第112話 彼女のお家に遊びに行きました。 ⑥

「鈴ー! 陸くん! 晩ご飯できたわよー!」


「はい!」


「すぐ行く〜!」


 あれから俺達はナナちゃんと遊んだり、ナナちゃんのアルバムを見たりした。


 すると、途中で茜さんから晩ご飯のお誘いがあったので、ぜひいただくことになった。


 俺は鈴の後ろに着いていってリビングへと入る。


 茜さんは台所で料理をお皿に盛ったりしていた。


 そして、テーブルの方には顔を向けると1人の男性が座っていた。


 あ、あれはーーー


「あれ? お父さん帰ってきてたんだ」


「おう。 ついさっきな。 いや〜彼氏君がまだいる時に帰れて良かったよ」


「別にもうちょっと遅くても良かったのに……」


「え、鈴!?」


「冗談だよじょーだん」


「本当に冗談だよね鈴!? 娘に邪険にされると、お父さん泣いちゃうよ!?」


 鈴のお父さんは身長が180cmぐらいあって、筋肉隆々だった。 顎髭がとても立派で、ダンディな感じだ。


 おおう……茜さんと鈴からは想像しにくいタイプのお父さんだな。


 鈴は小動物みたいな可愛さがあるし、茜さんは大人でも愛らしさが出ている。


 なかなか見ない組み合わせのような気がするな。


「よっこらせ」


「ちょっとお父さんやめてよ。 おじさんくさい」


「もうお父さんはおじさんだよーっと。 さて、はじめましてだね春名陸くん。 俺の名前は松田亮太だ。 気軽にりょうたさんと呼んでくれ」


「はじめまして亮太さん! 鈴とお付き合いさせていただいている春名陸です! よろしくお願いします!」


「おう。 よろしく頼むよ」


 亮太さんは立ち上がって俺の近くまで来て挨拶をしてくれた。


 俺と亮太さんは握手を交わす。


 亮太さんの手はゴツゴツしていて、漢らしかった。


「ごめんね陸くん。 お父さんムキムキで」


「い、いや別に謝ることじゃないよ」


「そうだぞ鈴。 見ろよこの上腕二頭筋を!」


「お父さん昔ラグビーやってたらしくてさ、筋肉凄いんだよ」


「あれ!? 鈴無視ぃ!?」


「へ、へぇ〜」


 だから筋肉隆々なのか。


 ってか、さっきから鈴地味に亮太さんに塩対応じゃない?


 これが思春期女子の父親への対応なんだろうか?


「ごめんね陸くん。 いつもはあそこまで鈴も塩対応じゃないんだけど、ちょっと前からあんな感じなのよ」


「そうなんですか?」


 茜さんが料理を盛っているお皿を持ってくる。 お、唐揚げだ! 美味そう!


「そうなのよ。 亮太さんがあまりにも鈴を揶揄うもんだから、ちょっと鈴へそ曲げてるのよ。 いつもはもうちょっと鈴、優しいのよ」


 俺は亮太さんと言い合いをしている鈴を見る。


 あそこまで感情的になる鈴はなかなか見れないな。 やっぱり家族にしか見せない顔もあるんだな。


「はいはいあんた達! 陸くんもいるんだから喧嘩しないの!!」


「「はーい」」


「ま、こんな感じの松田家だけど、仲良くしてね」


「……はい!!」


 俺は茜さんに促されて食卓へと座る。


 そして、亮太さん、茜さん、鈴と楽しく雑談をしながら、俺の初めての彼女のお家訪問は幕を閉じたのだった。

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