第96話 お家デートをしました。 ④
「……!?」
「……!?」
俺達はビックリしてお互い距離を取ってしまった。
慌てて俺は時計を見る。 母さんが言っていた帰宅時間にはまだなっていなかった。
「り、陸くん!? 今のってもしかしなくても……」
「俺の母さんと父さんの声だ……今日はドライブ行くって言ってたし、事前に帰ってくる時間は教えてもらってたのに……」
「ど、どうしよう!?」
鈴は大慌てだ。 もちろん俺も慌てている。
俺は母さん達に彼女ができたことは言っていない。
なぜなら、母さん達に彼女ができたと言うのが恥ずかしかったからだ。
絶対言ったら『どんな子なのか?』とか、『連れてこい』って言うのは、目に見えている。
それはなんとしても避けたかったのだ。
だから、細心の注意は払っていたつもりなのに、まさか帰ってくるなんて……!
「ど、どうしよう! 私心の準備できてないよ! だ、大丈夫かなぁ……?」
「だ、大丈夫だよ大丈夫! 静かにしてればきっとバレないって!」
俺たちはハラハラドキドキしながら、意味もなく部屋で縮こまる。
そんな俺たちには母さん達の会話が届いていたのだった。
「あら? 聞こえてないのかしら?」
「ユウマくん達と盛り上がってるんじゃないか?」
「そうかもしれないわね……んん??」
「どうしたんだ……? あっ……」
母さん達の会話が途切れたのが分かる。
……?? どうしたんだろう? ちょっと様子を見に行くか。
俺は鈴にアイコンタクトをとって部屋を出た。
ゆっくりドアを開けて足音を立てないようにしながら階段を覗き込む。
そこには玄関である物を見つめて黙っている母さん達の姿があった。
俺は目線を追う。
そこには鈴の履いていた靴が綺麗に置かれていた。
明らかに女の子しか履かない靴がそこには置かれていて、それを母さん達はじーと見つめている。
「ヒェッ……」
俺はその光景を見て思わず変な声が出てしまった。
俺は母さん達に見つからないように部屋へと戻る。
鈴が心配そうにこっちを見ていたけど、現実はしっかり伝えないといけないと思った。
「鈴……よく聞いてほしい」
「う、うん」
「家に女の子がいることは確実に親にバレてしまった」
「えぇ!? なんで!?」
「玄関にある鈴の靴を母さん達が凝視していたんだ……」
「あ……」
俺達は黙ってしまう。 これは……覚悟を決めるしかないのか。
帰るときに音とかでバレるから、鈴が両親のどっちかと会うことはもうほぼ確定だと思う。
なら、ここはこっちから彼女を紹介する方が精神的に楽なんじゃないか?
でも、鈴は大丈夫だろうか?
俺がもし鈴の立場なら気後れするに違いない。
やっぱりここはバレない可能性に賭ける方がいいのか……?
俺は悩む。 そんな俺を見て鈴は覚悟を決めた表情で俺に話しかけてきた。
「陸くん……私、陸くんのお母様達に挨拶するよ! どうせ遅かれ早かれ顔を合わすことになったと思うから、ここは覚悟を決めるよ!」
「鈴……!!」
「女は愛嬌! 女は度胸だよ!!」
鈴はニカッと笑って、胸を張ってドンッと自分の胸を叩く。
その姿がとてもカッコよくて、思わず感心してしまった。
「陸くん、お母様達のところに案内して……!!」
「鈴……分かったよ!」
俺達は部屋を出てゆっくりと階段を降りてリビングへと向かう。
そして、母さん達がいるであろうリビングのドアをゆっくりと開けたのだった。
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