中3の1学期

第90話 中学3年生になりました。

 寒かった冬が終わって少しずつ暖かくなってきた4月。


 俺達は中学3年生になった。


 最高学年になり、1年後にはみんなそれぞれ違う高校に進むことが決まっている。


 決まっているからこそ、最後のクラスは仲良い奴らと一緒のクラスになりたいって思ってたけど、まさかユウマ、ツバサ、チアキ、阿部さん、村上さん、近藤さん、そして鈴が同じクラスになるとは夢にも思わなかったなぁ。


「まさかお前らと同じクラスになるとはなぁー」


「塾も一緒なのに、学校のクラスまで一緒なんて……」


「え、嫌なのか……?」


「いや、嫌じゃないけど?」


「ちょっとハラハラしちゃったじゃないか阿部ぇ!!」


 阿部さんがユウマのことをからかっている。


 ユウマは少し涙目だ。  そりゃあ、可愛い女の子に嫌われてるかもって思うと、泣きたくなるよね。


「あいつらなんだかんだ仲良いよな」


「波長が合うんでしょうね」


 ツバサが自分の机に腰掛けていると、隣の席に座っている村上さんが話に乗る。


 2人ともどっちかというとクールタイプだから、机に腰掛けたり、肘をつきながら話す姿は絵になるんだよな。


 あそこだけ雰囲気が高校生ぐらいだもん。


 まぁ、ツバサはなんともいえない馬鹿なところがあるんだけどね。


「チアキくんはさ、進路どうするの? 女子校?」


「う〜ん進路かぁ……って、なんで女子校!?」


「え、可愛いからだけど……」


「ボク可愛くても男だよ!?」


「大丈夫大丈夫。女装して入学すればいいから」


「そんな漫画みたいなこと、現実で出来るわけないじゃん!?」


「…………」


「で、出来るの!?」


 おい、チアキ。 お前女子校に入れるなら、女の子のあんなところやこんなところまで見れるんじゃないかって思ってるだろ。


 ポーカーフェイスだけど、付き合いの長い俺達にはお前の考えが筒抜けだぞ。


「まぁ、出来ないんだけどね」


「出来ないのかよぉぉぉぉ!!」


 チアキは悔しそうに膝をついて床を叩く。


 それを見て近藤さんはクスクスとお淑やかに笑っていた。


 笑い方は上品だけど、やってることはタチが悪いんだよなぁ。


 まぁ、2人なりのコミュニケーションだろうから、俺は何も言わないよ。


「やったね陸くん! これで1年間一緒だよ!」


「やったね鈴。 いっぱい思い出作ろうね」


「うん! いっぱい作ろう! いや〜昨晩、陸くんと同じクラスになれますように! みんなと同じクラスになれますようにって願っていて良かったよ!」


 俺がいる席の机に腰掛けていた鈴が、満面の笑みで話しかけてくる。


 鈴、そんなこと願っていたのか……。


 でも、まだ甘いな。


「俺は春休みに入ってから毎日鈴と一緒になれますように! みんなと一緒になれますようにって願ってたよ」


「え、本当!?」


「いや、嘘だけど」


「なにそれ!?」


 鈴が口を開いてビックリしている。 付き合い始めて改めて気づいたんだけど、鈴の感情は豊かで、見ていて飽きないのは本当に魅力的だよな。


「あははっ。 春休みに入ってからは嘘だけど、ここ数日は願ってたよ」


「あ〜そうなんだ」


「だって彼女と同じクラスになりたいって願うのは、彼氏として普通じゃない?」


「…………その言葉、ズルくない?」


 鈴が俺の言葉を聞いて顔を赤くした後、顔を逸らして口を3の形にしながら小声で言う。


 そんな鈴が堪らなく可愛かった。


「おいおい2人ともイチャつくなよ」


「妬けちゃうぞ〜!!」


 俺達の様子を見て、みんなが声を掛けてきたり、からかってくる。


 みんなに揉みくちゃにされながら、これからの3年6組での生活が楽しみになったのだった。

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