第89話 女友達にも問い詰められました。
「はい。 みんな集合。 特に鈴と春名くんは今日の主役だから、絶対に集合」
塾が終わると阿部さんが俺達に声を掛ける。
既に村上さんと近藤さんは阿部さんのすぐ側に居た。
絶対誕生日デートについてだよな……。
今、ちょっと気まずいから出来ればそっとしておいて欲しいっていう気持ちがあるんだけど、この3人にはお世話になったからしっかり報告はしたいし……出来れば地雷は踏まないでくれよ。
俺はそんなことを思いながら鈴とアイコンタクトを取って、阿部さん達の所まで行った。
阿部さん達は俺達が来ると靴を履いて外に出ようと言う。
そして、自転車を漕いで近くにある公園まで向かった。
その公園は、何時ぞやユウマ達と進路を語ったときに来た公園だった。
「寒いね〜」
「風邪引かないようにしないといけないわね」
近藤さんと村上さんが白い息を吐きながら話す。
手に持っている缶コーヒーからも白い湯気が出ていた。
「はい。 缶コーヒー2人ともどうぞ」
俺が近藤さん達を見ていると、阿部さんが俺達に缶コーヒーを奢ってくれた。
貰った缶コーヒーは暖かくて、かじかんでいた手にはちょうど良かった。
「さて、寒いしもう気になってしょうがないから単刀直入に聞くけど……あんた達、付き合い始めたの?」
阿部さん達が俺たちをジッと見る。
6つの目が俺達のことをしっかりと見ていた。
それに対して俺は目を逸らすことなく、事実を言ったのだった。
「うん。 鈴の誕生日からお付き合いをさせてもらってるよ」
それを聞いた阿部さんはガッツポーズを取り、近藤さんと村上さんは手を取り合って喜んでいた。
ユウマ達の時もだけど、みんなすごい喜んでくれるなぁ。
「鈴やったじゃないの! おめでとう!」
村上さんが満面の笑みでお祝いをしてくれる。
村上さんってこんなに笑うんだと驚いてしまった。
「長かったけど、本当に良かった〜! 万が一悪い方にいったらどうしようかと思ったよ〜!」
近藤さんがそんなことを言いながら鈴に抱き着く。
鈴はそれに驚いた表情を見せたけど、直ぐに嬉しそうに笑い、抱きしめ返していた。
「あんた達……もうほんっとうに焦ったかったんだから! でも、ちゃんと結ばれて一安心だよ! うちからもおめでとう!」
阿部さんは呆れた表情でそんなことを言ったが、口元はとても嬉しそうに笑っている。
そんな阿部さんに鈴はありがとうと声を掛けた後、ハイタッチをしていた。
俺も1人1人に声を掛ける。
みんな『漢を見せたね!』、『やる時はやるのね!』、『根性見せたね!』と声を掛けてくれたり、肩を叩いたりしてくれた。
でも、俺は近藤さん辺りから気になっていることが1つある。
『長かったね』や『焦ったかった』っていうのはどういうことだ?
「長かったねとかどういうこと?」
俺がみんなに質問をすると、鈴以外がニヤニヤし始める。
それを見て鈴はアワアワとテンパっていた。
「こっちも色々あったんだよ〜! 男の子の好きな服装はどんなの?とか聞かれたり」
「ちょっと琴!?」
「どのタイミングで告白すればいい?とか、告白ってどうすればいいの? 絶対付き合えるっていう根拠ないよね!?とかも聞かれたわね」
「そ、それは秘密って約束したじゃん凛!」
「鈴も春名くんも同じようなことを悩んで、同じような時期に相談してきたから、思わずうちらキュンキュンし過ぎて爆発しそうになっちゃったよ」
「う、うわぁぁぁぁ!!」
阿部さんの発言を聞いて思い出したのは、3人に鈴の誕生日を知っているか聞かれた時のことだった。
そういえばあの時、3人とも微笑ましい顔をしていたな。
あの顔にはそういう理由があったのか。
「いや、違うんだよ陸くん! いや、違わないんだけど違うんだよ陸くん!?」
「鈴、恥ずかしいのは分かるけどテンパりすぎだよ」
鈴の真っ赤な顔を見ながら、俺は笑って声を掛けた。
鈴は3人にイジられて顔を真っ赤にしている。
俺はそんなみんなを見て心がポカポカとするのだった。
そして——————————————
「はぁ。 ついに3年生か……」
「受験とかは大変だけど、頑張ろうね陸くん!」
「うん。 頑張ろう!」
——————————————俺たちは期末テストと寒い冬を乗り越え、中学3年生になったのだった。
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