>

(よくぞ、聞いてくれました。今日は、今話題のどさぷくの森をやっていくよ~)

<どさぷくの森!?有名だよね!まだ私もやったことないや。>

(僕もだよぉ~。二人と初心だけど、やって行こう~)


私はスズとして出演した動画の視聴率は伸びて、たまにお友達出演するようになった。初めは緊張しっぱなしで、会話の掛け合いとかも難しかったけど、回数を重ねるうちに話せるようになった。

でも、問題が浮上した。

スズは、個人のアカウントでなぜ配信しないのか。REMの七光りなど、アンチコメントが増えてきたのだ。これが、ネットの怖い所で、コメントを書いてる人が分からない事。さらに、批判する人に私を庇ってくれるように批判する人。

さまざまな、声が届く。

分かっていたことだが、そのうち、特定されるんじゃないかと気が気ではない。

そう思うと、よく怜起は平気なのだろうか。

ネットで顔を隠していてもいつバレるか分からない。

恐怖はどうしているのだろうか。

ネット活動を始めて、確かに面白いとは思ったけど、怖いとも思っている。

そもそも、なぜ、REMになったのだろう。


私の謎はこれから起きる事件で解決された。

そして、アンチコメントを書いてる正体も。

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