第37話 同じ塾で隣の席の女の子とプールに来ました。 ④

「え、もしかして友達ってこの男子?」


「おい、やばいって。 彼氏くん凄い怒ってるよ」


「やばいよ。 謝らなきゃ」


 俺が現れたことにより、積極的にナンパをしていた男子が怯む。


 残りの二人もやばいと言いながら、しどろもどろになっていた。


 うん。 やっぱりこの人達、そんなに悪い人達じゃないな。


 でも————————


「あの、彼女怖がってるんでやめてもらっていいっすか?」


「あ、ああごめん。 俺達が悪かった」


「……嫌がってる女の子を無理に誘うのは良くないっすよ」


「う″っ」


「あなたたちも止めるならしっかり止めてほしかったっす」


「「……すいません」」


「謝るのは俺にじゃなくて、彼女に謝るべきだと思うんっすけど」


 俺がそう言うと、3人とも松田さんの方を向いて謝罪の言葉を言った後、頭を下げた。


 それを見て、松田さんは『大丈夫です大丈夫です』と言っていた。


「じゃあ、俺達はこの辺で失礼します」


 そう言ってナンパ3人組は離れて行く。


 向こうから『年下にマジ説教された』、『人間としての器の小ささを自覚させられた』とか言っているのが聞こえたけど、そこは自業自得なので反省してもらいたい。


「あの、春名君ありがとね。 助かったよ」


「ううん。 俺も助けるの遅くなってごめんね」


 俺は掴んでいた手を放して、松田さんの方に体を向ける。


 すると、松田さんはラッシュガードの袖で口元を隠しながらそっぽを向いていた。


 顔は真っ赤だ。


 ……どうしたんだろう?……あ、手を握っていたから照れているのか?


「ごめん。 急に手を握っちゃって。 でも、あれは少しでもあの人達を遠ざけようと思ってしたことで——」


「う、うん。 大丈夫大丈夫だから。 それに嫌じゃなかったから」


「あ、嫌じゃなかったんだ……良かったぁ」


「…………っ! 前言撤回!」


「え、じゃあ嫌だったってこと……?」


「え、あ、そういうことじゃなくって……! っもう! 調子狂っちゃうな! 嫌じゃなかったよ! むしろ良かった! かっこよくてドキドキしたよ!!」


「え、そうなの……?」


 俺が顔を真っ赤にすると、松田さんの顔も更に赤くなる。


 そんな俺達を見た小学生の男の子が、『タコさんみたーい』と言って俺たちを指さし、母親らしき人に引っ張られていくのが見えた。


「……とりあえず、ご飯食べよっか」


「うん。 そうする」


 俺達は落ち着くためにも移動して、ご飯を買いに行った。


 そして、ご飯を食べて少し落ち着いた後、また俺達は調子を戻して夕方ぐらいまで2人で遊んだのだった。

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