第114話 練習。

「それじゃあ午前の練習はこれで終わり! 夕方の練習までにはお前ら戻ってこいよ」


「「「「「「はい!」」」」」」


 俺達は顧問に返事をして各々動き始めた。


 昼飯を食べに家に帰る人、弁当を食べて仮眠を取る人など、色々な人がいる。


 6月ぐらいからちょくちょく休日練習が2部構成になり、夏休みに入ってからはほぼ毎日2部構成で練習をしていた。


 午前は日差しがきつくない9時ぐらいから練習を始めて11時ぐらいに終わり、午後は日差しが隠れてくる17時から19時ぐらいまで練習をしている。


 最初は空き時間なにしようとか悩んだり、午後から練習をもう1回するめんどくささとかがあったけど、今はもう慣れて時間を上手く使える様になっていた。


「今日はどうする? 図書室で夏休みの宿題進める? それとも大人しくみんな家に帰って休憩する?」


 俺は日陰に入ってスポーツドリンクを飲みながらみんなに聞く。


 すると、靴紐を結んでいたユウマが返事をした。


「んー昨日図書室で宿題したから、宿題はなしがいいな」


「なら、図書室で涼まない? エアコンガンガンに効いてて涼しいよ」


 チアキが汗をタオルで拭きながら提案をしてきた。


 確かにそれは魅力的だな。 このアイスがあっという間に溶けるような暑さから逃げられるのはデカい。


「いや、ここ最近俺達図書室行き過ぎだろ。 もう図書室飽きたわ。 素直に今日は一旦帰ろうぜ」


 ツバサが肩にエナメルを掛けながら話しかけてくる。 もう言動から帰りたい気持ちが分かる。


 でも、確かにたまには余計なことせずに、一旦帰るのもいいかもしれないな。


「えぇ帰んのかよ。 また学校来るの精神的に怠いって」


「そこはなんとかすんだよ。 俺は帰って早く昼寝したい」


「図書室でも昼寝できるし、涼しいよ?」


「家の方が気兼ねなくリラックスできるじゃねーか」


「言われてみれば確かにそうだ!」


「まぁ、ここ最近俺たちなんだかんだ直ぐに家帰ってなかったし、今日は一旦家に帰る?」


「ツバサと陸がそう言うなら、オレもそうするわ。 チアキはどうする?」


「えぇ〜みんな帰るならボクも帰るよ」


「なら、今日は帰るか」


 俺達はエナメルを肩に掛けて帰り支度を始めた。


 そして、みんなの帰り支度が済んだから帰ろうとした矢先に、アキラが話しかけてきた。


「ユウマくん達水浴びしないっすか!? 最高に涼しくて気持ちいいっすよ!」


 アキラは髪の毛から水滴を垂らしながら話す。


 少し遠くを見てみると、男女何人かが集まって楽しそうに水浴びをしていた。


 ホースから出てくる水で虹ができている。


 みんな楽しそうに笑っていて、明るい声が響いていた。


「おーなんか楽しそうだな……行ってみるか?」


 ユウマが俺たちの方を見る。


 ツバサとチアキ、俺は顔を見合わせた。


「どうする?」


「俺は全然ありだと思うよ。 夏だし直ぐに服とかも乾くでしょ。 それに、後輩達とこうやってふざける時間も限られてるし、むしろ行こうよ」


「……はぁ。 ったくしょうがねぇな。 俺たちも水浴び、参加してやるよ」


 俺の意見を聞いたツバサが、頭をボリボリかきながらエナメルを地面に置く。


 それを見て俺たちもエナメルを地面へと置いた。


「しゃあお前ら! オレたちも混ぜやがれ!」


「ホースの主導権をボクにちょうだい!」


「ぜっっったいチアキには渡すなよ! こいつ女の子を集中して狙って、下着を透かす気だぞ!」


「そうだ! みんなチアキに下着を透かされたくなかったら逃げるんだ!」


「ちょっとツバサと陸やめてよ!! いや、あの、本当にそんなことしないからみんな逃げないでよ……逃げないでよおぉぉぉぉ!!」


 怒り狂ったチアキが後輩からホースの主導権を奪い、みんなに水をかけ始めた。


 俺達はそれから必死に逃げたり、反撃をしたのだった。


 ちなみにキャッキャッ騒ぎすぎて、職員室にいた顧問に大目玉をくらってしまった。


 でも、このひと時は大切な思い出となった。


 俺たち3年生の引退はもうすぐ。


 刻一刻と最後の大会は近づいてきているのだった。

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