いざリウキウへ!

 遊園地に響くミライさんの掛け声で、参加者の皆さんがステージの前に集まった。ローラちゃんは……ついてきてるね。全員が揃ったところで、ミライさんが口を開く。


『改めまして皆さん、おはようございま~す!』


 おはようございま~す!とフレンズ達。元気いいねかわいいね。するとどこからか鼻息のようなものが聞こえてきた。挨拶が鼻息というのが習性のフレンズでもいるのだろうか。


『はい、ありがとうございます!昨晩も言いましたが、皆さん今回は、当ジャパリパークの旅企画にご応募頂きありがとうございます。

この旅では、皆さんが希望なされたフレンズさんと共に、私ミライの案内の元、パークやフレンズさんに触れて頂き、パークを知って貰おう、と言う企画となっております。では、私からの挨拶は一旦…ここまでとしまして、今回の企画の主催者であり園長の継月さんに旅のプランを説明して頂きましょう!お願いしまーす!』


 ミライさんからの紹介で継月さんがマイクを持って上がり、ミライさんはステージの脇に移動。


継『…主催者ってどっちかって言うとこの話持ってきたミライさんじゃないかと思うんだけどなぁ…』


 アハハハハと、皆さんの笑い声が上がった。

 ──フルル、タコ君さんとコウテイさん、ペロさんとキタキツネちゃん、けもけもさんとサーバルちゃん、風庭さんとジョフちゃん、平城山さんとアードちゃん……そして、ローラちゃん。みんなそれぞれ、笑い方が十人十色で微笑ましかった。


『まぁいいや。改めまして皆さん、おはようございます』


 おはようございま~す!と、またもやフレンズ達。


『…ご丁寧にどうも。えー、ご紹介に上がりました、今回ミライさんと共にこのツアーを企画させて頂き、皆さんと旅を共にさせて頂きます、継月です。

どうぞ宜しく。まぁ園長といっても、まだオープン前なので、仮のという状態なんですけどもね。』


 それから前置き的なトークが始まった。

 まあざっくり説明すると、応募数が少なくとも百は行ってた話。


 ……え、まじっすか?やばくね?ざっくり説明しただけではあるが、逆にやばみが増している気がする。


継『では前置きもここまでにしておいて…早速ですね、

今回の旅のプランをご説明いたしますけども、皆さん事前に配布したお手持ちのしおりにあるスケジュールをペアのフレンズとご覧ください』


 えーっとしおりしおり……ああ、あったあったこれだ。


ロ「どれだあんかけ見せてみろ!ふむふむ!なるほど、わからん!」

あ「いやこれから説明あるんだから少し待ちなさいよ!」


 てなわけで説明タイム。


 こちらもざっくり説明しますと、1日目はキョウシュウからクルーザーでリウキウへと向かい、そこの守護けものからの軽い挨拶を挟んで自由行動!文化に触れたり、現地のフレンズと戯れたり、現地の食を楽しんだり。

 各ペアに渡されたカメラでこちらでフォトを撮ってもOKとのこと!

 

 そしたらお昼を挟んで13:00頃、ゴコクへと向かい、守護けものからの軽い挨拶、自由行動、コゴクで一泊した翌日にバスでアンインへ向かいそこでも同じように……と言った具合でパークの各エリアを周っていく感じ。


 1日で二つのエリアを周って、最後はこのキョウシュウに戻ってきてキョウシュウを周ったら、この遊園地で宴会をしてロッジで泊まり、翌朝解散……という5泊6日の旅行企画になると。



 なるほどー、楽しい旅行になりそうだねぇ……

 と、継月さんがミライさんとは反対のステージ脇に移動。


ミ『はい、ありがとうございました。それでは最後に、現在は主にこのキョウシュウエリアの守護を務めておられますスザクさんからのご挨拶で終わりたいと思います。スザクさーん、お願いしまーす!』


 ……ん?


 ……継月さんと同じくステージ横に居た筈のスザク様の姿がない……?


『あれっ?スザクさーん?』

継「あれっ、スザク姉何処に…」


 どこかへ行ってしまったフレンズに戸惑う。……あれ?もしかしてこのさっきから聞こえる何かが羽ばたくような音って……

 そんなことを考えてると、わお……上からゆっくりスザク様が降りて来た……


あ「……神々しい……」


 私は思わず頭を深々と下げた。


ス『皆のもの、待たせたの』

継『目立ちたがり屋かっ!普通にステージ横そこから上がってこればいいじゃん!』

ス『いやぁこれでも守護けものじゃし~、一度ちょっとそれっぽい登場をしてみたくての?』

継『お茶目かっ!もう…、余計な事しないでいいから早く皆に挨拶してよ(笑)』

ス『むぅ…今日はつれないのぅ。いつもならもう少しはのってくれるというに…』


 え待ってかわくない?SMT、スザク様マジ天使。


ロ「ああ分かってるぜぇ?もちろんスザク様もかわいいがロードランナー様も負けてないぞって言いたいんだるぉ???」

あ「それはちょっと同意だけど急にどうしたの?」

ロ「やめろ〜そんな真面目な態度で『お前何言っちゃってんの』みたいな顔するな〜〜〜!!!分かったよ私が悪かったよすまないよ!」


 ちょっとからかったら見事な反応をしてくれた。スザク様もロードランナー様も、っていうかフレンズは全員かわいいと思う。あんかけが動物好きってのもあるけどね。


 そんなやり取りの後に、継月さんが下がるとスザク様が前を向き、語り始める。


『このジャパリパークでは、皆がパークの外にある「どうぶつえん」とやらで見慣れた動物のフレンズやまだ見たことのない、知らない、そして本来触れ合う事すら不可能な筈の動物のフレンズもおる。是非とも、そんなフレンズ達と心通わせ、良き楽しい思い出を作ってくれたら幸いじゃ』


 素敵なお言葉だ!ありがたきお言葉だ!私はスザク様のお言葉を胸にこの旅を行こう!

