第108話 彼女のお家に遊びに行きました。 ②

 俺はリビングに通されて、鈴の勧めでソファへと座った。


 座った瞬間にふんわりと身体が沈むこの感じはきっと、良いソファなんだろうなとか思っていたら、鈴のお母様が紅茶とお菓子を持ってきてくれた。


 対面にお母様、俺の横に鈴が座る。


 俺はテーブルに置かれた紅茶とお菓子を見た。


 凄いな……紅茶とお菓子を貰ったのなんて初めてだ。


 男友達の家に行ったら大抵炭酸飲料とかポテチなんだけど、やっぱり女の子の家は出す物が違うのかな?


 俺はそんなことを思っていると、鈴のお母様が俺に話しかけてくれた。


「じゃあ、まずは自己紹介しましょうか。 私の名前は松田茜。 鈴のお母さんよ。 よろしくね」


「春名陸です。 鈴さんとお付き合いさせていただいてます。 よろしくお願いします!」


「よろしくね〜いやーそれにしても、やっと陸君とお話しできるわ! 私ね、陸君とはずぅぅぅぅとお話ししてみたかったのよぉ!」


「そ、そうなんですか?」


「よく鈴から話聞いてたからね〜」


「結構俺のこと話してたの?」


「う、うん」


 鈴は恥ずかしそうにしながら肯定する。


 鈴って一体どんなこと話してたんだろう? 悪いことじゃないといいな。


「今までうちの子。 特定の男の子の話なんてしなかったんだけど、2年生になってから少しずつ陸君の話をするようになったのよ」


「そうなんですね」


「最初は塾で同じ中学の男の子が、同じ授業受けるようになった〜っていう話から始まったんだけど、あれよあれよと話すことが増えてきてね。 お父さんとおやおやおや?と思っていたら、クリスマスイヴにはいつも以上に気合いを入れている鈴を見たのよ。 その姿を見て、私達は確信したわ。 あ、鈴恋してるんだなって」


「あ、あはは……」


 え、結構ズバズバ言ってくるんだけどこれ大丈夫?


 鈴のメンタルもってる?


 俺は少し身体が熱くなるのを感じながら、チラッと隣の鈴を見る。


 鈴は顔を真っ赤にして放心状態になっていた。


 こ、これは! 恥ずかしすぎて頭がパンクしている!?


 流石に母親にここまで赤裸々に語られるとは思っていなかったみたいだ。


 でも、俺気になるし、この状態のお母様止められる気がしないよ!?


「そこからどうなるのかなーって思っていたら、鈴が誕生日に気合いの入った服装で遊びに行くって言ったのよ。 それを見て思ったわね。 これは絶対勝負仕掛けにいってるって」


「あばばば」


「鈴大丈夫!? 今まで見たことない感じになってるんだけど!?」


「そして、鈴が帰ってきた時の表情を見て私達は確信したわ。 あ、これ成功したやつだって」


「ほ、ほほう」


 鈴を助けてあげたい気持ちはあるんだけど、お母様の話は正直聞いていたい。


 ど、どうすればいいんだ!?


「もうあの時の鈴は我が娘ながら最高に可愛かったわ! なんたってーーーーーーーー」


「そ、それはダメーーーー!!」


 お母様が何か言おうとしたら、鈴が復活しておもいっきり大きな声を出して立ち上がった。


 そして、俺の腕をひいて一気にリビングを飛び出した。


「え、えぇぇぇぇぇ!?」


「鈴ー! ちょっとどこ行くのよ! まだ話たりないんだけど!!」


「うるさぁいいい! 絶対あのこと言おうとしたでしょ! それだけはぜっっったいに言わせないんだからぁ!!」


 俺はなんとか鈴に引っ張られながら階段を上がる。


 そして、鈴に連れられて鈴の部屋へと入ったのだった。

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