第39話 祭りに来ました。 ②
「あ、焼きトウモロコシ食べてる! 私も後で買おうかな~」
綿あめを食べながら近づいてくる松田さんは白を基調にした浴衣を着ていた。
なんていう花かは分からないけど、青や水色などの爽やかで明るい花が何個も浴衣に描かれている。
白の明るさ、青の爽やかさが相まって夏!という感じで、見ているだけで涼しさを感じるような姿だ。
阿部さんや村上さん、近藤さんも浴衣を着ているけど、一番可愛いのは松田さんのような気がする。
「ここであったのは奇遇だね~出会った記念に、男子たち私たちになにか奢ってもいいのよ?」
「阿部、図々しくない?」
「アハハッ冗談冗談」
「まぁ、分かってたけどよぉ」
「村上。 りんご飴って美味いのか?」
「美味しいわよ? ツバサ君は食べたことないの?」
「食べたことはあるけど、あんま美味しさを理解できねぇ」
「近藤さん浴衣すっごく可愛いよ! 似合ってる!」
「うふふありがとう……チアキ君って女物の浴衣、とっても似合いそうだよねぇ」
「え″っ」
俺達は花火を見るという目的も一緒だったから、一緒に花火を見るために行動する。
固まって移動してるけど、人が多いからなかなか進まないな。
「プール以来だね。 松田さんはなにしてた?」
「私? 私は部活の大会に出たよ」
「バトミントン部だよね? 結果はどうだったの?」
「三回戦負けだったよ~でも、今までで一番成績良かったんだ」
俺達は食べ物を食べながらそんな話をする。
ちなみに俺は松田さんのいつもとは違う髪型にドキドキしている。
松田さんの方が身長が低いから、俺は上から見る形になる。
いつもとは違うお団子頭は可愛しく、松田さんの白くて綺麗なうなじに気を抜いたら視線が吸い込まれそうだ。
俺は気を紛らわせるために食べ終わった焼きトウモロコシを袋に入れ、ついでに松田さんが食べ終わった綿あめの棒を貰う。
そして、設置されていたゴミ箱に捨てるのだった。
「花火楽しみだね」
「楽しみだよ~あ、そういえば春名君知ってた? ここの花火って毎年打ち上げる花火の数や種類が違うんだって」
「なんとなくそうなのかな?とは思っていたけど、やっぱりそうなんだ」
「そうなんだよ。 今年の花火はどんなのかな? 楽しみだなぁ」
俺達はゆっくり歩く。
しかし、人が多いから少しずつ俺達の集団は離れ離れになってきていた。
やばいな……このままだとバラバラになっちゃうし、花火の時間までに場所にたどり着けないかもしれないな。
「少しずつみんなと離れてきたね」
「うん。 でも、大丈夫だよきっと。 だってスマホあるもん」
松田さんがそう言った瞬間、一気に集団が流れ込んできて俺達は離れ離れになりそうになる。
「松田さん!!」
俺は目一杯手を伸ばして松田さんを引き寄せる。
引き寄せた松田さんは俺の胸の中にすっぽり収まり、松田さんの両手が俺の胸板に置かれた。
「あ、ありがとう春名君!」
「どういたしまして」
「あ、でもみんなと離れちゃったね……」
俺達は身体を離して周りを見渡す。
そうなのだ。 今の一瞬で俺達はみんなと離れてしまった。
周りには人がたくさんいて、あまり身動きができそうにない。
それに、今からどんなに頑張ってもみんなと合流して花火を見るのは難しいだろうな。
「どうしよう……」
松田さんは少し不安そうだ。
………………そういえば、小学生の時に見つけたあの場所なら、花火の時間までにたどり着けるな。
それにあそこなら人もいないし、よく花火が見えるかも……!
「ねぇ松田さん。 もしかしたら花火が良く見えるところがあるかもしれないんだけど、そこに行ってみない?」
「え!? そんなところがあるの!?」
「うん。 でも、ちょっと暗かったり道が悪かったりするから、大変かもしれないんだけど……」
「うん。 私は大丈夫だよ! それに、春名君と一緒なら怖くないよ!」
「そっか……なら行こうか!」
「うん! エスコートお願いね?」
俺はエスコートをするためにそっと松田さんの手を握る。
すると、少しして躊躇いながらもしっかりと松田さんは握り返してくれた。
下駄を履いている松田さんのペースに合わせながら、俺達はゆっくりと歩いて穴場へと向かっていくのだった。
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