第38話 祭りに来ました。 ①
鳴り響く太鼓の音と、色々な人の喋り声が聞こえる。
見えるのはたくさんの老若男女と色々な屋台だ。
歩きながら少し匂いを嗅いでみると甘い匂いがする。
また歩くと今度はソースの良い匂い。
少し歩くだけでも色々な匂いを感じることができた。
今日は地元の大きな祭りにユウマ達と一緒に来た。
周りを見るとちらほら同年代の男の子が甚平などの和服を着ているが、俺達は半袖半パンというラフな格好だ。
……甚平いいなぁ。 かっこいいな。
「なぁ、屋台のおっちゃんに安くしてって値切ったらいけると思う?」
「いや、無理だろ」
「いけたとしても閉店間際じゃない?」
ユウマがイカ焼きを一生懸命噛みながら聞くと、唐揚げを食べているツバサとチアキが答える。
ちなみに俺はフランクフルトを食べている。
「もうお金減ってきてるよ。 やばいよやばいよ」
「型抜きに金使いすぎなんだって」
「だからやめようっていったのに」
「ぐぬぬ……! なんで一緒にやった陸は成功するんだよぉ」
「人生で初めてあんなに綺麗にできたよ」
「くそぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺は片手でVサインを作ってユウマに見せると、ユウマは悔しさからおもいっきりイカ焼きを食い千切る。
まさか200円で500円を手にすることができるとは思わなかったよ。
ユウマに付き合ってやっただけだったのに思わぬ収穫だ。
「しかも、陸終わったら残りの破片食べて俺のこと見てたんだぜ? あの姿腹立つわぁ」
「あの残った破片ってとりあえず食べるよね」
「美味しくはないんだけどな」
「でも、あれも祭りの楽しみ方の1つだよね」
「俺はその楽しみ方する余裕なかったよ……!」
俺達はそんなことを話しながらドンドン歩く。
すると、俺は視線の先にある1つの屋台が気になった。
「なぁ、焼きトウモロコシって美味しいの?」
俺が聞くとみんな驚いた顔を見せる。
な、なんだよ。
「陸って焼きトウモロコシ食べたことないの?」
「あんなに美味いのに」
「それに量も結構あってお得感あるよ」
「でも、焼いた野菜じゃん。 それにお金を払うなら、他のもの買った方がよくない?」
俺の意見を聞いた三人は『分かってない! 分かってないよ君は!』と言って、俺に焼きトウモロコシを強く薦める。
俺はその勢いに負けて焼きトウモロコシを買うのだった。
俺は店員さんにお金を払う。
俺の目の前で綺麗な黄色のトウモロコシに醤油が塗られていく。
焼け始めると香ばしい匂いが鼻にきた。
目の前にある黄色のトウモロコシも良い感じに焼き目がついてきている。
「はい。 お待ち同様」
俺は店員さんから焼きトウモロコシを受け取る。
正直、俺はトウモロコシがあんまり好きではない。
あの食べにくさと歯に挟まる感じが嫌なんだ。
でも、そんなトウモロコシがなんでこんなに美味しそうに見えるんだろう?
俺はゆっくり焼きトウモロコシにかぶりつく。
口の中に広がるのは甘辛い醤油の味と、トウモロコシ本来の甘み。
こ、これはっ!? 美味い!!
「な、焼きトウモロコシ美味いだろ?」
「これで陸は1つ学んだな」
「なんかボクも食べたくなっちゃった……」
「これは美味い。 やばい。 今まで俺はなんてもったいないことしてたんだ」
俺は焼きトウモロコシの美味しさに感動する。
そんな姿を見て3人とも食べたくなったのか、すぐに焼きトウモロコシを買って食べ始めた。
俺達は焼きトウモロコシを食べながらまた歩き始める。
すると、周りに比べて一際目立つ女の子の集団が目に入った。
あれは————————
「あ、春名君達だ! 奇遇だね!!」
————————浴衣姿の松田さん達だ。
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