 ……すると、言い終わった途端、急にスザク様の顔が一気に険しい顔に豹変した。


『…とはいえ、自然やフレンズを無闇に傷付けるような粗相はするでないぞ。お主らなら大丈夫だとは思うがのぅ。昨晩も、フレンズを連れ去ろうと考えると

不届きな輩が忍びこんでおったからの』


 ……ん?


 ……はえ?What???


継『ちょっちょっちょっちょ!それは言わないようにって話したじゃん!!』

ス『なんじゃ、注意喚起には充分な内容であろう?』

継『皆を不安にさせない為にも知られないようにって話し合ったでしょ!ほらもう何人か怯えちゃってるし!』


 スザク様の顔がいつも通りに戻ったけど、それでも怖いものは怖いよ!?

 ああ、アードちゃんとかジョフちゃん辺りが泣きそうに……あれ、でも、パートナーのおかげで意外に和らぎつつある……?


ロ「えぇ……(困惑)」

あ「どうしたんだいローラちゃん!もしかして怖いのかい!安心しな!よしよし!!!」

ロ「ちょっとドン引きしただけだよッ!そんな奴らがいるんだなって!……それに」


 それに……?


ロ「……ソイツらみたいなクソ野郎のこと考えてたら、なんか勇気出てくる。私の方がマシだって、胸張れるから」


あ「じゃあ、常に私のこと考えていてね……」

ロ「それはそれで何か嫌だな!?」


 ローラちゃんの華麗な(?)ツッコミで会話は終わり、参加者さん達&フレンズ達のざわめきも収まってきた。


ス『まぁとはいえ、そやつらは早期に我等が全員捕まえてきっちりとっちめておいたからのう。今頃は本土でお灸を据えられておろう。このパークにはもうおらぬだろうから、皆安心して旅を楽しんでくれ』


 その言葉を聞いた皆さんがホッとした顔になる。フレンズ達も思わず笑顔だ。


 ま、スザク様がぶちのめしたんなら安心だよね本当。


『それでは、良い旅をの!我からは以上じゃ!』


 スザク様が、今度は普通にステージ横から降りていった。


ミ『…はいありがとうございましたー(汗)

それではですね、今から日の出港へ移動しま~す』


 ミライさんと継月さんがマイクの電源を切り、器具の運搬として控えていたマーゲイと博士、助手に後の事を託して、フルルと共に皆さんの先頭に立った。


ミ「それでは皆さん、ついてきてくださいね~」


 旗を持って案内するミライさん見てると、やっぱパークガイドなんだなって再確認する。ただ動物が好きなだけじゃない、っていうところがなんかカッコいいな。


 そんなミライさんの後ろを継月さんとフルルが着いていき、その後ろを各メンバーが二列になって歩き、港へ向かった──。






 *ののの*






 場所は日の出港へと変わる。


ミ「はい!これが今回皆さんが乗るジャパリクルーザーでーす!皆さん足元に気を付けて乗船して下さいね~」


 日の出港に停泊している船は最大25人程乗れる様に設計されてあった。

 そのクルーザーの座席まで移動し、ミライさん&継月さん&フルルが最前列に座り、他のメンバーはそれぞれのペアで座っていく。もちろん私の隣はローラちゃんだ。


 そして、継月さん達の前には一体のラッキービースト。


ミ「ラッキー、船の操縦お願いね」

ラ「任セテ、安全運転デ行クヨ。クルーザーシステム…起動。クルーザー駆動部…各部異常無シ。システム、オールグリーン…アンカーノ巻キ取リ完了。

…出発スルヨ」




ミ「それでは皆さん準備はいいですか!

ジャパリパーク一周の旅に、レッツ」


全員『ゴー!』




 こうして、クルーザーは日の出港を出港し、リウキウへの航路を走り出した。


 ……潮の香りが鼻いっぱいに入り込んできて、どこからか鳥の鳴き声のようなものが聞こえてきた。船の外は本当に大海原だけで、日の出港がどんどん見えなくなっていく。

 しばらくして、気づけば船の中は皆さんの話し声でいっぱいだった。


ロ「あぁ〜!これからやっと旅が始まる!私、今めちゃくちゃワクワクしてるんだけど……」

あ「それは同感!フレンズの存在は知っていってもジャパリパークを周ったことはないから楽しみだわー」

ロ「しかも仲間がたくさんいるから絶対楽しい旅だよな!」


 ローラちゃんの笑顔が、夏の太陽に負けないくらい眩しすぎる。あまりにも愛しくて思わず翼を撫でてしまう。


ロ「……あんかけ?」

あ「やっぱフレンズと会ったからにはモフモフなでなでしなきゃ……うん、セヒコちゃん愛でてた人達の気持ちがよく分かる」

ロ「うげぇ、ちょっと何言ってるか分かんない。これだからあんかけは」

あ「そんな言葉どこで覚えてきたの……」


 とまあ、仲が良いのか悪いのかよく分からないコンビですが。やっぱ素敵な旅になるんだろうな、と考えると胸が躍る。


あ「……あ、そういえば……〝素敵な旅〟って、別のカッコいい言い方があるんだよ」

ロ「あ、それなら私も知ってるぞ!」

あ「わお、まじ?」




 ──或る歌曰く、開かれた扉、夢をいっぱい語ったら、どこまででも続いてく。


 ──或る歌曰く、すすめすすめ、La ta ta ta、てをつないでどこまでもいこうよ。




ロ「──このパーク一周の旅行が、〝ぐれーとじゃーにー〟になりますように!」

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