第9話
「おじゃましまーす」
ということで、我が家に帰ってきた。家を出たときにはこんなことになるとは思っていなかったが。
「まぁ手洗ってこい。手洗うところははそこの角にあるから」
「わかった!」
霧島にキッチンのシンクの場所を教えたところで、俺はリビングに向かう。レジ袋を机の上において、すぐに冷蔵庫に入れないといけないものを出していく。
それを一斉に持ってキッチンの冷蔵庫へと向かう。ただ、量が多いせいか一度では行けなかった。
すると、いつの間にか霧島が手洗いを終えていた。
「手伝おうか?」
「ぜひ」
霧島が手伝ってくれたこともあり、すぐにレジ袋の中身は空っぽになった。
さて、何を作ろうか。最初はレトルトのカレーでもぶっかけて食べようかなと思っていたが、霧島が居るなら手料理にした方が良いだろう。
ということで、今日は塩豚丼にすることにした。炊いたご飯は炊飯器の中で保温されているので、割とすぐできる。
早速手を洗った俺は、冷蔵庫の中から豚小間のパックと刻み葱のパックを取り出す。
まず、フライパンにごま油を適当にたらし加熱する。
「倉田君、何か手伝えることある~?」
テーブルに座っている霧島が俺に尋ねてくる。が、正直言って思いつかない。
「いや、ソファーとかでゴロゴロしてもらって構わないぞ」
「さすがにそれは、ご飯を作ってくれている倉田君に申し訳ないよ」
霧島はどこまでも出来た子だと思う。
おっ。そろそろフライパンも温まってきただろう。豚小間を投下しよう。
少しすると、じゅーっという音と共に、豚肉が色づいてくる。熱し過ぎるとふっくらとした食感が無くなってしまう。
ので、すぐに調味料を投入する。今回使うのは、料理酒と鶏がらの素、そして塩。これらを加えて炒めていく。この香りで更に空腹感が増す。
その間に、食器棚からお茶碗を出して炊飯器の中のご飯を盛り付けていく。
「なぁ、霧島ってどれくらいご飯をよそればいい?」
「ん~。普通で良いよ~。学食ぐらいの感じで」
なら、これぐらいか。ちなみに、俺はとてもお腹がすいているので、茶碗山盛りによそう。
ご飯をよそった後は、塩豚を盛り付けていく。ちょうどいい具合に水分も飛んだだろう。
「よし。うまそう」
完成である。自画自賛だが、とてもおいしそうだ。
ただ、一つ思ったのが、こういう肉系の食べ物って女子からどう思われるのか。すっかり自分の好みのものを作ってしまった。
冷蔵庫からレモン汁を取り出して、どんぶりと共にお盆に乗せて、テーブルまで運ぶ。
「お~おいしそ~」
「お箸は割りばしでいいか?」
「わざわざありがとね」
喜んでもらったようで何よりだ。お箸は人の者を使うことに対して、霧島がどう思うかわからないので、割りばしにした。女子ってそういうところ気を使いそうだしね。
「じゃ、いただきます」
「いただきま~す」
うん。今日もうめぇ。安定のおいしさだ。
「ん!これおいひいね」
口の中をもぐもぐさせながら霧島が絶賛してくれる。褒めてくれるのはうれしいが、お口の中を空にしてから言おうな。
「...ぷはぁ。倉田君、これめっちゃおいしい!」
「ありがとな。これ、俺の好物なんだよ」
「このおいしさは、何度も食べたくなるよね。というか、なんでレモン汁があるの?」
お、これに目を付けたか。塩豚丼にレモン汁は俺的にマストアイテムだ。
「まぁ、一回かけてみ。物は試しだ」
「わかった」
霧島は目をキラキラさせながらレモン汁をかけていく。なんだろう、この無邪気さ。
「ん~!さっぱりしておいしいね!」
「だろ?お手軽だし、悪魔的なおいしさだよね」
「ほうだね~(そうだね~)」
霧島がどんどん食べ進める姿を見て、俺もほんわかとした気持ちになった。う~ん。可愛い。
そんな霧島の姿を見ながら、俺は塩豚丼を食べ進めた。
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