第91話 後輩が出来ました。
「陸くん、ユウマくん、こんちゃーす」
「うーす。 相変わらず元気だなぁお前」
「ってか、もう小学生じゃないんだから敬語使えって」
「あ、そうだった。 んじゃあ改めて陸先輩、ユウマ先輩こんにちは!」
「……なんと言うか」
「お前に敬語使われると、背中がムズムズすんな」
「ユウマくんが敬語使えって言ったのに!?」
俺達の前でショックを受けているのは2つ下の後輩、アキラだ。
まだ1年生だから身長は低く、そばかすが特徴的なこいつは、実は俺たちとは結構長い付き合いがある。
家が近所で小学校も一緒、子ども会も一緒だったからよく遊んでいた。
俺達が中学生になってもそこそこ顔を合わせる機会があり、交流は続いていた。
そして、今年の春に小学校を卒業し、また同じ学校に通うことになったのだった。
「お前、中学慣れたか?」
「うーん……まだまだっすね〜同じ小学校の奴らとは今まで通りっすけど、やっぱり他の小学校の奴らとはまだぎこちないっす。 普段つるむのも同じ小学校だった奴らとっすね」
「まあ、まだ1年生の4月だしそこはしょうがないよね。 俺達だってそんな感じだったもん」
「どれくらいから普通につるむようになったんっすか?」
「あーあれだよ! 5月ぐらいにある1泊2日の宿泊研修で仲良くなった気がする」
「宿泊研修?」
「ほら、小学校高学年の頃にちょっと遠くの島に行って、1泊2日過ごしたろ? 中学も同じ所で1泊2日過ごすんだよ」
「あーみんなでスタンプラリーとかやったり、カレー作ったりしたやつっすか?」
「そうそう。 あそこから壁が薄まった気がするわー」
「へーそうなんっすねー」
俺達は話しながら部室棟へと向かう。
アキラは俺達と同じ陸上部で、長距離に所属している。
小学生時代はサッカー部に入っていたから、てっきり中学でもサッカー部に入るものだと思っていたけど、陸上部に入ってきた。
理由を聞くと走るのは好きだけど技術がないし、チームプレイに難しさを感じていたから、サッカーは小学生までと決めていたらしい。
だから、走ることに特化している陸上部に入部したんだと、仮入部の時に教えてもらった。
そんなアキラだが、やっぱりサッカーで培われてきた脚力は凄く、俺より2つ下なのに実力でいうと俺と同等か、少し下ぐらい。
正直、中学1年の4月の時点で実力がかなり近いのはショックだった。
でも、アキラのおかげで、俺達長距離組は実力が少しずつ上がってきている。
やっぱり1年生に負けるのはみんな嫌なようで、長距離組の中でバチバチに対抗心が高まっているのだ。
アキラも負けず嫌いだから、どんどん練習をして実力を伸ばしている。
それを見て俺たちも負けなくないからどんどん練習する。
こうやってお互いを高め合っていっているから、長距離組全体の実力はドンドン上がってきているのが現状だ。
でも、このバチバチに意識し合っているこの環境はなんだか居心地が良いし、楽しい。
「今日こそ2人を抜かしてみせますから!」
「まだ1年坊には負けねーよ!」
「今日もアキラの前走ってやるから」
俺達は着替えてグラウンドへと向かう。
そして、5月の大会に向けてバチバチに対抗心を燃やしながら練習をしたのだった。
ちなみに俺もユウマもアキラに勝った。
アキラは悔しそうにしていたけど、こちとら陸上歴はアキラより長いんだ。
負けてたまるか!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます