第95話 お家デートをしました。 ③

「そういえばさ〜」


「ん〜? なに〜?」


「部活の次の大会っていつあるの?」


 格闘系ゲームを始めてから2時間が経った。


 最初は全然余裕だったんだけど、途中から俺もライフを落とすようになり、今では時々負けるぐらい鈴は強くなった。


 前のシリーズやり込んだからって、ここまで短時間で強くなる普通?


 ちょっと俺自信無くしそうなんだけど。


「次の大会は5月にあるよ。 で、7月が最後の大会になるかな」


 次の大会まで後1ヶ月を切った。 後輩が入り、恋人が出来たことで俺の実力はメキメキと上がっている。


 正直、5000メートル競走の自己ベストのタイムからすると、県大会に進める可能性は十分にある。


「そうなんだ。 ちなみに5月のいつなの?」


「5月○日と✖︎日かな」


「陸くんはどっちの日に出るの?」


「俺は3年生になってから5000メートル競走1本になったから、✖︎日の方に出るよ」


「開始時間は何時ぐらい?」


「分からないけど、多分今まで通りならお昼以降だと思うけど……」


「そうなんだ」


 鈴はコントローラーを置いて、ポケットからスマホを取り出す。


 そして、なにか操作したと思うと小声で『よし、大丈夫』と呟いた。


 ?? どうしたんだろう?


 俺が鈴の言動を不思議に思いながら見ていると、鈴は顔を上げて俺の方を向く。


 そして、両指を一定のリズムを刻みながらタッチし、俺に話しかけてきた。


「あのさ、私その日大会見に行っていい?」


「別にいいけどそっちの部活とかは大丈夫なの?」


「うちのバトミントン部はそんなにガチじゃないから、別に休んでも大丈夫だよ」


「そ、そうなんだ。 でも、陸上の大会って結構暇だよ? 大丈夫?」


 選手側としては陸上が好きだから色々な競技見れるのは楽しいし、ライバルになりそうな選手や走りのフォームを勉強できるから見るのは割と楽しいんだけど、鈴にとってはどうなんだろう?


「大丈夫だよ! ちょっと他のスポーツ競技の様子見てみたいって思ってたし、お昼以降だって分かっているなら、そんぐらいの時間に行くから!」


「気をつけてきてね」


「うん! 気をつけるね! 私応援しっかりするからね!」


 鈴が大会見にくるのか……これは気合が入るな!


 俺が心の中でやる気の炎を滾らせていると、鈴がズイッと身体を俺に近づけてくる。


 身体と身体が触れ合ってビックリしてしまった。


「私、陸くんのカッコいいところ見たいから頑張ってね」


 鈴は俺の肩に頭を乗せながら囁く。


 甘い声と、鈴の柔らかい身体の感触でドキドキが止まらなかった。


「鈴……」


「陸くん……」


 俺達は顔を見合わせる。


 すると、お互い何も言わずに顔を近づけた。


 鈴の柔らかい唇まで後少し。 もう3秒もすれば触れ合うというところまできた時、それは起こった。


「ただいま〜陸帰ったわよ〜!!」


「あースッキリしたー」


 ——————————————まさかの両親、帰宅である。

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