特別編 ある日のカイ議室

『壊ラジ』vol. 1

 ――これは、ある日の『カイ議室』で起きた、ある出来事の記録である。


『魁』:

「は~いこちら『カイ議室』です。読者のみなさんこんにちは~! 突然ですが今回の『壊💔理性ラヴァーズ!』は予定を変更し、『カイ議室』からお届けさせて頂いております!

 DJは、池場谷カイの中で一番のナイスガイとの呼び声が高い、わたくし『魁』が務めさせて頂きます。ヨロシクゥ!


 さて、本日放送開始の新番組:『壊💔理性ラヴァーズ!』ラジオ……略して『壊ラジ』(仮名)は、『壊💔理性ラヴァーズ!』こと『壊ラヴ』のこれまでのお話の振り返り、加えて読者の皆様が作中で感じる疑問に対してお答えする番組です。


 ……決して作者がネタに困っただとか、作中での説明不足をここで補完しようなどという裏事情は存在しないので、そういう穿ったモノの見方はするもんじゃないぞぉ。ボーイズアンドガールズ?」


『戒』:

「……いや、ナニコレ?」

 

『快』:

「あぁん? なにを寝ぼけたこと言ってやがる……総集編+解説回ってやつだ。決まってんだろうが」


『乖』:

「そうだぞ愚図。何を分かり切ったことを言っている」


『戒』:

「いや。そういう裏事情を聞いているんじゃなくて……ていうかちょっと待て! なんか可笑しいだろ! 『魁』はまだしも残り二人! お前らそんなキャラじゃねえだろ!」


『快』:

「ったく、ノリのわりぃ奴だな……お祭りコーナーぐらいバカやらせろっての」


『乖』:

「全くだ。『戒』オマエ以外の四人格は只でさえ出番が少ないんだから、こんな時ぐらいもっと目立たせろ。というか字数の無駄だから余り喋るなこの愚図」


『戒』:

「……もういいです」


『魁』:

「おい『戒』よ。この物語も気づけば更新開始から1か月だ……ここいらで箸休めに総集編があっても良い頃合いだろ?」


『戒』:

「いや、だから俺たちはこんなことやってる場合じゃ……」


『乖』:

「甘い!」


『快』:

「ああ、甘すぎる。いいか、執筆作業も決して楽じゃねぇんだ。たまにはこうして箸休めをしないと連載なんてやっていけねぇんだよ!」


『戒』:

「……あ、はい」


『魁』:

「わかったら番組を始めるぞ! それではLet’s Go Music!


 は~いそれでは始まりました『壊ラジ』(仮名)の第1回。

 最初のコーナーはこちら『回顧性メモリーズ』(仮名)です。このコーナーではこれまでのお話の回顧(振り返り)をしていきたいと思います。

 それではこれまでの『壊ラヴ』を振り返っていくこととしましょう!」


『乖』:

「……解説を務めさせて頂く、池場谷カイの中で頭脳担当を押し付けられている『乖』だ。よろしく頼む。


 ……さて、ここでは先ほど説明があった通り、これまでのお話の振り返りを行う。

 今回は第1話~第13話の振り返りだな。

 

 ――自称『どこにでもいる高校一年生』の『池場谷カイ』。

 三学期の終業式の日の朝……幼い頃に結婚の『約束』を交わした少女の夢を見ていた彼は、弟であるサトルに起こされて目を覚ました。

 遅刻しそうな中で急ぎ登校するカイは、その途中で怪しげな女性:『ラン』と出会い、意味深な助言を告げられる。不審に思いながらも学校へ急ぐカイだったが、そんな彼を物陰から見つめる人影があった。

 学校に辿り着いたカイは、担任である松原清風に注意を受けながらも隣の席に座る学園のアイドル:天橋雪と挨拶を交わす――


 ……なあ、これを13話分読むのか? 字数が足りるわけないだろう。この台本を書いた奴はバカなのか?」


『魁』:

「おっと辛辣ぅ!

 だが確かにその通りだ~! ということで頭脳派の『乖』さん、ここまでの話の要約をお願いしまっす!」


『乖』:

「いいのかそれで……? まあいい。とりあえず1話~13話までで最低限押さえておくべきことをまとめるぞ……と言いたいところだが、基本的にここまでの話って各人格と各ヒロインの顔見せぐらいしかしていないだろう? 正直キャラクター紹介と多少の設定解説で十分なんじゃないのか?」


『戒』:

「うわっ、身も蓋もねえ……」


『魁』:

「おっとぉ~! 『乖』選手、ここまで実は大して話が進んでいないという、触れてはならない事実を指摘してしまいました~!!」


『乖』:

「いや、そういうつもりでは……というか決して進んでいないわけではないだろう? 実際各人格とヒロインの活躍はある程度描かれていたわけで……」


『魁』:

「おぉ~っと! 自分で自分の失言をフォローしている! これは格好悪いですね~! てゆーか真面目か!」


『乖』:

