第98話 最高学年になって最初の陸上大会です。 ①

「いや〜俺たちも大所帯になったよな〜!」


「本当だよね」


 俺達は後ろにいる後輩達を見る。 


 長距離組だけで10人ぐらい。 短距離組やハードル、砲丸組を入れると更に15人ぐらいだから、うちの陸上部は全員で25人ぐらいいる。


 俺が1年生の頃は20人いなかったから、本当に人増えたよな。


「人数だけみれば結構強豪校に見えるくない?」


「まぁ、オレたち強豪校ってほど強くないんだけどな」


「でも、ボク達弱くはないはずだよ」


「まあ、頑張ろうや」


 俺達はそんなことを話しながら、所定の場所に荷物を置いてスタジアムの方へと向かった。


 今日は5月✖︎日。 今の時刻は朝7時30分。


 陸上大会2日目だ。 俺が出る5000メートル競走が始まるのは15時。


 それまでは同級生や後輩達の競技を見て、応援するつもりだ。


「ユウマと陸頑張れよ。 一緒に県大会行こうぜ」


 前日に100メートル競走で本戦を見事に突破し、県大会出場を決めたツバサが話しかけてくる。


 こいつ、うちの陸上部で唯一今の時点で県大会出場決定してるんだよな。


 負けたくないな。


「うぅ……ボクも県大会出たかった……!!」


 ツバサの横でチアキが項垂れる。


 チアキは自己ベストを出して予選を突破することができたが、本戦では奮わず、県大会を逃してしまった。


 同い年のツバサだけが県大会に出場するのは悔しいだろうけど、きっと7月の最後の大会ではチアキも本戦を突破して、県大会に出場できるだろうなと思った。


「うわぁ……俺の自己ベストだと、県大会いけるか微妙なんだよなぁ……嫌だ嫌だ。 陸だけ県大会出場決めて、俺は行けれないなんて絶対嫌だ!」


「へへへ……ユウマもボクの方へおいでよ……へへへ」


「うわっ! 抱きついてくんなよチアキ!? ヤメロォ! 俺をそっちに引き摺り込もうとするんじゃない!」


 ユウマがチアキに抱きつかれてこっちに来い……こっちに来い……と誘われている。


 なにかの妖怪みたいだ。 


「あの! みなさんオレだって県大会狙ってますからね! 負けないっすから!」


「アキラ……そんなに上手くいくと思うなよ」


 俺はアキラの肩にポンッと手を置く。


 お前、中学最初の大会でスムーズに県大会出場できると思うなよ。


 2.3年生の力舐めたらダメだぞ。


「まぁ、アキラも頑張れよ」


「ツバサくん……!!」


「屍は拾ってやるからよ」


「ツバサくん!?」


 アキラがツバサににじり寄って、胸倉を掴んでガクガクと揺らしている。


 お前凄いな。 旧知の仲とはいえ、先輩の胸倉掴むなんてそうそうできることじゃないぞ。


「アキラ。 まずは先輩に対する言葉遣いとか、敬うっていう気持ちを知っていこうな」


「イダダダっ!! 笑顔で優しく話しかけてきてるっすけど、アイアンクローの威力半端じゃないんっすけど!!」


 アキラがギャーギャー言っているのを聞きながら、俺はトラックを見下ろす。


 後数時間もすれば俺はあそこで走ることになる。


 その時は鈴もスタンドから応援してくれているはずだ。


 俺は今日、ここで県大会出場を決める。


 カッコいいところを見せるんだ……!!


 俺はそんな決意をしながら、ギュッと手を握ったのだった。

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