第12話
とっととお風呂を上がってリビングに戻ると、霧島がソファーのところで勉強をしていた。
「お、お風呂あがった?早かったね」
「ま、まぁな。男なんてこんなもんだろ」
実際はあなたのせいですよとか言えないので、適当にごまかしておく。
それで、霧島がやっていたのは数学。しかも、ちょうど俺が解けずに困っていた問題だ。なんか対称式を当てはめてみてもうまいこと行かないのだ。
「へ~。こんな風に解くんだ」
「ん?ああ、この問題ね。次数下げで簡単に解けると思うけど」
次数下げ...思いつかなかったなぁ。脳死でzの値を代入してしまっていた。
「良かったら教えてあげれるけど。でももう結構遅いね」
時計を見ると、時計の針はもう10時を回っていた。確かにそろそろ良い子は寝る時間だ。俺は普段11時に寝ているので、もうちょっと寝るまで時間があるけどな。
「ま、それなら明日教えてくれ。ゴールデンウイークの課題けっこう出てるしな」
「うん、いいよ。ふわぁぁ~」
ま、そういうことなら明日に勉強を教えてもらうことにしよう。霧島も眠たそうにしているし、今日のところは寝るか。
そういうことで、歯磨きとかを一通りすることとなった。霧島には、予備の歯ブラシ(もちろん新品)を渡したのだが、「クリームとかってある?」などと聞かれた。
だが、俺はそういう化粧関係に詳しくない。スキンケアとかも、せいぜい洗顔して乳液を顔に塗りたくってるぐらいだ。この話は洗面所の棚に残っていた母さんの化粧品を使ってもらうことで決着したのだが、果たして霧島は母さんが使っている奴で良かったのだろうか。
そして、母さんよ。勝手に化粧品使ってごめんよ。たまにこっちに戻ってくるときに使ってるぽいんだけど。
結局、霧島が一連のスキンケアとかを終わらせてリビングに戻ってくるには、15分くらいかかった。いや別にいいんだけどね?女子は肌とかに気を使っているのだろうしな。
「じゃ、そろそろ寝るか。俺は言ってた通り下の寝室で寝るから」
「分かった。じゃ、おやすみ。倉田君」
霧島は二階へと階段を上がっていく。それを見送った後に俺も1階の寝室に行く。
「ふぅ」
ベッドに転がった俺は、今日のことを思い返していた。
思えば、買い物から帰ってくる途中でクラスメートの美少女を拾い、何故か家に招いてご飯をふるまい、そのあとに泊まるっていう話になるっていう。
こんなこと、クラスメートに知られたら、否が応でも俺に注目が集まるんだろうな。しかも好意的な視線ではなく、否定・批判的な視線なのだろう。
俺は、過去の出来事からたくさんの注目を浴びることにトラウマを持っていて、今もなお改善されていない。だからこそ、こんなに注目を集めるような行動を露見させてはならない。
そう心に誓ったところで、寝返りを打ったのだが、ポケットにスマホが入ってることを思い出した。
あ、充電器がねぇ。本来寝室にある充電器は、父さんが出張で持っていった。充電は15%ぐらいだ。
けど、明日の朝に充電すればいいか。普段はワイヤレス充電だけど一応有線の充電器も持ってるし、こっちでやれば急速充電できるはずだ。
スマホのロックを外すと、LINEの通知が来ていた。誰だろうと思い、通知を見ると
『星野
新着メッセージがあります』
俺はその通知を見た瞬間、頭が痛くなった。理由は言わずもがな、星野がこの家に遊びに来ることだ。普段なら別に構わないだが、今回は事情が事情だ。
一応、メッセージは確認しておこうと思い通知をタップした。
星野 : お前さ、GW中て予定ある?もしかしたら俺が行く時にお前の親に迷惑はかけたくねぇしな
星野 : あっあと田中と風見も行きたいって言ってるからよろ
...星野くんあのさぁ。何しれっと人増やしてるんですかねぇ。まぁ、面識はあるし家にも招いて遊んだことがあるメンツだけども。
それはともかく。霧島が家にいる今、星野たちと遊ぶことはできない。ここは丁重にお断りするか。
自分 : すまんが用事が入った。遊ぶのはまた今度な
とりあえず誘いは断っておこう。この状態はとても人を呼べる状態じゃない。
スマホの電池も少ないので、俺はメッセージの送信を確認した後、スマホの画面を切って布団をかぶった。
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