第61話 クリスマスイブにデートです。 ②

「お、おおぅ」


「?? どうしたの陸くん? 早く中入ろうよ」


「あ、はい」


 俺は服屋さんの外見を見て縮こまっていると、鈴が不思議な顔をしながら聞いてきたので、鈴について行く形で入店する。


 中にはテレビとかで見る芸能人が着ているような、お洒落な服がたくさん置かれていた。


 すげぇ。 お店に置かれているマネキンがお洒落さんだ……。


「鈴はここでよく服を買うの?」


「うーん。 時々買うかなぁ。 でも、とりあえず服を見る時はこのお店には絶対寄るんだぁ」


 俺と鈴は店内を散策する。 鈴が言うには、結構このお店は中学生の間で人気があるらしい。


 阿部さんはここの服が好みで、よくこのお店で服を買っていると鈴から聞いた。


 確かに阿部さんもお洒落だよな。


「今日はここでなにを見るの? シャツ? それともパンツ?」


 俺は周りの服を見ながら鈴に聞く。


 あ、このジャケットかっこいいなぁ。


 でも、自分はかっこいいって思っていても、他人から見たら微妙みたいなことあるからなぁ。 どうなんだろ?


「特に決めてないよ。 良さそうなのがあったら試着して、気に入ったら今日の帰りに買おうかなーって」


「そうなんだ。 でも、帰りでいいの? すぐに買わないと売り切れになっちゃうかもよ?」


「そうだけど、せっかくのデートでずっと荷物持ってるの邪魔でしょ? だから、帰りでいいよ。 それに、買われてたらご縁がなかったーって思うことにするよ」


 鈴はそんなことを言いながら服をチェックする。


 確かに鈴の言う通りかもな。 俺なら欲しいものはすぐに買っちゃいそうだ。


 鈴はこの後のことまでよく考えている。

 

 この考えからして、買い物慣れしている人とそうじゃない人の差って分かるんだなと俺は思った。


「あ、これ陸くんに似合いそうだよ!」


 そんなことを思っていると、鈴はパーカーやセーターなどを俺に見せてくる。


 そして、鈴は俺の体に服を合わせながら頷いていた。


「うんうん。 陸くん似合ってるよ!」


「そう?」


「そうなんだよ! だから、試着してみない?」


「え……?」


 俺は正直、試着は苦手だ。


 あの自分の服ではない、新しい服を着る感じはなんとも言えない気持ちになる。


 それに、試着室ってなんだか落ち着かないんだよな。


 でも、鈴の期待している眼差しを見たら、そんなことは言えなかった。


「じゃあ、試着してみようかな」


「うんうんそうしなよ! 私、待ってるから!」


 俺は満面の笑みを浮かべている鈴に見送られて試着室に入り、着替える。


 まずはネイビー色のパーカーからだ。


「どうかな?」


「いいよ! ネイビーって落ち着いている色だから、陸くんの雰囲気にピッタリな気がする!」


 次はワインレッド?のセーターだ。


「今のところそれが1番いいよ! 陸くんの雰囲気にピッタリで大人っぽい!」


「そ、そうかな?……ねぇ、俺このジャケットが気になってるんだけどさ、鈴評価してくれない……?」


「全然いいよ! あのジャケットだよね?」


「うん。 そうだよ」


「じゃあ、持ってくるね!」


「お願いー」


 俺は鈴にジャケットを取ってきてもらい、それを試着する。


 その後は俺も鈴もノリノリになっちゃって、結構な数の服を試着した。


 そして、俺の試着の番が終わると、次は鈴の番となったのだった。

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