第22話

「ん…」


翌日の朝。

カーテンの隙間から差し込む日の光によって、俺は勝手に目が覚めた。


「…えへへ。こーじ、だめだよー」

「あの~、霧島さ~ん」


俺の胸にしっかりと抱きつき、寝言を言っている美少女。なんだろう、このシチュエーション。

しかも、霧島が密着しているせいで、俺の全身に女の子の色々な部位が当たっている。正直言って、早く抜け出したい。男子高校生には刺激が強すぎる。


「霧島、起きてくれ」

「むにゅ~」


このまま声をかけても霧島は起きないと判断した俺は、ほっぺをつねって強制的に目覚めさせることにした。ほっぺに触るのはいささか抵抗があったが、霧島が起きないのが悪い。そう自分に言い聞かせることにした。決して触りたかったからではない。


「おはよ...」


ようやく目を覚ましたか。どうやら、霧島は朝に弱いタイプらしい。

そんなことよりも、俺の体に抱きついているのをどうにかしてほしいんですが。男の生理現象を抑えようと、必死に努力しているところですので。


「あの~、色々当たっているんですが」

「あ、ごめんね」


霧島が俺の首に回していた手をほどいて、体を起こした。まだ、目をこすって眠そうにしている。こういう時は、朝ご飯を食べてシャキッとしてもらうのがいい。


「とりあえず、下で朝ごはん食べようか。何食べたい?」

「えー...うーんと、軽めがいいなぁ」


軽めの朝食というと、サンドイッチとかいいだろう。ぱっと思いついたのがこれぐらいしかない。しかも、そんなに大層な料理を作っている時間もないからな。


「じゃあ、ツナサンドでも作るわ。とりあえず、俺は下に降りるから、身支度でもしておいてくれ」


女の子はいろいろと準備もあるだろうから、やっぱり俺が率先してやるべきだよな。そう思いながら、俺は部屋を後にした。





さて、ツナサンドを作っていくことにしよう。


まず、冷蔵庫からラップで玉ねぎを取り出す。ハンバーグを作った時の残りなのだが、こうやって活用できてラッキーだ。

玉ねぎをみじん切りにしたあと、適当に塩でもんで、水につける。玉ねぎの辛味成分を水で抜くのが目的だ。本来ならば1時間くらい漬けたいところだが、時間がないので5~10分程度になる。しゃーない。


その間にツナマヨを作ることにする。ツナ缶の蓋を開けて、ツナは出来るだけ油を切ってマヨネーズと混ぜる。ツナ缶の油を一緒に混ぜると、油が分離してギトギトになってしまうからな。


最後に、キッチンペーパーで水気を取った玉ねぎをツナマヨにあえる。これで具の完成だ。

あとは、パンにはさんで完成だ。


「準備終わったよ~」

「おお、ツナサンドできたぞ」

「いただきま~す」


さて、俺も準備してくるか...



「じゃ、行くか」

「おっけー」


朝食を取り終わった俺らは、学校に行く身支度をする。といっても、いつもと変わらないのだが。

ただ、俺はいつもは持っていっていないスマホを鞄の中に入れている。昨日の襲撃があった以上、いつ襲われるか分からないため、警察をどこでも呼べるようにしておいた方が良いと判断した。

もう、霧島を襲わせない。その硬い意志を持って動くことにした。


通学路を歩いていると、霧島が急に話かけてきた。さっきまで黙って横を歩いていたので、俺は驚いてしまった。


「そういえばさ」

「な、何?」

「何よ、急にそんな構えちゃって。いや、大したことじゃないんだけどさ、浩司って学校でも呼んでいいの?」

「それはちょっと…」


『全然大したことあるんですけど!!!』と俺は心の中で叫んでしまう。いやいや、こんな呼び方されたら、絶対誤解が生まれると思うんだが。しかも、席が隣になった瞬間に、仲が深まっているってなると、俺絶対否定的な目線にさらされるんと思うんだが。やめてくれ。


「やっぱ、そうだよね」


なんか、霧島が悲しそうな顔をしているのだが、俺何かやっただろうか。そんな気分を害するようなこと言ったか俺。


「じゃあ、学校では倉田君って呼ぶね。でも、それ以外の時は浩司って呼ぶから!」

「まぁ構わないけど...」


今度は霧島がすっごく顔を赤くしている。すごい喜怒哀楽が激しいようだが、スルーしよう。

霧島が何かと話しかけてくるのに応えながら、俺たちはいつもより少し早めに、学校まで辿り着いた。

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