第113話 宿題。

「ふーこんなもんか……」


 ある日の昼下がり。 俺は自室で夏休みの宿題をしていた。


 今日は生憎の雨で、窓に雨がビシビシと当たっている。


 空を見るとどんよりとしていて、見ているこちらも気持ちが暗くなるぐらい、空は暗かった。


「自由研究とかどうしよう……」


 俺は学校から配られた紙を見る。


 ドリルとかは正直楽だ。 なにをすればいいかはっきり分かっているし、目に見えて進んでいたり減っていっていることが分かる。


 でも、自由研究とかコンクール用の絵を作成とかは難しい。


 まず第一に自分からなにをするのか考えないといけないがめんどくさい。


 正直、自由研究とか絵は小学生の頃からずっとやっているからネタ切れだ。


 中学3年生にもなって貯金箱作ったりするのはないよなぁ……あぁ……絵もどうしよう。


 絵下手くそだからあんまり描きたくないんだよなぁ。 後、絵の具準備して片付けたりするのがめんどくさい。


 高校生になっても自由研究とか絵の宿題はあるんだろうか?


 ……ないといいなぁ。


 俺はそんなことを思いながらスマホのアプリを閉じる。


 今日は動画サイトで勉強用BGMを聴きながら宿題をしていた。


 落ち着いた音楽を流しながら勉強していると、まるで頭が良くなったように感じる。


 ここ最近のマイブームだ。


 あ、そういや、最近ツバサが言ってたな。


 人気な動画主が勉強を一緒にしているような気になれる動画を投稿していたり、生配信しているって。


 俺もそういうの利用しながら受験勉強してみようかな。


「…………」


 俺は勉強机の隅に置かれている通知表を手に取る。


 この通知表は中学3年生の1学期のものだ。


 ペラッと開いて中を見る。


 そこにはたくさんの数字が書かれていた。


 俺は全教科の評価を見る。 5段階評価で平均4に近い。


 中学2年生の春までは平均2.5〜3ぐらいしか取れていなかったから、随分成長したことが分かる。


 中学3年生の1学期の中間テストは平均点80点後半だったし、期末テストでは平均点80点前半だった。


 このままいけば2学期で平均4を超えるかもしれないな。


「俺も成績上がってきてるけど、鈴も凄いんだよな……負けないようにしないと!」


 鈴も成績が上がっていて、中間テストでは平均80点前半、期末テストでは平均70点後半を取っていた。


 通知表を見せてもらったけど、殆ど俺と変わらなかった。


「どうせなら平均点90点台取ってから、中学卒業したいなぁ……」


 その為には勉強をしないといけない。


 俺は消えかかっていた勉強の意欲に対する炎をまた燃やす。


「ふぅ……もうちょっと、もうちょっと頑張ろう……!!」


 俺は姿勢を戻して勉強机に齧り付く。 俺の部屋にはカリカリと文字を書く音がずっと鳴っていたのだった。


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