第54話 脚に異変を感じました。

 あの文化祭の日から数日が経った。


 最近は朝歩いていると、吐く息が少し白くなるぐらいには寒くなってきている。


 前までは部活の時は短パン、半袖だったのが、今では上下にジャージを着ている人が殆どだ。


「よーし、長距離組は集合!」


「「「「はい!!」」」」


 今は放課後で部活の時間だ。


 俺たち長距離組は先生に呼ばれたので集合する。


 そして、俺たちを集めた先生は練習メニューを伝え、道具の準備へと向かった。


「今日の練習キツイやつだな」


「指定されたタイム内に走るってだけでもキツイのに、インターバルは短いし、走る距離も長い。 この練習が一番俺嫌いっす」


「でも、ずっとジョギングしててもなかなか速くならないから、この練習は必要だよな」


「うへぇー今からでも雨降らないっすかね?」


「雨降ったところで先生は中止にしないだろ」


「むしろ、雨降って困るのは走る俺たちだよ? 雨の中で走るとか気持ちも沈むし」


「この練習からは逃げられないってことっすね……はぁ」


 俺たちは後輩と話しながらストレッチやアップをする。


 俺も後輩の気持ちはよく分かる。 この練習ってキツいから嫌なんだよなぁ。


 俺はふくらはぎを伸ばしながらみんなと話す。


 うーん……なんかここ最近、脚の調子イマイチなんだよな。


 ここ最近は自主練は中止にして、ストレッチを念入りに行っているけど、あんまり回復した感じはしない。


 ずっと同じような状態が続いている。


 まぁ、当分自主練中止にしていつもより身体を休ませていたら、勝手に回復するだろ。


 俺はそんな安易な考えを持って練習に参加していた。


 そんな俺に異変が来たのは、走っている途中だった。


「(あれ? なんか脚というか脛が痛い……それに、脚が思うように動かなくなってきた)」


 俺はみんなのスピードについて行くことが出来ず、だんだん離されていく。


 なんとかスピードを上げようとしたが、距離は縮まる事はなく、むしろどんどん差が開いていった。


「……春名そこでストップだ!! ゆっくりでいい!! ゆっくり歩いて俺のところまで来るんだ」


 俺は半周ほど差をつけられたところで、先生からストップされる。


 俺はついていけなかった悔しさがあったけど、それ以上に脚の痛みの方が気になっていた。


 歩きながら状態を確認する。 普通に歩く分には問題がなさそうだ。


 でも、走り始めると痛い。 特に脛が痛いような気がするな。


「春名どこか痛むのか? 途中からファームが崩れていたぞ」


「先生。 脚が痛いです」


「ふむ……具体的にはどこが痛いとか分かるか?」


「脛が痛いような気がします」


「ふむふむ……ちなみにいつ頃から痛みがあるとかも分かるか?」


「ここ最近です。 だから、自主練とかも最近は中止にしてたんですけど……」


「ほう……ちなみに自主練ではどんなことをしていたんだ?」


 俺は先生にどの頻度で自主練をしていたか、どんな練習をしていたか話した。


 それを聞いた先生は顎の下に手を置いて考え、話始めた。


「話を聞いた感じだと、オーバーワーク気味だな。 今日の練習はもうおしまいにして、この後親御さんと一緒に病院に行きなさい」


「え、病院ですか?」


「そうだ。 とりあえず話を聞いた感じ、俺はお前を休ませた方がいいと判断した。 詳しいことはプロのお医者さんに聞きなさい」


「わ、分かりました」


「とりあえず春名。 今日はお疲れ。 詳しいことが分かったら、明日でもいいからオレに報告してくれ。 いいな?」


「わ、分かりました! それじゃあ、失礼します」


 俺は先生に挨拶をした後、着替えて学校を出た。


 そして、家に帰って母さんに事情を話して、病院へと向かったのだった。

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