「……うざいなお前。まあいい。それじゃあ解説に移るぞ。まずは『僕たち』の設定だ」


◎主人公の設定 

 ・主人公『池場谷カイ』は『戒』『快』『乖』『χ』『魁』の五人格を持つ。

 ・五人は幼い頃に異なる『約束の子』と、結婚の約束を交わしており、その際にアクセサリーを送り合っている。

 ・五人は基本的に全ての『体験』を共有しているが、一方で他人格が干渉できない『絶対に侵されたくない記憶』を持つ。 

 ・約一年後に人格が統合され、一人だけが『主人格』として生き残る。

 ・生存条件は『五人の中で、この世に最も強く自身の存在を刻み付ける』こと。


『乖』:

「まあこんなところか。とりあえず最低限これだけは押さえておけ」


『魁』:

「う~ん、こうして並べて見ると実に無茶のある設定だぁ! こんな設定で話を書こうと思った作者の神経を疑うぜ!」


『乖』:

「『一途系ハーレム』とかいう一行で矛盾しているコンセプトありきで無理矢理作り出された設定だ。多少の無茶は見逃してやれ」


『魁』:

「お~っと! これはいけません! ここで禁じ手『作中キャラによる設定への擁護』が入りました~! おい『乖』わかってんのか! お前今ナチュラルに作者の自己弁護に使われたぞ!」


『乖』:

「……お前のそのセリフも作者によるセルフ突っ込みだから言うだけ無駄だぞ。何を言おうが所詮僕たちは作者の操り人形に過ぎない」


『魁』:

「おっとぉ! ここで創作の根本に対する突っ込みだぁ! 身も蓋もないったらありゃしない!」


『乖』:

「……もういいか? 続けるぞ。次は五人格の簡単な紹介を行う。分かりやすさ重視のためステータス表示で解説する」


『魁』:

「出た~! みんな大好きステータス画面! これは完全に脳がゲームに支配されていますね~! ということでコーナーの途中ですが、ここで、『解析性ステータス』(仮名)のコーナーに移りたいと思いまぁす!」


『乖』:

「……では始めるぞ」


『魁』:

「無視ぃ!」


 ◎各人格のステータス

 

 第一人格:『戒』……主人格。

 担当ヒロイン:天橋雪

 『約束』のアクセサリーは『指輪』

  ・体力:C

  ・知力:C

  ・特殊能力:E

  ・カリスマ:D

  ・器用さ:A 


 第二人格:『快』……肉体労働担当

 担当ヒロイン:松島月

 『約束』のアクセサリーは『髪飾り』

  ・体力:A+

  ・知力:D

  ・特殊能力:C

  ・カリスマ:B

  ・器用さ:C


 第三人格:『乖』……頭脳労働担当

 担当ヒロイン:宮島花

 『約束』のアクセサリーは『ネックレス』

  ・体力:D

  ・知力:A

  ・特殊能力:D

  ・カリスマ:C

  ・器用さ:B


 第四人格:『χ』……特殊能力担当

 担当ヒロイン:松原清風(サヤ姉)

 『約束』のアクセサリーは『耳飾り』

  ・体力:E

  ・知力:E

  ・特殊能力:S+

  ・カリスマ:E

  ・器用さ:E


 第五人格:『魁』……コミュ力担当

 『約束』のアクセサリーは『ブレスレット』

 担当ヒロイン:?

  ・体力:B

  ・知力:B

  ・特殊能力:B

  ・カリスマ:A

  ・器用さ:B


『乖』:

「……と、まあこんなところだ」


『戒』:

「ちょっと待て! 何さらっと人のことディスってやがる! 明らかに私情入ってるじゃねーか!」


『乖』:

「チッ……愚図のくせに気づいたか」


『戒』:

「気づくわボケ! ったく……しかしこうしてパラメータ化して見ると、見事に得意分野が分かれてるもんだな」


『乖』:

「まあ適材適所ということだ。キャラ付けにも使えるしな」


『魁』:

「おっとぉ! 今度はキャラ付けとかいうメタ発言きましたぁ!」


『乖』:

「……ということで、キャラと設定の紹介はこんなところだ。とりあえず『多重人格の設定』と、どの人格とどのヒロインが関係するのかだけは最低限押さえておけ。それで細かいことはともかく、話にはついていけるはずだ……ということで今回の『回顧性メモリーズ』及び『解析性ステータス』のコーナーを終了する」


『魁』:

「ちょっと待てぇい!」


『乖』:

「なんだ?」


『魁』:

「何を勝手に終わらせてやがる! まだ肝心の『女の子たち』の紹介が済んでないだろう! 何が悲しくてラブコメで男の紹介して終わらなきゃいけないんだ!」


『乖』:

「仕方ないだろう。まだヒロインが揃ってないんだから。台本によるとそっちは『次回』にやるらしいぞ」


『魁』:

「あっ、そう? じゃあ仕方ねえか……」


『戒』:

「えらいあっさり引き下がるなおい!? ……つーかちょっと待て! 『次回』があるのかよこのクソ企画!」


『乖』:

