第62話 クリスマスイブにデートです。 ③

「いやー陸くんもノリノリだったね!」


「案外、人に評価してもらいながら試着するのって良いね」


「そうでしょ? 自分だけの評価だと少し不安だけど、人から評価してもらえると不安が少し減って、色々気づけることあるよねー」


 俺の試着会が終わり、次は鈴の番。


 鈴は自分が気になっている服を少し選び、試着室へと入っていった。


 俺は試着室から少し離れて鈴を待つ。


 周りを見るとカップルが多かった。


 もしかしたら、俺たちもカップルに見えてるのかもしれないな。


 俺はあまりウロウロすると目立つと思ったので、スマホを弄りながら時間を潰す。


 それにしても、試着会楽しかったな。


 女の子が試着に長い時間をかけるのも少し理解できたよ。


「お待たせー!」


 俺はスマホを弄っていると鈴の声が聞こえたので振り返る。


「おお……いいね」


 鈴の服装は上がダークブラウンのカーディガン、下がパンツスタイルへと変わっていた。


 鈴はスカートが多いから、パンツスタイルは新鮮だな。


「パンツスタイルいいね! 鈴って俺の中ではスカートのイメージが強いから、新鮮だよ! それに、足がシュッてしててかっこ可愛いよ!」


「えへへっそうかな? 確かに私スカート多いから、パンツスタイルの私を見るの陸くんは珍しいかもね」


「珍しいよ。 でも、パンツスタイルも似合ってていいね!」


「嬉しいなぁ。 じゃあ、次の着てみてもいい?」


「いいよー待ってる」


 鈴は試着室のカーテンを閉める。 少しすると今度は上がオーバーサイズのスウェットで、下はロングスカートを履いていた。


「ど、どうかな?」


 鈴はオーバーサイズのスウェットから、少し出ている手を口元に持っていきながら聞いてくる。


 確か袖が長くて手を隠していることを萌え袖って言うんだっけ?


 ……うん! 可愛い! なんなら1番俺の好みだ。 あざとい感じが抜群に良い。


「可愛いね! 色もよく似合ってるし、鈴の雰囲気に合ってるよ!」


「そうかな? じゃあ、陸くんはさっきのパンツスタイルと今の私、どっちが良いと思う?」


「甲乙つけがたいけど、俺は今の服装の方が可愛いと思う!」


「そっかぁ……そっかぁ。 なら、今のところこれが購入第1候補だね!」


 鈴は嬉しそうに笑いながら自分の全身を見る。 鏡に映っている自分の身体を動かしながらチェックしている鈴は、とっても可愛かった。


「お客様とてもお似合いですよ〜!」


 俺は笑顔でその様子を見ていると、店員さんが話しかけてきた。


 それに慣れた感じで対応する鈴。


 鈴は凄いな。 俺ならテンパリそうだ。


 俺は二人の様子をボッーと見つめる。


 しかし、店員さんの言った言葉に、俺は意識を引き戻されるのだった。


「彼氏さんもこんな可愛い彼女さんがいていいですね〜!」


「「……えっ!?」」


 俺と鈴はお互いに顔を見合わせる。 少しするとお互いの顔が徐々に赤くなり、すぐに真っ赤になった。


 カップルに見えてるのかもとは思っていたけど、第3者から言われると想像以上に意識してしまった。


「べ、別に恋人ではないですよ」


 俺はなんとか震える声で店員さんに話しかける。


 すると、店員さんは口元に手を置いて驚いた後、俺と鈴を交互に見てこう言ってきた。


「そうなんですか? でも、先程からの様子を見ていると、とってもお似合いなカップルにしか見えませんでしたよ?」


 俺と鈴は店員さんの言葉で更に落ち着かなくなる。


 しかし、店員さんのお喋りは止まらなかった。


「微笑ましいカップルだなーって思いながら、店内の人は見ていたと思いますよ?」


「「…………」」


 俺は周りを見渡す。


 すると、多くの人が自分の見ていた服に視線を戻したり、会話を再開していた。


 ……みんな俺たちのこと結構見ていたのか!?


 は、恥ずかしいぃぃぃぃ!!


 俺と鈴は頭から湯気が出そうになるぐらい真っ赤になり、下を向いてしまったのだった。

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