第30話 陸上大会に出ました。 ①

 カンカン照りの太陽。


 トラックから出ている陽炎。


 周りから聞こえる色々な中学の応援の声。


 俺は今日、陸上の大会に出ている。 今から出る種目は5000メートル競走だ。


 今日の大会は3年生にとって最後の大会になる。


 みんないつも以上に気合が入り、ピリピリした雰囲気になっていた。


「あの人強豪校の〇〇中の3年生じゃん。 気合入ってるな」


「あそこにいる人、俺らと同学年だけど、確か前の大会で県体に出てた人だ」


「みんなやっぱり気合が入ってるな」


「それは俺らもでしょ?」


 俺とユウマ、後輩二人はトラックの端の方でランニングをしたり、ストレッチをしながら調整に入る。


 ちなみに後輩たちは俺達が走っているときに水が入っているペットボトルを渡してくれたり、応援するために一緒に来てもらっている。


「おい陸、見てみろよあそこ」


「ん?」


 ユウマに促されて見てみると、一際目立つ集団が目に入った。


 真っ黒に焼けた肌、鍛えぬかれた身体、強者の雰囲気と自信に満ちた表情。


 あれは強豪校の〇×中の選手たちだな。


 あそこの中学はどの競技でも県体出場選手がゾロゾロいるし、中には全国に行く選手がいるぐらいの強豪校だ。


 この地区なら一番強いところだろうな。


「強いやつらが集まるとなんであんなに強そうに見えるんだろうな。 見ただけで萎縮しちまうよ」


「雰囲気あるよね」


 俺達は二人で話しながら足を動かす。


 後、もう少しで1グループ目の試合が始まるところだ。


 今回の5000メートル競走は3グループに別れている。


 1グループ目の方からタイムが速い人達が集まっていて、俺とユウマは2グループ目だ。


 速い人達から番号が若い。


 俺は2グループ目の中で番号は遅い方だから、全体で見たら真ん中より少し下の実力だと思う。


 まあ、今までの大会でのタイムや、種目変更したけどこれぐらいのタイムは出るだろうっていう予想で、大会前に監督が提出してグループに振り分けられる選手もいるだろうから、一概には番号=実力とは言えないのかもしれないな。


「ユウマ先輩、陸先輩。 そろそろ1グループも終盤ですよ」


「おうそうだな」


「そろそろ最終準備しないといけないね」


 後輩に声を掛けられると同時に聞こえてきたのは鐘の音。


 この鐘の音は先頭を走っている選手が残り後1周を知らせる鐘だ。


 俺は電光掲示板を見る。


 うわ……先頭の選手速っ!


「あれが全国レベルの選手か……速いな」


「あの人も速いけど、このグループやっぱり速い人達が集まってるよ。 一番最後の人でも2グループ目だとトップ集団レベルの実力はあると思うよ」


「オレ、来年までに1グループ目で走ってる自分が想像つかないんだけど……」


「お互いに諦めずに頑張ろうよ。 俺は今日の大会でなんとか2グループ目のトップ集団に入って、次の秋季大会では後ろの方でいいから1グループ目に入りたい」


「はぁ……陸がそういうなら俺も頑張らないといけないな」


 俺達は脚にスプレーをかけて靴紐を念入りに結んで、走れる準備を整える。


 そして、係員の人達に呼ばれて集まるのだった。

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