第78話 同じ塾で隣の席の女の子の誕生日に、デートをします。 ①
「あー緊張する」
俺は駅の改札口でそう呟く。
辺りを見渡すとたくさんの人がいたが、鈴はまだ来ていない様子だった。
「よし……! 忘れていないな」
俺はカバンの中に手を入れてある物の感触を確認する。
それは鈴の誕生日プレゼントだった。
家から出る時も確認したけど、どうしても気になってあるか確認してしまう。
……大丈夫かな? 鈴、喜んでくれるかな?
「だーれだ!!」
「うおっ!?」
そんなことを思っていると、俺の視界は急に真っ暗になる。
目の辺りには温かい手の感触、聞こえてきたのは聞くだけで思わず笑みが浮かぶほどの可愛らしい声だった。
「やったー! サプライズ成功ーー!!」
「ちょっと鈴! 心臓に悪いよ!」
「えへへ♪ ごめんごめん!」
後ろを振り返ると、舌をペロッと出しながら悪戯っぽく笑っている鈴がいた。
今日の鈴の服装は黒のパーカーの上にVネックの白いセーターを着て、オレンジ色のフレアスカートを履いていた。
ヘアピンもしていて、いつもとは雰囲気が少し違う。
映画を見に行った時やクリスマスイブの時とはまた違った感じの服装で、鈴は本当にお洒落さんだなと思った。
「ちぇー陸くんの方が先に来てること多いから、今日こそは私が先に集合場所に着こうと思ってたのに、今日も陸くんの方が早かったなんて……悔しい!」
「そんなに悔しがること?」
「悔しがることだよ! 次は絶対私の方が早く着くから!」
鈴はビシッと俺に指を差しながら宣言する。
別にいつもたいして待っていないし、集合時間には遅れたことないから、別に気にしなくていいとは思うんだけど、それを今の鈴に言うのは得策じゃない気がした。
……ってか、"次"か……。
鈴の中で"次"があることが分かって嬉しい反面、今日の告白が失敗したら"次"はないのかもしれないと思うと俺は急に怖くなった。
俺は弱気を吐きそうになるけど、口をぎゅっとつむぐ。
いけない。 このままだと気持ちが後ろ向きになっちゃう。
せっかく頑張って決めたデートプランや、みんなからもらった意見や時間もこのままだとパーになっちゃうような気がした。
「次はどっちが早く着くか勝負してみる?」
「望むところだよ!」
俺達はそんなことを話しながら、切符を買って電車に乗る。
そして、約1時間半電車に揺られて、目的の遊園地がある最寄駅へと着いたのだった。
「うわーこっちの方は都会だね」
「建物とか高くて凄いよね」
「私、こういうところに住んでみたいなー」
「分かる。 都会って憧れるよね」
「ねー!」
俺達は周りの景色を楽しみながらバス停へと向かい、時刻表を見る。
ふむふむ……遊園地行きのバスが来るまで残り20分ぐらいで、歩いたら15分ぐらいの距離か。
「どうする? バス待つ?」
「ん〜時間もあるし、15分ぐらいなら全然歩いてもいいと思うよ? それに、知らないところを歩くのってなんだか楽しそうじゃない?」
「確かにそうかもね。 じゃあ、散歩がてら歩いて遊園地に向かおっか」
「そうしよーそうしよー」
俺達は話をしながらのんびりと遊園地へと向かった。
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