第33話:いい作戦を思いつきました
一匠は帰宅して夕食を済まし、部屋でベッドに寝転んで物思いにふけっていた。
(もしかしたら赤坂さんは、最寄り駅で降りてから声をかけてくるかと思ったけど……)
一匠と瑠衣華は自宅の最寄り駅が同じだ。
だから駅で降りてから声をかけるという作戦もある。
しかし一匠が理緒と駅まで歩いているうちに、気がついたら瑠衣華の姿は見えなくなっていた。
だからその後瑠衣華とは話すこともなく、一匠は帰宅したのであった。
もしかしたら瑠衣華は、褒めるチャンスを理緒に奪われたことで、凹んでしまったのかもしれない。
(今日の赤坂さんの”素直ザ・チャレンジ”は1ポイントか……まあ初日だし、ゼロポイントよりはマシか)
しかし瑠衣華が自分と素直にコミュニケーションを取れるかどうか、それを自分が心配するのって本当に変な気分だなと一匠は思う。
(でも仕方ない。赤の他人の立場で赤坂さんを応援するって決めたんだし)
そう言えば瑠衣華が相談サイトに何か書き込みをしてるかなと、一匠はベッドから起き上がってパソコンの電源を入れた。
画面が立ち上がると、1時間ほど前にRAさんのメッセージが書かれているのが目に入った。
『”素直ザ・チャレンジ”頑張ってみましたが、初日の今日はたった1ポイントでした(残念)。なかなか声をかけるチャンスがないです。でもいい作戦を思いつきました。褒めるネタが見つからないなら、作ればいいと気がついたのです。明日はもっとがんばります!』
「はぁっ!? いい作戦!?」
コミュ障で、案外おっちょこちょいな瑠衣華。
その瑠衣華が言う、いい作戦。
褒めるネタが見つからないなら、作ればいいだって?
「どういうことだ……?」
なんのことやらさっぱりわからないが、ちょっと嫌な予感がする。
「赤坂さんは、いったい何をやるつもりなんだ……?」
しかしこのチャットで、内容を根掘り葉掘り聞くのは気が引ける。
『そうなんだ。がんばってくださいね!』
それだけを書き込んで、RAさんからの返事を待つ。しかしなかなか返事は書き込まれなかった。
その返事が気になって、一匠はなかなか寝つけない。
その日は結局、夜中の2時まで画面を開いて待ったが、それ以上RAさんからのメッセージが書き込まれることはなかった。
◆◇◆◇◆
「あっ、やべっ! 寝過ごしたっ!!」
翌朝、いつもよりも遅い時間になっても起きてこない一匠を心配して、母親が様子を見に来た。
母に起こされて、スマホで時間を確認すると、遅刻寸前の時間だ。
スマホのアラームはいつも通りに鳴った形跡はあるが、どうやら気づかなかったようだ。
急いで朝食をかきこんで、家を飛び出す。
この時間なら、ギリギリ間に合うはずだ。
少しホッとして、一匠は駅まで駆け足で向かった。
学校に着いて校舎の玄関をくぐり、下足箱のところまで来た。
朝のホームルームが始まるまであと5分ある。
予定通り、ギリギリ間に合いそうだ。
ホッとして下足箱の蓋を開けると、なぜかそこに自分の上履きがない。
「ん……? なんだこれ?」
上履きがあるはずのところに、白い封筒がある。
一匠はそれを取り出した。
封筒の中には、一枚の手紙が入っている。
その手紙には、手書きの文字でこんなことが書いてある。
『キミの上履きは盗ませてもらった。下記の謎を解いて、ぜひ上履きのありかを探し出してくれたまえ。---かいじん21面相』
「な……なんだこれーっ!?」
これは明らかに瑠衣華の字だ。
いきなりリアル脱出ゲームみたいなものを仕掛けてくるとは。
そう言えば中学時代に付き合ってた頃。
二人ともこういうのが好きで、一緒に謎解きゲームを解いたことが何度かあったっけ。
昨日のRAさんのメッセージ、『褒めるネタが見つからないなら、作ればいい』から察するに。
もしかして……
「これを俺が解いたら、それを『さすが!』とか言って褒めるつもりか? それが……赤坂さんの作戦!?」
(赤坂さんが暴走し始めた……?)
いや、そんなことよりも。
早く上履きを見つけて教室に行かないと。
せっかくぎりぎり間に合うはずだったのが、遅刻になってしまう。
一匠は、上履きのありかを示すという謎の部分に目を通す。
そこにはこんなことが書いてあった。
==========
「終わりの終わり」
「世界の中心」
「真実の最初」
「ついに始まり」
==========
なんだか哲学的な香りのする言葉が羅列されている。
他に何もヒントは書かれていない。
「ちょちょちょっ!! なんだこれーっ!?」
一匠は思わず声を上げた。
*********************
【読者の皆様へ】
謎解きの解答は次話になります。
予想解答を感想欄に書くなどのネタバレはやめてくださいねm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます