もう一度会えると信じて
ラリックマ
プロローグ
第1話地下牢
ぽとぽとと下水管のひび割れの所から水が垂れている。その滴る水を、私は渡されたコップでちょびちょびと飲んで命をつなぐ。この地下牢獄に入れられてから、かれこれ五日が経とうとしている。
そろそろ枯れ果てる命なのに、どうしてここまで必死になって生き延びようとするのか。簡単な理由だ。私には希望があるから。希望となる、私の人生を救ってくれた人がいるから。
だからその人が諦めるまで、私は諦めない。体を起こし、グビッとコップに溜まった水を飲み、私はまた体力を使わないように横になる。上はどうなっているんだろう?
兄様や父様はどうなったんだろう?
あのかたは、私のもとへ来てくれるだろうか……?
そんなことを思った時だった。バキュン! と大きな銃声が鳴り響いた。いきなりのことで体がビクッとなる。もしかしたら、あの人が助けに来てくれたのかもしれない。私は外の様子を見ようと、外へと繋がる10段ぐらいの小さな階段を登ろうとするが……。
立ち……上がれない。足に力が入らない。ずっと同じ体制だったからか、または栄養を取ってなかったからか、それともそのどちらともか。なんとか体を引きずって外の様子を見ようとするが、腕にも力が入らない。
今の私には何もできない。どうしてこうも無力なのだろう。今更自分の無力さを恨んだところで後の祭りだ。でも悔しいものは悔しい。私は弱い力で握りこぶしを作り、それを床にトンと叩きつける。
その時、またもう一発銃声が鳴り響いた。そしてバタっと誰かが倒れたような音。
外は一体どういう状況なんだ? まずます訳が分からなくなる。もしかしてあの人が助けに来てくれたんじゃ……。そんな淡い期待を胸に抱く。でも多分この期待は裏切られる。私はいつだって運が悪く、こんなことを期待していい人間じゃないから。
自分の死期を察した私は、スッと目を瞑った。そして耳を澄ました。ガサァ、ガサァとゆっくり足音が近づいてくる。足を引きずっているような音がする。そしてその足音は私のいる場所の真上で止まると、ガンッと鉄を叩くような音をたてた。そのすぐ後に、私が監禁されていた薄暗い地下牢に光が灯される。私はそこに来た人物を見るようにゆっくりと目を開け、そしてその人の顔を見て涙がこぼれ落ちた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます