第109話 彼女のお家に遊びに行きました。 ③
「陸くん。 とりあえずここに座ってくれる?」
「あ、うん」
俺は鈴に連れられて部屋へと入り、丸テーブルの近くに座った。
うぉ……カーペットフカフカだ。 靴下越しから気持ちいいのがわかる。 ここで昼寝したら気持ちよさそうだな。
「私、紅茶とお菓子を貰ってくるから待っててくれる?」
「オッケー」
返事をすると鈴は部屋から出て茜さんがいるリビングへと向かった。
大丈夫かな……? 茜さんと喧嘩とかにならないよな?
俺は不安になったけど、とりあえず手持ち無沙汰だったから座ったまま鈴の部屋を見渡した。
可愛い丸テーブル、勉強机やクローゼットなどが置かれている。
白やピンクなどを使っていて、女の子が好みそうな色彩豊かな部屋だった。
後、ベットの枕元にはこれでもかってぐらいぬいぐるみが置かれている。
有名なアニメキャラクターから、きも可愛い系のぬいぐるみなど範囲は広かった。
枕元にぬいぐるみがいっぱいなんて女の子っぽいな。
少なくとも男友達の部屋では見れない光景だ。
「お待たせ〜! ちょっとお母さんに捕まっててさぁ」
「別に大丈夫……ん?」
俺は開いたドアの方を見る。
そこにはお盆を持った鈴と、足元に一匹の猫がいた。
その猫は我が物顔で部屋に入るとトコトコ歩き、ピョンとジャンプして窓側に着地する。
そして、少し伸びをした後、身体を丸めてそこでのんびりし始めた。
確かこの猫って……。
「ナナちゃん?」
「お、陸くん覚えててくれたんだ」
「前、写真見せてくれたよね?」
「見せた見せた」
鈴はお盆を丸テーブルに置いて座り、ナナちゃんの方を見る。
鈴の目はとても優しかった。
「ナナちゃんって写真で見るよりも茶色んだね」
「あはは。 よく言われる〜ナナちゃんって茶トラっていうんだよ」
「茶トラ?」
「うん。 薄いオレンジがかかった毛色に、赤褐色の縞模様が入った猫のことを茶トラって言うんだって」
「へーそうなんだ……」
俺は座ったままナナちゃんを見る。
確かに言われてみたら赤褐の縞模様が見える気がする。
「時々ナナちゃん、私の部屋に入ってくるんだぁ」
「そうなんだ。 もしかしてあそこナナちゃんの定位置?」
「そうそう。 あそこおひさまが当たって昼寝にはちょうど良いみたいなんだ」
「へぇ〜」
可愛いなぁ。 俺、犬よりも猫派だから嬉しいなぁ。
「人懐っこいから、もしかしたら後で陸くんのところ来てくれるかもしれないね」
「まじで!?」
「まじでまじで」
来てくれるならとても嬉しい。 出来れば胡座かいている俺のところにスポッときて、丸くなってくれたらいいなぁ。
「さて、とりあえず私の部屋に逃げてきたけど、どうしよっか」
俺がナナちゃんに想いを馳せていると、鈴がそんなことを言った。
そうだった。 俺たち茜さんから逃げてきたんだった。
「どうしよっか。 とりあえずお菓子と紅茶飲んで考える?」
「そうしよっか。 まだ時間いっぱいあるもんね」
俺たちは紅茶とお菓子に手をつける。
うん。 さっきは緊張とかであんまり味とか分からなかったけど、美味しいなぁ。
「そういえばさ、聞いた? あの先生がさぁーーーー」
「え、それマジなん?」
「マジらしいよ〜」
俺たちは紅茶やお菓子を食べ飲みしながら、雑談を始めたのだった。
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