「さあな。でそのための撒き餌でもある。あといちいちうるさいぞ愚図。字数の無駄だから喋るなと言っただろう?」


『戒』:

「……なあ、なんか俺の扱いひどくない?」


『魁』:

「は~い、続いてはこちらのコーナー:『回答性クエスチョンズ!』(仮名)です。こちらのコーナーは題名の通り、読者の皆様からの質問に対して回答していくコーナーです」


『快』:

「担当の『快』だ……なあ、オレがこれやるのか? こういうのは苦手なんだが……」


『魁』:

「オチ担当とどっちがいい?」


『快』:

「……それじゃあ始めるぞオラぁ! うっし、では読者からの質問に答えていくぜ!」


『戒』:

「……なんかキャラ違くね?」


『乖』:

「……よっぽどオチ担当が嫌だったんだろう」


『快』:

「さあ、まずは質問NO1:R.Mさんからの質問だ。なになに……」


『はじめまして。わたくしには幼い頃将来結婚する『約束』を交わした許嫁がいるのですが、その方が『約束』を覚えていないふりをして困っています。どうすれば本当のことを話してくれるでしょうか?』


『戒』:

「(なあこれって……)」


『乖』:

「(うるさい僕に振るな……!)」


『快』:

「ああ? バカかお前。そんなの証拠見せ付ければいいだけだろ。アホなこと聞いてんじゃねえぞ。それでも言わねえなら実力行使だ。とりあえず一発ぶん殴ってやりな!」


『戒』:

「(気づいてない!?)」


『乖』:

「(それならそれでいい! いいか、これ以上触れるんじゃないぞ!)」

 

『快』:

「じゃあ次いくぞ。

 質問NO2:Y.Aさんからの質問だ」


『はじめまして。わたしはこの間同級生の男子に告白されたのですが、彼には幼い頃将来結婚する『約束』を交わした許嫁がいるようです。この男子は一体どういうつもりでわたしに告白してきたのでしょうか?』


『戒』:

「(……なあ)」


『乖』:

「(だから僕に振るんじゃない……!」


『快』:

「……そりゃあアレだな。二股しようとしてるクソ野郎なんだろ。けしからん野郎だし、とりあえず一発ぶん殴ってやりな!」


『戒』:

「(……もう一話で殴られてます)」

 

『快』:

「次いくぞ。

 質問NO3:H.Mさんからの質問だ」


『はじめまして。あたしには幼い頃将来結婚する『約束』をした幼馴染がいます。でも彼はあたしとの『約束』を忘れた上に、他に何人もの子と同じ『約束』をしていたらしいです。サイテー男に成り下がってしまった幼馴染を更生させたいのですがどうすればよいでしょうか?」


『戒』:

「(……なあ)」


『乖』:

「(だからうるさい……! というか誰だこの質問を通した奴は!?)」


『快』:

「なんだそりゃ、ひでえ野郎だな? いいかお前。そんなクズ野郎にはいくら言ったって無駄だぞ。痛い目見なきゃわかんねえだろうから、とりあえず一発ぶん殴ってやりな!」


『戒』:

「(……てかぶん殴るしか解決策ねーのかよ!)」


『快』:

「質問は以上みてぇだな。ということでこのコーナーを終わるぞ」


『戒』:

「……知らないって幸せなことだな」


『快』:

「あぁ? 何がだ?」


『乖』:

「黙れバカ、余計なことを言うんじゃない!」


『快』:

「?」


『魁』:

「さーて、お名残り惜しいですが本日の『壊ラジ』は残念ながら番組終了の字数が迫って参りました。皆さまお楽しみ頂けましたでしょうか? さっき言った通りもしかしたら『次回』があるかもしれないんで、その時はまたヨロシクゥ! ではこれにて番組をしゅうりょ……」


『χ』:

『クハハハハハハハハハ!! そうはいかんぞ愚鈍ども!』


『魁』、『戒』、『快』、『乖』:

「「「「げっ」」」」


『χ』:

「我を差し置いてこのような宴を行うなど、何たる狼藉! 恐らくは我に存在感を食われることを恐れ、このような姑息な手段を取ったのだろうが残念だったな!」


『魁』:

「時間になっても一人だけ寝てたから省かれただけだろーが……」


『χ』:

「ではこれより我の我による我のための企画の開始を宣言する! 神に選ばれし存在である我の覇道を描いた自伝小説『神の雷槌トール・ハンマー~天光に導かれし王者の軌跡~』……これを番組内で紹介することでベストセラー間違いなしである! さあ愚鈍どもよ、早速これを宣伝してバズらせるがいい!」


『魁』:

「それでは『次回』をお楽しみに~!」


『χ』:

「おい待てふざけるな! 聞いているのか! このぐど………!」



 ――そうしてふと、目が覚めた。

「……夢?」

 なんだか凄く悪い夢を見ていたような気がする。

「うん、夢だよな。頼む、夢であってくれ……」

 ――時に夢は夢のままでいてくれることが望ましい場合もある。そうあってくれることを願いながら、俺はその悪夢を記憶から抹消した。

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