第97話 お家デートをしました。 ⑤
「母さん、父さんお帰り。 早かったね」
「おーう。 温泉浸かったら良い感じに眠たくなったから、早めに帰って昼寝したいと思ってなぁ」
「私はもうちょっとドライブ楽しみたかったんだけど……」
「まぁまぁ。 また行こよ。 今日行けなかったところがあるってことは、また今日行ったところにも行けるかもしれないってことだからさぁ」
「まぁ、そうね」
リビングに入るとソファーに座ってウトウトしている父さんと、晩御飯の準備を始めている母さんがいた。
鈴の靴を見たはずなのにそれに触れてこないってことは、見なかったことにしてくれているのだろうか?
その気持ちはありがたいけど、バレた時点でもうこっちの気持ちもソワソワしてるんだよね。
ここはもうお互いスッキリした方が良いと思うんだ。
「あのさ、今日は人が来ていてさ」
「あぁ。 そうみたいね」
「早く部屋に戻った方がいいんじゃないのか?」
「いや、もうその人は今俺の後ろにいるから大丈夫だよ」
「!?」
「!?」
「じゃあ鈴。 入ってきて」
「お、お邪魔しまーす……!」
俺の後ろから鈴がヒョッコリと出てきた。
顔は凄く緊張している。
そんな鈴の姿を見て、父さんは寝ぼけ眼じゃなくなって目がパッチリと開き、母さんは手に持っていたお玉を流しに落としてしまった。
いや、母さんはいくらなんでも驚きすぎでしょ!
「は、はじめまして! 陸くんの彼女の松田鈴です! よ、よろしくお願いします!!」
「あ、あぁ……よろしくね」
「よ、よろしくお願いするわね」
鈴がガバッという音が聞こえるぐらい勢いよく頭を下げると、父さんは慌ててソファーから立ち上がり、母さんはパタパタと小走りで父さんの横へと向かう。
2人とも顔で『まじか……彼女か……』と言っているのがよく分かった。
「紹介が遅くなったけど俺の彼女です。 タメだよ」
俺がそう言うと、父さんが手招きをする。
鈴は母さんに連れられて、さっき父さんが座っていたソファーへと誘導されていた。
「どうしたの父さん?」
俺は父さんに連れられてリビングを出ると、父さんはガッと肩を組んで顔を近づけてくる。
ち、ちょっとやめて! 父さんの髭がチクチク刺さりそうで嫌なんだけど!
「おいおい陸。 彼女連れてきただけで驚きなのに、まさかあんな可愛い娘が彼女なんて驚きすぎてリアクション取れないんだが」
「リアクションなんてとらなくていいから!!」
「いや、まじでちょっとこっちにも心の準備が必要なんだから、ちゃんと言ってくれよ」
「内緒にしときたかったんだよ! なのに、予定よりも早く帰ってきたし、靴でバレたからしょうがなく言ったんだよ!」
「なんで内緒にしたかったんだ!」
「普通に彼女紹介するのが恥ずかしかったんだよ! 思春期の気持ちわかって!」
「お、おう、そうか。 それはすまんかった……」
俺と父さんの言い争いが終わると、母さんからリビングに戻ってくるように声を掛けられる。
俺と父さんがリビングへと戻ると、母さんと鈴は楽しそうに雑談をしていた。
えっ……もう打ち解けてんの? いくらなんでもない早すぎない?
「そうだ! 鈴ちゃん今日家で晩ご飯食べていきなさいよ!」
「え、いいんですか!?」
「いいのよいいのよ! いや〜食卓が明るくなるわね〜」
「そ、そんなことないですよ」
「そんなことあるわよ〜!」
俺と父さんは母さん達の様子を見て、おもわず顔を見合わせた。
女って凄い……。
俺はそんなことを思いながら、鈴も混じって一緒に晩ご飯を食べたのだった。
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